京都市 心療内科 たかはしクリニック
  
不 眠 症


 
不眠症とは、慢性的に眠れなくて困ること。原因として、騒音などの環境、心理的ストレス、うつ病や神経症などの精神疾患、喘息薬やホルモン剤による薬物、加齢による生理的変化などがあります。最近、世界で最も睡眠不足の都市はどこかという記事が有名な「タイム誌」に載ったそうです。答えは東京で、平均睡眠時間は5時間44分だそうです。この結果だけでは、都会の日本人が単に睡眠不足がひどいのか、あるいは日本人が体質的に最少の睡眠で済むようにできているのかはわかりません。しかし不眠症を訴える人が増え、国内で使用される睡眠薬の量が鰻登りに増えていることは事実です。
 眠りたいのに眠れないのは確かに辛い体験です。 しかし個体保存の原則からして、眠りが浅く途中で何度も覚醒する事は、自然界において天敵の接近に早期に気づく防衛態勢としてのいい面もあるようです。同じような観点にたつと、高齢者にみられやすい「浅い眠り」などは、高齢というハンディに対する自己防衛機能ともとれなくありません。プラス思考にたてば不眠症は、たとえば大地震でも逃げ遅れないための備えと言えるかもしれませんね。

            


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睡眠の生理学

不眠の分類
睡眠薬について
日常の不眠対策

           

 睡眠の生理学 

 
人間の体には、時を刻む体内時計があります。睡眠の日内リズムには、睡眠ホルモンであるメラトニンが関与していることが明らかにされています。このメラトニンというホルモンは人の脳内で分泌されますが、高齢になるとその分泌量は徐々に減り、高齢者の不眠の原因となっています。ちなみに、メラトニンは米国ではすでに普通のビタミン剤なみに、一般の薬局でも自由に買える商品になっています。このメラトニンには食欲抑制作用もあるとされています。
 人間が眠り込むチャンスは、およそ1時間半(90分)ごとの周期で回ってくることが研究によって明らかになっています。睡眠関連物質であるメラトニンの分泌量もこのサイクルと深く関連しているようです。そのため一度入眠を失敗すると、次に入眠できるのは、その約90分後まで待たねばならないという計算になります。 俗にナポレオン睡眠と言われるように、人によって必要とされる睡眠量は異なるようです。8時間眠らないと満足しない人、4時間位の睡眠でなんなく仕事をこなしている人など様々です。話は少し脱線しますが、動物の睡眠時間はどれくらいでしょうか。ウシ、ウマなどの大型草食動物は約3時間、チンパンジなどのサルたちは9時間くらいだそうです。また、多くの動物の睡眠サイクルは人間のように昼夜がはっきり分かれておらず、ペットの犬や猫を飼っていればわかりますが、昼夜関係なく細切れの睡眠(多層性睡眠)をとっています。
 人間の場合、加齢とともに睡眠は浅くなります。加齢とともに自然と浅くなっていくように出来ている睡眠パターンを、わざわざ睡眠薬で深く眠らせることに本当に利があるのかどうか。つまり、自分の睡眠はこうであるべきと「べき思考」で不眠に過剰に神経質なるのも問題です。
 ところで最近の睡眠研究によると、脳の真ん中にある視床下部には睡眠に対抗する覚醒系のシステムがあるとのことです。これにはオレキシンという脳内物質がかかわっているそうで、この覚醒物質がなくなるとナルコレプシーという病気になることがわかっています。このオレキシンは日本人が発見したということで、その覚醒系システムを利用した睡眠薬も作られています。
  「夢を見て眠れない」という人がおられます。しかし、夢は眠りの中にあるからこそ見ることができるのです。夢の効能については、フロイト以来種々の説があります。現代でも心理学の世界では、夢は日中のストレスに対する浄化作用、ストレスの発散作用などの理論で、夢を肯定的に受けとめられる説が主流のようです。



不眠の分類

  不眠は1ヶ月以内の短期不眠と、それ以上にわたる長期不眠に分けられます。その原因から、騒音や寒さ・暑さ等の環境要因によるもの、悩み事やうつ病等の内的な心理要因によるもの等に分類する事も可能です。 ここでは、長期不眠を症状から分類して述べます。

症状による不眠の分類
種 類
症    状
入眠障害
 いわゆる、寝つけないタイプの不眠。床についてから入眠するまでに、1時間以上を要する場合をいう。睡眠相遅延症候群なども、このパターンを示す。

 
途中覚醒  
 夜間に何度も目が覚める場合をさす。途中覚醒後、比較的早く睡眠に戻れる場合と、朝方まで眠れない場合があ
る。
熟眠障害
 睡眠時間は比較的長くとれているが、熟眠した気がせず、翌朝も睡眠不足であるような心身の疲労感、眠気などを感じる。睡眠時無呼吸症候群でも同様に熟眠感が得られにくい。

