心が貧しくてもお金のある人は幸いである。日本の将来は君らのものである。
心もお金も貧しい人は幸いである。彼らはもはや失うものがない。
心の捩じれた人は幸いである。捩じれを解くのに時間が掛かり退屈しない。
心の捩じ切れた人は幸いである。彼らはもはや心のねじ巻を必要としない。
心の寂しい人は幸いである。気まぐれからすが遊んでくれる。
純喫茶<田園>でベートーベンを聞き、歌声喫茶<カチューシャ>で手風琴に合わせて、カーサンガヨナベーヲシテーと歌いたがる人は幸いである。彼らはレーザーカラオケの50インチ画像に腰を抜かすであろう。
ハボウホウ、60ネンアンポ、シラカバミチコ等という語句を読んで、うっすら涙を浮かべる人は幸いである。彼らはゼンガクレンの骨董品で非常に高価である。
「お父さん、日本の国旗は何故日の丸なの」「それはね、日本は世界の一番東にあって、日出ずる国と言われるからだよ」「それはおかしいよ、お父さん、だって地球は丸いんでしょ、日本の東にハワイがあって、日本から見るとハワイは日出ずる国でハワイから見ると日本は日沈む国、ハワイの更に東にアメリカ大陸があってハワイから見るとアメリカ大陸は日出ずる国、なのにどうして日本だけ日出ずる国なの」と子供に畳み込まれて、少しも忙しくないのに「お父さんは忙しいから学校の先生に聞け」と言う父親は幸いである。彼らは「土曜は二つのお弁当」進学塾の経営安定に協力している。
才色兼備の雅子さまを射止めた皇太子殿下を見て、「うまいことやったなぁ、俺もあん時諦めないでもう少し押してあっちの方にしとけば、違った人生だったかもなぁ」等と考える男は幸いである。彼らは非国民、不敬罪と呼ばれ、塀の中で結局違った人生を歩む事になろう。
テレビのグルメ番組で、満艦色に着飾った、一見美容院帰り化粧の女性レポーターとやらが、小院の一日の収入分位はすると思われる豪華な献立に一口だけ箸を付けて、「うン、口の中に入ると解けてジワーときて、おいしい」等と言うのを聞いて、「馬鹿にするのもいい加減にしろ!」と怒った後で、「それにしても残った料理は誰が食べるんだろう」等と考える人は幸いである。終戦直後の物の無い時代の卑しさ丸出しで治ってない。
ファックスで書類を送った後で、本当に相手に届くのか心配してじっと機器を見つめているおじんは幸いである。彼らはOLから「カワイイ」と言われる。
ジュリアーナ東京で扇子片手にセミヌードで踊る少女達の映像を見て、「戦争が無いと文化は退廃する」としかめ面をしながらも、「もっと見たい」と眼鏡を掛け直す男は幸いである。彼らは正直者と呼ばれる。
「自然を大切にして自然と共に生きよう」と言うけれど、何処まで自然に戻るのかなぁ、電気や水道、家の建材全て自然を破壊してるし、米、野菜、果物、家畜など食料ははそもそも水田、畑や植林、牧場が自然を破壊している。すると、縄文人のように洞窟を見つけて横穴式住居に住み、野生の動物や植物を自然を破壊しないように死んだり枯れたりしてから採取して食べ、湧き水をすすり、日が落ちたら寝る、という生活をすれば良い訳だ。でもそんな事してたら、ソ連が、あ、ソ連は消滅したか、じゃ北朝鮮が攻めて来て日本人は全員自然淘汰されるんじゃないかなぁ、と心配している人は幸いである。そう、自然とはそんなもんである。
