心身症の自己治療のヒント

このページは「病院が嫌いな人のために」としていますが、
生活に支障をきたす程の重症の人やうつ病と考えられる人は
早期に専門医を受診されることをおすすめいたします。



               
              メニュー

     
step 1 自らのストレス反応様式を知る
step 2 現在の身体的負荷のチェッ
step 3 リラックス法の修得  
step 4 イメージ療法の応用  
step 5 対人関係の3項    
step 6 寓話や諺から学ぶ知恵 
step 7 認知修正(プラス思考など)
 step 8 森林浴など自然の癒しへ  
     step 9 トイレ体操のすすめ   
    step 10 備えあれば憂いなし」       




step1   自らのストレス反応様式を知ること 

 自分がどんな種類のストレスに弱いか、ストレスに出会った時にどんなストレス反応のパターンに陥るか(どんな思考をとるか、どんな身体症状が出やすいか)を知っておく
 例えば、ある精密機械を扱うとき、その機械はどの角度からの、どんなタイプの衝撃によって壊れやすいかを知っておく必要があります。人間の心身もまた一種の壊れやすい精密機械です。自分の心身が、どんなタイプの衝撃に対して脆いかを知っておかねばなりません。しかしこれは本腰を入れて考えないとなかなか難しいものです。自らの心身の変化を最もキャッチできるのは他ならぬ自分自身でありながら、誰しも自分自身の心身の動きについて案外、灯台下暗しなのです。例えば、怒り心頭に達した表情をしているのに「自分は怒っていないよ」と答える人がいます。10年近く神経性胃炎に悩まされながらも症状と心理的ストレスの関連を全く自覚していない人もおられます。これらの人達はストレス耐性が低いのだと言わざるをえません。では、どのようにして自分自身のストレス反応パターンを自覚できるのでしょうか。人はストレスに陥ると、各人固有のパターン化された感情に支配されやすく、パターン化された同じ行動をとりやすい。そして固有の身体症状が繰り返し出てくるものです。そのような自分固有のパターンを知ることが大切です。これは日々の生活の自己観察によらねばなりませんが、とりあえず過去の生活史に学ぶとヒントが得られやすいようです。つまり、人生の様々なストレスイベント(転職、転勤、引っ越し、別離、失恋、受験など)において、生じた身体症状はいかなるものであったか。 また、それらの渦中でどのような感情に自分が支配されやすかったか? という点がヒントになります。 そして、いつも不安、罪責感、怒り、あるいは特別な感情に自分が支配されていたなら、そのような感情と自分がどのように向き合ってきたか?  どのようにしてそれらを克服しえたか。あるいは長期にわたって悩んだか?  不満を誰かに表現しえるようなことがあったか? いつもアルコールに溺れたか?  いつも家族に当たり散らかしていたか?  いつも自分を責め後悔することで終わっていたか?  もし同じ事態が生じたら今度はどうするだろうか?  
このような検証によって、自分はどのような衝撃に弱かったか、いつもどんな風に自分をコントロールしてきたかを少しずつ明らかにしていくことが出来ます。そして、さらに建設的で苦痛の少ない合理的な克服法がなかったかどうかを検討していく必要があります。もし、そのような自分固有の反応パターンが把握できれば、その認識自体が強力なストレス対策になるでしょう。たとえて言えば、これらは情報戦の領域です。
ストレスが、すぐに身体症状化する人。身体症状には出ないが心理的に過度の不安やうつ状態に落ち込んでしまう人。心身の異変には現れないが周囲が迷惑する行動によってストレスを発散する人など。これらの反応は、問題の一時的な棚上げや引き延ばしになるばかりで、長期的視点からはマイナスです。これらを下にまとめて図示します。健全な社会生活を営むには、ストレスに対し適応化という解決(冷静な話し合い、合理的・建設的行動など)が必要なのです

ストレス反応の種類

           身体化 (心身症全般)

 ストレス   精神化 (うつ状態、心因反応など)
           行動化 (暴力、多量飲酒、自傷行為)
           適応化 (問題の整理と適正解決)
  


