光電子増倍管とシンチレーター

光電子増倍管(photo multiplier tube、PMT)は業界でもっとも頻繁に使用されている(と思う)検出器で、
光が入ってくると内部で増幅して電気信号に変えて出力する光センサーです。
カミオカンデで有名になったんじゃないでしょうか?
逆に、光が入ってこないと黙ったままなので粒子が飛んできたときに光が出るようにしてやる必要があります。
それがシンチレーターです。

光電子増倍管

まず、実物の写真をドウゾ。PMTには様々な種類、大きさ、タイプがあります。基本的に大きいほど高出力ですが、値段も張ります(笑)左の写真のPMTがだいたい30〜40万円です。物理の世界だけでなく医療分野でも使われているこのPMT、「浜松ホトニクス」という日本の企業が世界シェアの9割を占めています。(教官談)すべて手作業で作ってるそうで、納期は2〜3ヶ月かかります。

●構造と動作のしくみ

絵がうまく描けなかったので教科書をコピって来ました(笑)
左側から光が入射します。上の写真と同じ向きです。入射窓はガラスで出来ていて、光は簡単に通過できます。その後、「光電面」と呼ばれる金属面に光がぶち当たります。写真では金属っぽく光ってる部分です。

光電面に光が入ってくると、「光電効果」と呼ばれる現象によって、金属内部の電子が飛び出します。飛び出した電子は、強い電場によって加速されて一段目の「ダイノード」に衝突します。ダイノードに衝突した電子は、加速で得たエネルギーを使ってダイノード内の電子を次々と飛び出させます。この飛び出した電子を2次電子といいます、ここで、電子の数が増幅されているわけです。

2次電子はまた電場によって加速され、次の段のダイノードに衝突し、新たな2次電子群を発生させます。これをどんどんと繰り返し、始めは1個だった電子は最終段のダイノードに達するとき1億個程度にまで増えます。ここまで到達した電子は、電流として外部に読み出されていきます。

●代表的なPMTの種類

○ヘッドオン型:写真のように管の上部に窓があるもの。

○サイドオン型:側面に窓があるもの

○位置検出型:入射面のどの位置に光が入射したかが読み出せるもの

○角型:四角いもの。

○クォーツ窓:入射窓がガラスじゃなく水晶。紫外線も検出できる
などなど・・・・。

シンチレーター

上で見たように、PMTは光にしか応答しません。また光を検出したい場合でも、入射窓から入ってこないことにはダメなので、窓のサイズが小さいと検出には不便なわけです。そこでPMTとセットでよく使われるのが「シンチレーター」です。

シンチレーターは一言で言えば、粒子が入射した際に光を発生する物質です。一声シンチレーターと言っても種類はいろいろで、目的や用途によって使い分けられます。メジャーなものとして「プラスチックシンチ」「無機シンチ」「液体シンチ」を紹介しますが、基本的な原理は全て同じです。

●発光の原理

全ての物質は原子からできていて、原子は原子核と複数の電子によって構成されています。ここで、原子核に束縛されている電子について触れておきます。イメージ的に電子は原子核の周りをぐるぐる回っているので、電子はエネルギーを持っています。実は原子内では電子の「席」が決まっていて、特定の席に座るには特定のエネルギーを持った状態でないと座ることが出来ません。

ここで、ある席に座っていた電子に外から何らかの方法でちょっかい出して他の席に座れるだけのエネルギーを与えたとします。電子はエネルギーもらって元気なので、狭い席でじっとしてないで上の席に移動します。これの状態を「励起状態」といいます。ところが上の席は1秒も経たないうちに飽きて(笑)元の席に戻ろうとします。下の席に戻りたいけど自分はエネルギーがあり余ってるので戻れない。このとき電子がどうするかと言うと、過剰なエネルギーをとして外に捨ててもとの席に戻るのです。
シンチレーターの発光原理はこれを利用しています。シンチレーション物質に荷電粒子が入ってくると、物質中の電子と電気的な引力や反発力が働きこの影響で電子が励起されます。そして励起された電子が元の席に落ち込むときに光が出るわけです。この光を「シンチレーション光」と言います。

●代表的なシンチレーター

1.プラスチックシンチレーター

所詮はプラスチックなので、安くて加工しやすいのが利点。スペースの問題や環境の要求から好きなサイズ、形にできる。デメリットとして、応答が不安定で同じエネルギーで同じ粒子を入れても発光量にばらつきが大きいので、入射粒子のエネルギーを逆算したいときには不向き。(これを「エネルギー分解能が悪い」と言う)

2.無機シンチレーター

プラスチックを始め有機化合物でできたシンチレーターに対して無機物質でできているもの。よく使われるのはヨウ化ナトリウム(NaI)にタリウム(Tl)を混合したもの。NaIは潮解性があるので金属でパッキングされた状態で売られている。エネルギー分解能が比較的高いが高価。

3.液体シンチレーター

実物を見たことないのでよく分かりませんがー。水に溶けた放射線源を測定したいときに使うんだと思う。

測定システム

では実際にどうやって測定をするかと言う話ですが。プラスチックシンチの写真しかないので(笑)その例を紹介します。

上にも書いたように、PMTは光に応答するので部屋の光等でも信号を返します。それでは見たい信号が見えなくなってしまうので遮光する必要があります。またシンチレーターも光によってシンチレーションを起こすので同じ理由により遮光が必要になります。そういうわけで写真では、まとめて黒いビニールでグルグル巻きにされています(笑)

シンチやPMTの間は光学セメントや光学グリスと呼ばれるもので接着します。光学セメントは固まったあとでも光が通るように透明になる接着剤で、グリスの方は透明なジェルです。


で、PMTの入射窓ととシンチレーターの側面は必ずしも同じ形をしているわけではありません。そこでシンチからの光をPMTの窓に誘導する「ライトガイド」がよく用いられます。



まとめると、シンチレーターに粒子が入ってくると粒子のエネルギーに応じて発光し、その光がライトガイドに導かれPMTに入ります。そしてPMTによって発光量が読み出されるわけです。シンチレーション光は四方八方に出るので、PMTと逆側に飛んでいったりシンチから飛び出したりして、全ての光が読み出せるわけではありません。しかしPMTは微弱な光にも感知できるので問題ありません。



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