心因性頻尿(過敏性膀胱)


 心因性頻尿とは、心理的緊張により尿意を催し、そのことに強くこだわってしまう病態である。常時尿意が気になり日常生活の行動も自ら制限してしまう。 心因性頻尿では多くの場合、赤面恐怖などと同様に、頻回の尿意を他人に知られる事を恥として感じやすい傾向がある。そのため他人の車に同乗したり、テストの試験場に行くことなどを不安に感じやすい。つまり尿意を催すと困るような場面で、かえって尿意のことがとても気になって、そのような場面を回避しようとしてしまう。いわば心と体が自律神経を媒介にして、相互に悪影響を及ぼす悪循環の病態(心身交互作用)といえる。ただし心因性頻尿の診断は慎重にすべきである。糖尿病や他の末梢神経障害で膀胱神経が器質的な障害を受けたことによる神経因性膀胱 neurogenic bladder とは異なる病態である。膀胱炎や前立腺疾患との鑑別も必要となる。また、うつ病の部分症状として尿意が問題となることもある。薬剤性の尿閉(膀胱に尿が貯まっているのに排尿できない状態)も同様に鑑別が必要である。



心因性頻尿について
 病態・症状  比較的若い男性に多い病気である。完全癖で、森田神経質と呼ぶべき心理状態を背景にして発症しやすい。現実の自己と理想自己とのギャップに悩みがちな青年期にみられやすく、このギャップに由来する自己不全感、劣等感などの心性が発症に関与しやすい。いわゆる心身交互作用のメカニズムがあり、
   心理的囚われ→症状増悪→心理的囚われ増大→症状増悪
という心身の相互影響の一連の流れがある。
吃音(ドモリ)、赤面恐怖症などと類似の心理的メカニズムと言えよう。これらの症状により、WCにすぐに行くことを制限されるような、外出時、ドライブ時、授業中、友人の集まり、仕事中などに症状は出やすく、そのような場面への接近を恐怖するようになる。そのため社会恐怖、対人恐怖として診断される場合がある。
 頻尿症状を有している事実を「男として情けない」と感じるようになったり、自己イメージの自信喪失などの事態にもつながりやすい。完全癖、強迫傾向が心理的特徴として認められやすいが、心理的に抑うつ状態になったり、ストレスで心身が疲労した場合に症状は増悪する傾向にある。失恋や受験失敗、仕事での失敗などの挫折体験をキッカケに症状が誘発されやすい。
病前性格  元来、几帳面、真面目、自己不全感に陥りやすい性格の青年層に好発する。精神分析的な表現をすると、エディプスコンプレックスの課題を抱えている場合が多く、 いわゆる「去勢不安」(男として情けない姿・恥をさらしたくない、負けたくない)につながる心性がよく認められる。
治 療   下記の3つの治療アプローチが比較的、有効と考えられる。
    (1)ある種の精神安定剤による薬物治療(精神安定剤、抗うつ薬等)。
    (2)森田療法
    (3)精神分析的な治療
 当然、上記の治療の前段階として、患者さんへの病状のメカニズムに対する分かりやすい説明は不可欠である。他に、リラクゼーション法の修得や、不安場面への慣れをねらった段階的な行動療法の併用も有効と考えられている。
 心因性頻尿にみられる心身交互作用の悪循環というものは、一旦良い方向へのサイクルに切り替わると、気分は楽になり、再び日常生活への自由な参加を取り戻せるようになってくる。予後は比較的良好であり、後遺症もなく治癒してしまう事が多い。
 また、うつ病の症状として頻尿が生じることも多く、その場合にはうつ病を治療することにより症状は消失する。



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