追記 ■    
 
現代における日本社会のストレスを紐解くと多くが人間関係性のストレスに帰結されます。一次、二次産業(農林水産、工業関係)よりも、三次産業(サービス、情報関係)従事者が増加していく社会においては、「人間関係性の能力」とも呼ぶべき対人関係における能力が特に要求されつつあります。そのため対人関係をうまく処理できない人は実直、真面目であっても、社交性なきゆえに自他に評価されにくいという社会的風潮があるようです。過剰な社交性信奉の風潮は、学校における偏った「友人作り熱心病」をもひき起こしているようです。
 いつか、後のstep部分のどこかで、この点について記載したいと思います。



step2  現在の身体的・物理的負荷のチェック

 
睡眠不足、過剰勤務、喫煙・飲酒量、身体的諸負荷などの生理的、時間的なオーバーロードのチェックはまず最初に手をつけやすい部分である。
  よく「病は気から」と呪文のように言われますが、「病は生活習慣から」という視点が先でしょう。心身症を述べる時に「心から体へ」という方向性が注目されがちです。しかし逆の「体から心へ」というベクトルも軽視できません。たとえば、心が疲れると身体疲労感が強くなりますが、逆に身体が疲れると心も疲れ意欲が減退しやすくなります。この身体的状況に悪影響を及ぼすようなライフスタイルの修正(規則的な生活、バランスのとれた食事、睡眠時間の確保、多忙からの脱却)
にまず配慮する必要があります。と言ってもことは簡単に運ばないでしょう。職場の体制のありかたなど社会的制約ゆえに、それらを点検できても修正困難という事態は少なくありません。
 よく言われることですが、ヒトは環境によって生き方の制約を受けます。しかし環境への順応だけではなく、ヒトは環境を変革しうる能力も有する生き物です。その能力が思い通りに発揮できないがゆえに心身症に陥ってしまうわけですが、少なくとも出来る範囲で、生活リズムの再構築を心身症克服のオプションとして添えておくべきでしょう。


性(セックス)の習慣に関して。

 ちなみに、 有名な「 性と文化の革命 sexual revolusion 」の著者であるW・ライヒ が次のような報告を残しています。それは、神経症になった人達の治療後を追跡調査したところ、治療後に満足しうる性的な行為を維持し得ている人達は、そうでない人達よりも、神経症の再発率が明らかに低かったというものです。 ただし、このような欧米での研究結果がそのまま日本人や東洋人に当てはまるか否かは、まだ充分検証されていません。
    

身体的・物理的負荷のチェック項目
   項 目    チェック内容
   睡  眠  睡眠時間の不足、
 寝具の快適さ
   食  事   食事量・内容のバランス、
 食事時間の規則性
  勤務状態

  勉強時間
 超過勤務の程度
 塾勉強時間の過剰
 余暇・休日の量
 余暇・休日の過ごし
 住居の快適度   温度、湿度、日当たり、
 騒音、広さ、利便性
   性生活  性的な満足度
  飲酒・喫煙  量、取り方





step3 
 リラックス法の修得

 リラックス法とは、心身をリラックス状態に誘導する技法で、万人が簡易に行えることを利点としています。心身症の自己治療法のひとつとして、歴史的な積み重ねの経験則を基盤とするものから科学的解明のすすんでいるものまで多種類があります。アロマセラピー、ミュージックセラピー、芸術療法まで幅広いジャンルが含まれます。ここではそのなかから、古くから臨床的に治療効果が検証されている3つを記述しておきます。
         

リラックス法の修得の利点

1)四肢の筋肉(横紋筋)をリラックス法により弛緩させることで、身体的緊張にもとづく身体の微妙な変化を具体的に感知しやすくなる。

2)リラックス状態を here & now(いま、ここ)で実感することにより、リラックスしていない日々の状態とリラックス状態との差異を理解しやすくなる。

3)リラックス状態にある自分の心身を一時的にも保持させることで、蓄積された疲労や緊張を解放させる即時的作用がある。

4)心身のリラックスは心身の自己調整力や自然治癒力の向上に直結する。

5)方法が比較的簡易であり、難解な理論や思考を必要としない。




利用しやすいリラックス法の種類
なまえ 考案者 概  略
腹式呼吸 古来
東洋の知恵

  詳細は下記(追補1)参照。
交感神経系の優位状態を、腹式への呼吸誘導によって副交感神経優位状態へと導く手法である。
自律訓練法 シュルツ

ルーテ

  詳細は下記(追補2)参照。
他者催眠からヒントを得た自己暗示法の一種。
一時は心身医療の三大柱の治療法のひとつとして話題になった。
「受動的注意集中」が修得の基本的態度であり、実施にあたっては、「 Let it be ! (あるがまま、なるようになれ) 」の感性が大事。
筋弛緩法 ジェコブソン
  詳細は下記(追補1)参照。
筋肉を意図的に弛緩させ、それに連動する心理的緊張を解くのがねらい。
やはり副交感神経優位に誘導する手法であり、利用する筋肉は症状の種類によって変えられる。