早朝覚醒  
 早朝に目が覚めてしまう状態。高齢者では、夜早く就眠することが原因であったり、加齢に伴う生理的な変化による場合がある。早朝覚醒は、うつ病者に見られやすい不眠パターンでもある。

偽不眠
(私の造語)

 大きくイビキをかくなど、周囲の誰が見てもよく眠れているのに、本人だけが殆ど(あるいは全く)眠れなかったと訴え、事実に合わない形で不眠恐怖のよ うになっている場合をいう。



 睡眠薬について
 

次項のような日常の不眠対策を実行しても眠れないときに睡眠薬を用いることがあります。一般の睡眠薬は、成分の種類によってベンゾジアゼパム系、抗オレキシン系などいくつかのタイプに分類されます。またその効き方によっても、超短時間作用性、短時間作用性、長時間作用性などに分類されます。 不眠の原因やタイプにあわせて、主治医とよく相談しながらこれらを慎重に使い分けていく必要があります。

 日常の不眠対策

       
 
 眠前にホットミルクを飲む
 床に入る前にコップ1杯の、人肌に暖めた牛乳を飲みます。実際にこの方法で睡眠薬から離脱された患者さんは多くおられます。これは比較的よく知られた方法ですが、その効果の主な理由としてふたつ考えられます。
  1) 牛乳に含まれるカルシウムが、神経を落ち着かせてくれる。カルシウムは夜間に腸管からの吸収効率が高まるとも言われています。
  2) 牛乳のほのかな匂いが、乳児期に記憶された母親のオッパイを本能的に連想させ、それが心地よさを誘い入眠しやすくなる、というものです。

  入床時、腹式呼吸などリラクゼーション法を行う
 リラクゼーション法については、当ホームページ内の「自己治療のヒント」のページの記載を参照してください。なかでも身近な方法は腹式呼吸であり、これを数分くりかえすと心身が落ち着き、入眠の準備状態ができあがります。

 ◆ 眠気を感じたら、時期を失せずに床につく。
 人間の入眠サイクルは時間的に90分おきにやってくると、大脳生理学が解き明かしています。そのため入眠のタイミングを失うと、理屈的には次の入眠チャンスまで90分待たねばならないということになっています。しかしこれは、それほど厳密なものではなく、およその身体のサイクルがそのようになっているということであり、20分後や40分後に絶対に眠れないということではありません。ただ、不眠症の人が少しでも眠りやすくなるために、このような生理学的な理屈を利用することが得であるということなのです。

 
 床に入る直前は、スマホ、携帯、テレビをさける。
 入眠寸前まで大画面のテレビやパソコンなどを観ていると網膜に多量の光がはいり、脳が「今は昼間」であると勘違いしてしまいます。そうなると脳は過覚醒状態となり睡眠への早急な切り替えが難しくなります。またLEDライトに含まれる青色光の波長には覚醒作用があるため、寝る前1時間くらいは部屋の照明を暖色系(だいだい色系)にしたり光を暗めにしておくといいでしょう。

 
 眠前の喫煙・カフェインは避ける
 これは述べるまでもない当たり事のことですが、このような習慣の弊害を承知の上で行いながら不眠に悩むという人は、おそらく日常生活全体のチェックが必要でしょう。

 
 入浴について
 
 以前は体を冷やすと眠りやすいとされ、ぬるい入浴で体を温めない方がいいとされていました。しかし最近の説はこれと正反対で、寝る前の入浴は熱めにして、そのあと冷えたベッドに直行するのがといいとのことです。ベッドのなかで急激に体が冷えていく最中が最も寝やすいということらしいのです。突然、医学的に正反対のことをいわれると、本当はどうなのかといろいろ不信感がつのりますが。
    
  他の病気と、ただの不眠を混同しないこと。
    
下記のような病気が、単なる不眠症と混同されやすいので注意してください。
    
(1)睡眠相遅延症候群
 毎日少しずつ、1日のタイムサイクルがずれ、入眠時や覚醒時刻が後退していく病態です。しだいに昼夜逆転の生活に移行せざるをえなくなり、朝も起きられず不登校などの事態に発展することもあります。専門的な診断と治療が必要です。
    
(2)睡眠時無呼吸症候群
 咽頭部近辺の生理的な狭窄(狭くなる)により、睡眠時に一時的に窒息に近い状態が引き起こされ、眠りがその都度中断されるという病気です。「眠りが浅い」「寝た気がしない」「熟睡感がない」という訴えがでやすくなります。肥満者、深酒でよく発生します。突然死の原因になることもあると言われます。専門的な診断と治療がぜひ必要な病気です。
    
(3)うつ病に合併する不眠
 うつ病者に不眠は必発します。そして、うつ病の不眠の特徴は早朝覚醒が中心です。ある時期から早朝覚醒が生じ、気分的な落ち込みや意欲も低下している、身体的な疲労感も強いという状態なら、うつ病の存在を疑ってください。

           


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