大地震の時のけが

大地震の時のけがとは何か


万一に備えて勉強しておこう

阪神淡路大震災では多くの方が犠牲になりました。慎んでお悔やみ申し上げます。しかし、その時の経験から、大地震の時にどんなけがが多いのか、貴重なデータを残しました。まずは学びましょう。


地震などの緊急時のけがの対応

  1. 切創(割創)

    切創とは、ガラス等で切った傷を言います。阪神淡路大震災では被災と同時に停電したため、暗闇の中を裸足で飛起きて足底で壊れた窓硝子や食器の破片を踏んで切った傷が多く、その為逃げ遅れたケースもあったと聞きます。ベッドサイドにスリッパや靴を常時置いて足底を切らないようにするのが賢明です。割創とは転んだ時に額等が硬いものにぶつかって、皮膚が割れて血が出る傷を言います。

    • 切創の処置と止血

      切創にはまずガラスなどの破片を取り除きます。水が出れば流水で洗いながら取り除くのが一番良い。次に止血。切った部分が小さければその部位を手で押さえると止血出来ます。部位が大きければ足や腕であれば患部より上流の部位をきつく縛って止血します。額や頭は大出血する場合があるので、慌てずに患部を押さえれば5分位で止血出来ます。

  2. 刺創

    刺創とは尖った物で刺した傷を言います。致命的なものは医師に依頼するより他手はありません。特に、頭部、頚部、胸部、腹部の深い刺創は出来るだけ速やかに医師の手当てをさせる必要があります。重傷、軽傷を問わず刺さった物は身体から抜かないで治療させます。抜いた為に大出血する可能性もあるからです。刺創では、先に刺した口が塞がってしまうと、体の中で嫌気性菌(空気の無い所で繁殖する菌)である破傷風菌が繁殖することがありますので、余裕があれば破傷風のトキソイドを注射して貰うと良いでしょう。

  3. 骨折

    開放骨折(折れた骨が傷口から見える骨折)は速やかに医師の手当てを受けさせる必要があります。2次感染で致命的になる場合があるからです。非開放骨折(折れた骨が見えない骨折)の場合、骨折しているか、していないかの診断は最終的にはレントゲンを撮って医師の判断によりますが、緊急の場合には次のような事が目安となります。

    1. 明らかに変形している。
    2. 痛みが強い。動かせない。歩行出来ない。
    3. 腫れが強い。血腫がある。
    4. 安静にしていればそれ程でもないが動かすと疼痛が増す。

    治療としては、副木を当てて固定する。四肢の骨の骨折は患部の上下の2関節を固定する必要がある。

  4. 打撲

    1. 頭部打撲

      頭蓋内の出血やヘルニヤ、骨折は致命的ですので、特に耳から出血していた場合は頭蓋底骨折が疑われますので、至急大病院の救急外来を受診する必要があります。
      救急を要しない場合の目安は、意識はあるか、手・足の麻痺はあるか、持続する頭痛はあるか、ショック状態はあるか、悪心(はきけ)・嘔吐(はく)はあるか、などで、ある場合は速やかに医師の診察を受け、ない場合には致命的になる事態にはならないので、様子を見ても構いません。

      ショック状態:種々の原因により起こる全身の血行障害から組織の低酸素をきたし、重要臓器損傷をもたらす症候群を言います。以下の原因によります。


      1. 乏血性:外傷、出血、熱傷、下痢、嘔吐
      2. 心原性:重症不整脈、心不全、心タンポナーデ、心筋疾患
      3. アナフィラキシー:薬剤注射、蜂刺創

      4. 神経原性:薬剤による急性循環不全

    2. 胸部打撲

      楽に呼吸ができるか。血痰があるか。喀血があるか。
      →楽に呼吸ができなかったり、血痰、喀血がある場合は速やかに医師の診察を受ける。

      • 肋骨骨折
        おおざっぱな目安としては、深呼吸をしたりせき込んだりした時にひびくような痛みを胸部に感じれば、肋骨骨折を疑う。1、2本の非開放性骨折は楽に呼吸できれば致命的ではないので急を要しない。
        開放骨折(傷の断端から骨が見える骨折)や複雑骨折(変形の強い骨折)は気胸(肺がつぶれる)を起こすし、肋骨が肺に刺さって呼吸不全になったり、胸壁動揺を生じて呼吸困難となるので急を要します。

    3. 腹部打撲

      吐血、血尿があるか。ある場合は内蔵損傷、腎破裂などが疑われるので、急を要する。
      交通事故などで余程強い力や加速度が加わらないと、胃、小腸、大腸といった消化管は破裂しない。
      腎臓や肝臓は破裂しやすい。肝臓が破裂するとショックになる。また、長時間建物の下敷きになったりして腎臓に行く血行が途絶えると、クラッシュ・シンドロームになるので、救出された後も腎臓検査などが必要になります。

      • クラッシュ・シンドローム
        腎臓の機能不全を起こして一時的な尿毒症となること。透析を必要とする場合もあるので、注意を要する。

    4. 骨盤打撲

      骨盤内臓器(直腸、膀胱、子宮、直腸など)は骨盤に守られているため、打撲による損傷は比較的少ない。骨盤骨折を起こす場合があるが、骨盤骨折を起こすと歩行不能になるので2次災害を受けやすく、注意を要します。特に妊婦は流産の原因ともなるので、睡眠時には腰の周囲に布団や毛布を巻いて直接的な外力を受けないように注意しましょう。

  5. 火傷・熱傷

    深さ(1〜4度)よりも範囲(体表面積)で重症度は決まります。
    小児では体表面積の10%以上、成人で20%以上の3度の火傷があるとショックをおこします。
    体表面積の2/3以上の火傷では致命的となるので、入院加療が必要です。
    小さな火傷は急を要さないが、2度以上の火傷では痛みがあるので、足底など火傷すると歩行不能になり、2次災害を被る可能性があるので注意を要します。

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