追補1
 
心が緊張すると下表の左側に示すように、発汗し、喉がカラカラになり、肩の筋肉をいからせ、粗い呼吸をし、脈は速まり、手足はワナワナと震えます。また、血圧や血糖が上がり、胃腸の運動も円滑さをなくします。 逆に心がリラックスすると、下記の表の右側のような変化(副交感神経優位)が生じます。
 ところで
下記の表の項目の内、左右への移行を個人が意図的に(自力で)変えられるものは「随意筋の緊張」と「呼吸法」の二つしかありません。この「意図的に変えられる器官」という点に着目された技法が、呼吸法と筋弛緩法なのです。すなわち、呼吸や筋緊張を意図的に、表の左方から右法へと導くことで、他の心身の項目を引き連れて右側へと変化させる生理学的手法といえます。ひとつの項目を下図の左→右へと変えることで、他の心身の部分もワンセット方式で左→右へと変化する。これにより臨床的に、血圧や血糖の低下、最近は胃壁の血流を増加させることで胃潰瘍の治療や予防にも有効とされる。

追補2■  
 
自律訓練法(autogenic training)は、催眠によって得られる深い心身のリラクゼーションを、自分ひとりによる自己催眠によって得ようとする発想から生み出されたものです。これによって日々のストレスで傷つき歪んだ心身の状態を癒やし、自己治癒力の再活性を図ろうとするものです。全国の心療内科系の大学病院などでも積極的に治療に取りこまれています。自律訓練法の具体的方法は、筑波大学名誉教授の佐々木雄二先生や岡山大学の現教授である松岡洋一先生の書籍などを利用されるのが良いと思われます。

交感神経系と副交感神経系の作用
心身の状態 交感神経優位 副交感神経優位
筋肉 緊張 弛緩
呼吸 胸式呼吸 腹式呼吸
脈拍 速い 遅い
瞳孔 拡張 収縮
唾液分泌 低下 増加
発汗 増加 低下
手指の血流 低下 上昇
膀胱 弛緩 緊張
腸管運動 不整 円滑
血圧・血糖 上昇 低下
心理 緊張・興奮 落ち着き・平安


          


step 4
 
イメージ療法の応用

 心身への気づきを深めるためのイメージトレーニング技法です。
1)身体との対話(擬人化対話技法)
 頭痛、めまい、疼痛、不眠、感覚異常、動悸、食思不振、微熱、便通異常、吐き気、胸部不快感、喉頭異和感、ジンマシン、易疲労感、生理不順など、悩んでいるいくつかの症状の中から特に困っている症状をひとつ取りあげ、それと対話を行う。つまり「自分自身」と「症状」の内なる会話です。自分の中で異物として巣くっている「症状」と、それを忌み嫌い排除しようとする「私」との、擬人化された会話。そこからいったい何が生まれてくるでしょうか?
 やり方は、まず「私」が「症状」に問いかけるところから始めます。



例:  私  「おい頭痛よ、いい加減に私の中から出て行けよ」
        
症状 「いやだね、ここは居心地がいいからでていかないよ」
 私  「そんなに私を苦しめて楽しいかい?」
  
症状 「さあ、そんなこと知ったことでないさ・・・・・・」
 私  「 ○ + △ × ・・・・・・」
症状 「 ○ ● ◇ ● ・・・・・・」
私  「 △ ☆ ★ ※ ・・・・・・」



 という具合に、会話を延々と続けていきます。

この一人二役の内的会話のなかで、症状があたかも意志を持った人物のように変貌していくかもしれません。「症状」との会話は、しだいに「現実の人物」との会話であるかのように変質していくかもしれません。そのため会話は、心の緊張を伴って早い段階で中断されることになるかもしれません。おそらく、会話が長く続くほど、症状を形成している内的な要因の核心に近づくものへと変化していくでしょう。少し複雑なことを述べるなら、会話の主な視点がどこになるのかということも興味深いものなのです。主な視点が私側になるのか、症状側になるのか、いわゆる「神の目」による実況中継のようになるのか、さまざまでしょう。そこからどのような気づきを得るかは、無責任なようですが人それぞれであり、とりあえず始めてみないと分かりません。会話内容を録音しておき、後で再生して聞いてみるのも、気づきを深めるうえで役に立つでしょう。

2)ユング心理学的イメージの活用

 ユング心理学では、個々人の個性的な無意識とは別に、各人が共通して潜在意識に保有している太古的な「共同無意識」の存在を想定しています。ここでの方法は、イメージの中で内部に眠る「共同無意識」の片鱗と出会い、意識と無意識の疎通性を回復する手法と考えて戴いて結構です。ここでは、共同無意識に存在するとされるふたつの人物イメージを利用することにします。
 それでは、次のような手順でイメージを育てていきます。以下の手順をひと通り読み、それらを大まかに記憶された後で、目を閉じてイメージを具体的に浮かべてください。