恐竜の足跡の化石や胃の中に食べた恐竜の入っている恐竜の化石が見つかった事から、恐竜は一瞬にして全滅したんだな、原因は巨大隕石が地球に衝突したからというのが有力で、将来叉地球に巨大隕石が衝突する可能性はあるらしい。するってえと、僕達も一瞬の内に全滅して、何億年か後の地球人が僕達の化石を掘り出して、旧地球人の研究をする日が来るかもしれない。なにしろ一瞬に全滅するんだから、何億年か後の地球人の博物館に僕達の化石が飾られるんだから、みっともない死に方は厭だな。旧地球人の排泄中の化石、旧地球人の交尾中の化石、旧地球人の入浴中の化石、医師会講演時に流涎して居眠りしている旧地球人医師の化石なんて飾られるのは厭だな。だから今年は、排泄行為、交尾行為、入浴行為、講演中の居眠り行為は一切やめよう、なにしろ一瞬にして滅びるんだから、と悩む人は幸いである。彼らは隕石が地球に衝突する前に膀胱破裂か糞詰まりで死に絶え、化石になれない。
時間が無限にあるなら恐竜が生きていた数億年前も、金さん銀さん生きた100年も無限の時間の前には一瞬にして等しい。なぜなら<無限大+数億年=無限大+100年>だから。するってえと、一生懸命働いて財や名を成しても、だらだら怠けながら日々を送って家人から無能と罵られても無限の時間の前には一瞬にして等しいんだ、万歳!と考える人は(あ、俺だ)幸いである。彼らは老いて働けなくなった時、家人に見捨てられ、日本の高齢者離婚率を上げる。
麻布の校歌に蓬ニスサブ人ノ心ヲ、タメム麻ノ葉カザシニ挿シテ…とあるのはどういう意味だろう、と思い悩む人は幸いである。彼はチャリンコで暴走るガキがシロジニアカク、ヒノマルソメテ…を日本の国歌だと思って歌っているのを、その通り!と涙ぐんで一緒に歌っているから。
自分は水を飲んでも肥る体質だと諦めて、高価なダイエットのハウツウ本や食品、健康器具などをうっちゃって、食べ放題でゴロゴロしている女性は幸いである。そう、貴女は肥る体質だから。
被災地を視察に行ったセンセイが「被災地にも薄羽かげろうが飛び回っています」とテレビのリポーターに言われたのを「薄馬鹿下郎が飛び回っている」と言われたと勘違いして怒る議員は幸いである。現地で「人や家財流失、茫然と暮らす人、被害増大、死傷者多数、看護婦必要、家政婦必要」と言われたのを「一夜か、在留。失望せんと暮らす一日、改装大。私娼者多数、看護不必要、加勢不必要」と聞き違えて、にやにやしながら一夜で何もしないで帰ったから。
コスモス(宇宙)の反対語はカオス(渾沌)と聞いて、いやスモスコだという人は幸いである。<カオス醒め飛びつつ裏が小コスモス 此処から現人目指す岡>とか<反対語地域の言葉問ひ済ます 人は何処の器一期居たんは>とか<対話いざ運ぶ計算事実勝つ 爺むさい今日こは幸いだ>のような回文短歌を作れるから。
マーフィーの法則から「組み合わせたものは、遅かれ早かれバラバラになる」を見つけて連立内閣の将来を安ずる人は幸いである。「去年はいつだっていい年だ」ともあるから。
産道から始めて外界に出て産声をあげた途端に母親の屁の臭いを嗅いだ赤んぼは幸いである。彼らは生涯公害反対を口にする事はない。
決して合理的で合目的で無いのにどうしても論理的に論破出来ない女の理屈に、「女は口で考え、子宮で判断し、感覚で行動するから、頭の引き出しはいつも空っぽで何も入っていない」と反論して無駄な抵抗を繰り返す亭主は幸いである。僕も全く同意見である。
…お互い、我慢して苦労を重ねたなぁ。トホホ…。こんな駄文ならだれでも書けると気づいた諸君は幸いである。彼らは進んでエッセイ書きに参加するだろう…と、総理大臣になって、国会で訓示を垂れている初夢を見た。…ねえ、皆、エッセイ書いてよ。