静かな部屋で目を閉じます。心落ち着く静かな曲を流しておきます。

◆貴方が考えつく、世界で一番気持ちのいい部屋を空想します。
      (ヨーロッパのお城の一室、夕陽に染まる海原が見える部屋など)
その部屋で、世界で一番座り心地のよいイスに腰掛けている自分を空想します。
その部屋のどこかに、地下につながるエレベーターをひとつ設けます。
空想の中で、目の前に机をひとつ置きます。机の上にふたつのボタンを設置します。
左のボタンを押すと、地下からエレベーターに乗って、貴方にとって最も心休まる女性が貴方に会いに部屋に来ます。
    (ユングの言う「偉大なる母(Great mother)」のイメージの利用です)

その女性に机の前に来てもらい、症状や悩みについて会話をします。対話の時間や雰囲気は自由に好きなように空想してください。
ひと通りの会話が終われば、感謝の言葉を述べ、またエレベーターに乗って地下にゆっくり戻ってもらいます。
次に、右のボタンを押すと、再び地下からエレベーターで、年老いた賢明な男性が貴方に会いに部屋を訪れます。(ユングの言う「老賢人(Old wise man)」のイメージの活用です)。イメージ作りが難しければ、自分が最も尊敬する歴史上の人物のイメージでも構いません。
その老人に机のまえに来てもらい、症状や悩みについて相談します。
ここでも対話時間や雰囲気は自由に空想します。
ひと通りの会話・相談が終われば、感謝の言葉を述べ、またエレベーターで地下に戻ってもらいます。
    
 ・・・・・・・・・・・・・・・
 どうでしたか? 
具体的なイメージはうまく浮かびましたか? 地下からのふたりの人物と、ある程度満足できる対話はできましたか? 一度でうまくいかなくても、二度三度とやっているうちに、しだいにイメージ作りは上達するようになると思います。イメージ作りが上達するほど、イメージ内での会話も奥深い内容になってくるはずです。貴方自身がそれほど力んだり努力しなくとも二人の人物が円滑に話すようになれば、意識と潜在意識の疎通性が良くなったのだと思われていいでしょう。多忙な現実生活の中で、このようなイメージ世界へのしばしの没入は、それ自体がリラクゼーションタイムにもなるでしょう。


 
      

step 5
 
対人関係についての3項
 対人関係について、3つポイントを書きます。今さら、と感じられる方がおられるかもしれませんが。対人関係で臨床上問題となりやすいのは、やはり対人緊張でしょう。「人は生きることについて考える前に、生きることに慣れた」と言われます。対人緊張が何らかの形で一度強められ、以前の慣れから遊離すると、なかなか元に戻りません。しかし対人緊張にはそれなりのカラクリがあります。そのカラクリを解き明かすことによって軽快していく場合があります。そのカラクリの根っこにつながる命題を、とりあえず3つ検証してみましょう。難しいことは書きませんので気軽に読んでください。

1) すべての人に好かれる事は無理である。

対人緊張とは、ある人にとっては「見捨てられる不安」であり、ある人にとっては「情けない自己に直面する不安」といえます。前者と後者の不安は明確に分けられるものではありません。問題はその不安の強さなのです。例えば、「見捨てられ不安」と一口に言っても、それが「自己の消滅不安」につながる程の強烈なものから、いわゆるエディプスコンプレックスの色彩をおびた「軽い劣等感」の類まで様々です。ここでは日常的なレベルでの見捨てられ不安を頭において述べます。
 「すべての人に好かれたい」というのは一種の完璧主義ですが、無意識にそういう心境に陥っている人は案外多いようです。特に人間関係に自信のない人ほどその欲求が強いようです。逆にその欲求が強いからこそ自信をなくしているとも言えるのですが・・・・・・例えば10人位の職場やサークルに自分が所属した場合を考えてみましょう。10人すべての人に好感を持たれることは理想でしょう。しかし一般的に10人の人間がいれば、そのうち3人には嫌われるのが普通なのです。それでも好かれようとするならば、かなりの身を削る努力が必要とされます。もしその努力の結果、ほぼ全員に好感を持たれたとして、「過剰適応」という歪みが内面の重荷となって心身にいろいろな症状が出てくる事になります。アトピー湿疹や気管支喘息の人の重症化に、このような対人関係の「過剰適応」がストレス要因となって関与している場合があります。このような事態を避けるために次のことが示唆されます。つまり対人関係に慣れるとは、人に嫌われる事にも慣れる(人に嫌われる事に過敏にならない)という事なのです。
  ついでに記しますと、
人に嫌われた場合、対人緊張の強い人は嫌われる原因を自分の内側にばかり見だそうとします確かに誰の中にも嫌われる何らかの要素は必ずあるでしょう。完璧な人間などいないのですから。しかし、嫌うという感情は「嫌う側の人」の自由な感情の産物なのです。それゆえ、嫌うという感情の責任は、「嫌う側の人」にあるのです。例えば、AさんがBさんを嫌ったとします。その場合、何故嫌うのかという理由は、まずAさんが自分の心の内面の問題として考えねばならないのです。なぜならば、BさんがAさんに「嫌いになれ!」と命令しているのではないからです。イワシの味が好きでサバの味が嫌いという場合、イワシやサバにその責任があるというより、各人の嗜好性にこそ責任があるというのと同じ理屈です。どうも対人緊張の強い人は、他人の感情に対して責任をとりすぎてしまうようです。

2) 強がりは弱さであり、弱さを表現できる事は強いこと。
 九州大学心療内科の初代教授の池見先生が自著で述べておられますが、ある医学会の発表直前に突然ストレス性胃潰瘍から大量吐血されました。その事を振り返って池見先生は、「いい発表をしたいという「功名心」がストレスの原因だった」と素直に感想を述べられています。心療内科の教授でさえ、学会直前には体面や強がりを捨てきれず、吐血にまで至られたわけです。まして我々のような凡人が自分の弱さを敢えて人前に曝せるわけがありません。しかし、池見先生が後日談であれ、このように内面の脆さ(?)を自分から率直に語られたことは、再び先生の本当の強さの証なのだと誰しも考え、強い共感を覚えたに違いありません。もし池見先生が、「あれはピロリ菌のせいだ」とでも言われておれば、巷の先生への評価は微妙に異なったかもしれません。
  自分の弱さや脆さを他人に呈示することに慣れること。その第一歩は、まず自分の弱さを、じっくり自分で眺めるという事でしょう。その全景を眺めるという事は誰しもとても無理ですが、少しでも心の余裕を持ってなるべく客観的に眺められるなら、そのような心の作業自体が実は自分の心の強さの証明として捉え、自分自身を誉める事も大切です。そして次の段階として、自分がその弱さについてくったくなく笑えるようになれば、それこそ最強の布陣なのです。
自分自身でそれを笑えるようになれば、きっと他人もそれを楽しく笑ってくれるでしょうから。
 
3) 誰かに語ると、喜びは二倍になり、苦しみは半分になる。

  「喜びは誰かに語ると二倍になり、逆に苦しみは誰かに語ると半分に減る」と言われます。これはカウンセリングの基本原理です。このことは見方を変えると、
人には、絶えず他者が自分と同じ心境になってくれる事を求める心理があるという事なのです。例えば、怒っている人は必ず周囲の誰かを怒らせるような態度をとります。拗ねている人は、あえて拗ねた態度を取り、相手をも拗ねさせようとします。不安な人は、不安を暗に態度で示し周囲の誰かを不安がらせます(言葉より態度の方が効果的ですから)。
 もうお分かりと思いますが、
感情というものは周囲に伝染するシロモノなのです。そして伝染そのものが、そのまま心の癒やしにつながりやすいのです。ただし我が身の感情は誰にでも伝わるものではなく、ある程度心の波長の合った人にしか伝わりにくいのです。ですから、いざという時のために心の波長の合う人を日頃から身近に探しておかねばなりません。また、自己愛の強い人によくあることですが、自分の性格や自分の悩みを特別視しすぎると周囲の人と心の波長は合わなくなり、感情は伝わりにくくなってしまいます。
  ところで一般に、感情の上手な発信者は感情の上手な受信者であるともいえます。他人の心の波長に自らの波長を合わせる練習も、ある程度必要でしょう。決して過剰にならないレベルで。




 STEP 6
寓話や諺から学ぶ知恵


「脳内革命」という本がて以来、プラス思考という言葉が流行りました。確かにプラス思考が臨機応変に出来るならば、深刻な悩みも一挙に軽くなるでしょう。ところで、古来からプラス思考をうまくアレンジした諺が現代まで数多く生き残っており、現代人に多くの示唆を与えてくれます。その代表格である「塞翁が馬」という中国の古い寓話について述べてみましょう。

         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  昔、あるところに一頭の馬を飼っている人がいました。ところがある日、その馬が逃げてしまいました。すると人は、そんな悪い事ばかりおこらないよと慰めてくれました。馬主が嘆いていると、なんと逃げた馬は後日、雌馬を連れて2頭になって帰ってきたのでした。馬主は大層喜びましたが、そんないい事ばかり続くわけがないと人は言いました。するとその通りに、彼の息子が馬から転落し重い障害を持つ身になってしまいました。すると人はそんな悪いことばかり続かないよと言いました。やがて戦争が始まり、若者達が戦争にかり出され殆どの若者が戦死してしまいました。ところが馬主の息子は障害があるため徴兵をまぬがれ、命を落とすことはありませんでした。
  つまりこれは、不幸と思う出来事のなかに実は幸せの種が隠されており、幸せの中には不幸の種が隠されているんだよ、という事を暗示した諺なのであり、不幸な出来事が起きても結末なんてどうなるか分からないから絶望的にならなくていいよ、ということなのです。
 このように古来からの寓話や諺、あるいは語り継がれた童話などの中には、人生を絶妙に言い当てたものが数多くあります。これらをヒントにするのもストレス対策になるでしょう。



step7  
認知の修正(プラス思考)


これは、 step6 の続編のようなものです。
  自己問答はプラス思考を引き出すために行います。ところで、ゲジュタルトという言葉があります。また、心理療法のひとつにF・パールズが創始したゲシュタルト療法というものがあります。ゲシュタルトとは、ごく簡単に言ってしまえば、たとえばある対象(物体など)を見る場合、そこに浮き出る「図の形」をみるか、図の置かれている背景の「地」を見るか、という全体の把握の仕方の様相のようなものです。図と地のどちらか一方ばかりを見るのではなく、図から地へ、そしてまた地から図へと、交互に柔軟に視点を換え、全体像の本質を把握していくという様式と言えます。全体とその各部分の関係性についての話ということになり、「全体は個々の総和以上のものである」という考え方につながっていきます。 
  ゲシュタルト的な柔軟な視点を持つのが下手な人は、人生のなかでストレス的な出来事が生じた場合に、図か地の一方ばかりに視点を奪われてしまい、柔軟な解決策が浮かばなくなってしまいがちです。このような損な生き方を様々な実践により変革していこうとするのがゲシュタルト療法なのです。ゲシュタルト療法の進行は、一般に「いま、ここ here and now 」での感情や身体感覚が変革する体験を伴う形(目から鱗が落ちるような)で行われます。本来のゲシュタルト療法は集団で行うものですが、ここでは単独でプラス思考を発案するという変法で行ってみましょう。
    では、二つ質問をしてみましょう。

(1)若い時に胃潰瘍のため胃を手術でとってしまった。それ以後、おいしい食事が十分に食べられず、いつも痩せてしまっている。

  さて、この場合のプラス思考の取り方にはどんなものがあるでしょうか。
たとえば、こんなプラス思考もあります。「胃が手術で小さくなったために、食事をたくさん摂れなくなった。その結果、この飽食の時代にあっても小食であるために、肥満にも糖尿病にも高脂血症にも高血圧にもなる確率が減って良かった」という考えはどうでしょう。小食は動物の寿命を延ばすことが実験でも知られています。人間においても小食は、上記のような成人病を予防し、その結果、脳梗塞や狭心症になるリスクが減ることにつながると考えられるのですから。ちなみに米国では肥満から逃れるため、わざわざ健康な胃をとる手術が流行している状況です。

2番目の質問
(2)若いときは元気だったのに、高齢になってから長く走ったり無理をするといつも膝や腰が痛くなり、運動がたくさん出来 ずとても悲しい。

  この場合のプラス思考はどうでしょうか。「膝や腰が痛くてとても悲しい」という図に対して、その背後にある地に目を移せば、どんな対抗思考(プラス思考)が見えてくるでしょうか? ここで、ご自分の頭で5分ほど考えてみてください。なんでも考えが浮かべば、なにか紙片にでもメモをしてみてください。いくつ浮かんでもかまいません。浮かぶ内容が多いほど、地が柔軟に見えており、ゲシュタルトがうまく機能している心の状態ということになります。
 さて、例えばこんな考え方はどうでしょうか。高齢になると、当然心臓や脳血管など、体の大切な部分も足腰と同様に老化現象をきたしています。もしも心臓や脳血管の老化に反して、足腰だけが頑丈で走り続けることが出来るとしたら・・・・・。たぶん心臓はオーバーロードになり破綻するでしょう。高齢者の激しい運動は活性酸素の発生によって心臓や脳の老化を促し、まさに心筋梗塞などを起こしやすくなるのですから。そのため体の他の臓器と同じように足腰も順調に老化していく方が、寿命にプラスになるというものです。
 みなさんは、もっと他のプラス思考が浮かびましたか? ひとつも浮かばなくても悲観する必要はありません。プラス思考は何度もチャレンジしているうちに、練習効果によってうまくなります。水泳やバレエの練習と同じようにです。
       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 いかがですか。プラス思考はストレス的な出来事の意味を変質させ、自分で自分を癒す思考の基盤となります。どうしようもない変えられない現実(過去など)に対して、人は思考の視点を様々に変えることで対処することが可能です。人はいつだって物事の意味をもう一度問い直す機会が与えられるているのです。
  話は少しそれますが、第二次世界大戦中あの悪名高いアウシュビッツ収容所の壁の中で、「夜と霧」の著者フランクルは実存療法(ロゴセラピー)を産みだしました。それは、どうしても変えられない厳しい現実の中でこそ、人は価値観や考え方を変えることで、心はいつも自由に羽ばたくことができ、何物にも人間の尊厳は奪われることはないというものでした。文豪トルストイも小説「戦争と平和」のなかで、同じような視点から人間の尊厳を謳っています。それらは深遠なプラス思考の行き着くところであるような気がします。(ロゴセラピーには、意志の自由、意味への意志、生命の意味の三つの基本となる軸があります)
 以下は、あるサイトの掲示板からの抜粋(借用)です。
・・・・・プラス思考の試みとして、「吃音者は損だ」に対して「吃音は一病息災,小さいときから苦境を克服するため、心に優しいプラス思考を繰り返し努力する結果、自らの感受性を高めることができ、物事をより深く考察できる能力が自然と身に付き、自分の人生をより豊かに過ごせるようになれる ♪」・・・・・・・


step8森林浴など自然の癒

  毎日ほとんどの人たちは、職場でも家庭でも壁や机や機械などの人工の産物に囲まれて生活しています。これら人工物の特徴は自然にあるものと異なり、規則性・等間隔のリズムに制された規格品です。しかし人間のもつ生体リズムには、自然界の諸現象に符合して、1/f という揺らぎが基本にあります。1/f  揺らぎとは、吹く風の息、揺れる木々の動き、虫の羽音、川のせせらぎなどにみられる微妙な不規則性です。そして、そのような揺らぎは心臓の鼓動や呼吸・血圧の不規則な変動などに認められているのです。
  最近(H16年)心臓の研究で、 1/f 揺らぎがしっかり存在する心臓ほど心臓疾患の発生が抑制された、という調査結果が著名な日本の心臓専門医によって報告され反響を呼びました。 森林浴など自然のなかに身を置くと、この1/f 揺らぎに生体が共鳴し、「心身」と「自然」がうまく調和しやすくなると言われます。調和は心身の安らぎをうみ、リラクゼーション効果がえられやすくなります。また、森林の緑は疲れた目に優しいことも知られています。さらに、さまざまな植物の発する「フィトンチッド」は、心身の癒し効果を有し、自然治癒力の向上につながると言われます。

日々の生活に疲れたおり自然の懐に身をゆだねることは、癒しの原点と考えられるでしょう




step 9 トイレ体操のすすめ
              
 
step2 のところで「病は生活習慣から」と書きました。生活習慣を変えることで、いわゆる体質を改善していきます。その基本的な手段に運動があげられます。ドイツの諺に「トラックいっぱいの新薬より一台の自転車」というのがあります。運動は血糖やコレステロールを下げ、新陳代謝を高め、心肺機能も鍛えてくれます。運動は、自律神経の調整や自然治癒能力の向上にもプラスになります。
 しかしわかっていても、なかなか運動になじめない人は少なくありません。まとまった時間を運動のために使うということが億劫で嫌いな人もおられます。そこで、グウタラ運動と名づけてもいいような、運動嫌いな人向けの方法があります。
 それについて述べます。人は毎日、必ずトイレに用を足しに行きます。排尿・排便あわせて普通は1日に6〜7回でしょう。その時を運動に利用するという方法です。 名づけて
トイレ体操です。
 トイレの個室に入って用をたす前後に行います。便器の横で膝を曲げて座ったり立ったりの運動を毎回4回位繰り返します。これスクワットという足腰の鍛錬(筋力アップ)です。体力のない人ならば、最初は1回から始めても構いません。大切なことは、トイレに入った時に必ずそれを行うという継続性です。たとえば1日にトイレに6回入ったとして、計24回のスクワット運動になり、60kgの人なら40kgの荷物を24回50cm位上下に持ち上げたと同じカロリー消費と筋力アップになります。これは計算上、5kgの重さの鉄アレーを肩の位置から頭上まで、なんと200回も腕で持ち上げるのと同じ運動量に匹敵するのです。
 これは、どうしてもスポーツジムに行くなどまとまったスポーツタイムを取れない人が、それほど心の抵抗もなく身近にできる運動方法です。トイレの中では、誰に気兼ねすることもなく、職場でも家の中でも行えます。1分あれば出来る方法です。トイレに入れば「トイレ体操」をしないと物足りない気分になってしまう。という具合に、この運動をトイレで条件反射的に行う習慣がつけばいいのです。毎日のことですから、かなりの運動効果が得られます。ただし、膝の痛い人や血圧の変動の激し過ぎる人には向かないことがあります。俗に「排尿失神」といって、排尿後に血圧が急に低下し気分不良になる人がおられます。そのような人は便器で用をたす前に、この運動を行うべきでしょう。
  「学問に王道なし」と言われます。「運動にも王道なし」です。日々の小さな運動の積み重ねが、徐々に体質改善をもたらし、多くの心身症の克服に役立つはずです。ぜひ今日、トイレに足を向けられたときから、気軽に(密かに?)実践されることをおすすめします。


 追記「大切なことはトイレ体操を継続すること」なのですが・・・・・・グウタラでそれさえ継続できないという人は、時々気が向いたときにするだけでも価値はあります。本来、グウタラ体操なのですから、メクジラヲ立てる必要はありません。グウタラ体操にはグウタラなやり方が性に合っているのですから、気分のいいときにだけするのも大いに結構、グウタラ流でいいのですから。


step 10 「備えあれば憂いなし」

 対人緊張の強い人、赤面恐怖症、上がり症、ドモリ(吃音)の人などへ。
彼らが人前で、赤面になったり、どもったときに、「あーまたダメだ」 「また皆から情けない奴と思われてしまう」という自動思考(条件反射的に浮かぶ執着的な思考)にすぐに縛られる。しかし、そこで留まるだけならば、何の発展性もありません。実は、その場の気まずい雰囲気の中にこそ、その雰囲気を打破するチャンスが潜んでいるのです。よく言われる「ピンチをチャンスに変える」という方法です。
 その方法について、述べてみましょう。
    「 A子さん、また顔が真っ赤だね!」とからかわれ気味に指摘されたとき、普段ならA子さんは、恥ずかしさからますます顔が赤くなり、返す言葉もなくその場から逃げたくなります。これでは、外傷体験を重ねていくだけです。
 このとき目の前にいる相手に向かって、即座に何かを言い返すことで、ピンチをチャンスに変えなければなりません。うまくいけば、症状のみならず、本人の人格評価までイメージチェンジできることになります。
 たとえば、ジョーク的な返答方法が比較的良い反応と言えます。
 「赤いね」と言われたら、「別に共産主義でもないんだけどね」とか「赤いほっぺおいしそうでしょう」とかです。「そうなんですよ。頬紅塗る手間が省けてねえ」・・・・なんていう返答の切り替えしはいかがでしょう。どことなくユーモラスな返事であり、それらの言葉の裏では「あなたのそんなセリフや態度に私ははまけていませんよ」というメッセージを相手にも自分に向かっても発信していることになります。
  このような態度は、顔が赤面して困っているときに、追い詰められて縮んでしまった気持ちを、やんわりと解きほぐす作用として働きます。また、少し高等技術になりますが、「ブラックジョーク」的に相手を少しやり込める言葉もいいかもしれません。「攻撃は最大の防御」ですから。たとえば「逆にあなたは、顔を赤らめるような純な心を、どっかに落としちゃったみたいだね」とかもいいでしょう。話題の中身をを相手に振ってしまうということです。中に、少し洗練された嫌味の「隠し味を」少し加えて話すということになります。
 このように、個々のいやな具体的場面を想定し、『こう言われればこう言い返そう』という自分なりのシナリオを作って覚えておくといいのです。そうすれば、自動思考に嵌ってドギマギするよりも、はるかにゆとりを持ってその場に居続けられるようになるでしょう。外見の容姿に悩んでいた女性が、「ダイコン足だね」とからかわれたときに、「だいこんの値段上がってんだよ、価値ある足なんだから」とうまく言い返したそうです。
 いくつかの不安場面を想定し、前もって言い返すセリフを創作しマニュアル化しておくこと。当然、マニュアルをもとにした練習も必要になるでしょう。これが、「備えあれば憂いなし」の実践方法なのです。ぜひ一度、お試しあれ。これまでと何かが変わるでしょう。
 そして、こうしたアプローチは「治療の目標」をも、往々にして変化させる契機になるかもしれません。単なる症状から逃れようとするのではなく、症状という窓を通して、自分の内面を俯瞰し人間的な成長を獲ることへと変貌していくのです。
 つまり、「赤面症状」という症状を治すのではなく、その症状で、自分の何かを変えるのです。一言でいうなら、『病気を治す、ではなくて・・・・・・病気で、治すのです



        

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