六要鈔会本 第10巻の(9の内)
 化身土の巻
 真偽決判
   引文 『月蔵経』「諸悪鬼神得得敬心品」
     「諸天王護持品」
◎=親鸞聖人『教行信証』の文。
〇=存覚『六要抄』の文
『教行信証六要鈔会本』 巻十之三

 ◎大方等大集月蔵経巻第五諸悪鬼神得敬信品第八上言。諸仁者於彼遠離邪見因縁。獲十種功徳。何等為十。一者心性柔善伴侶賢良。二者信有業報乃至奪命不起諸悪。三者帰敬三宝不信天神。四者得於正見不択歳次日月吉凶。五者常生人天離諸悪道。六者得賢善心明人讃誉。七者棄於世俗常求聖道。八者離断常見信因縁法。九者常与正信正行正発心人共相会遇。十者得生善道。以是遠離邪見善根回向阿耨多羅三藐三菩提。是人速満六波羅蜜。於善浄仏土而成正覚。得菩提已。於彼仏土功徳智慧一切善根荘厳衆生。来生其国。不信天神。離悪道畏。於彼命終還生善道。略抄。
 ◎『大方等大集月蔵経』巻第五「諸悪鬼神得敬信品」第八の上に言わく、もろもろの仁者、かの邪見を遠離する因縁に於いて、十種の功徳を獲ん。何等をか十とする。一には、心性柔善にして伴侶賢良ならん。二には、業報あることを信じて、乃至、命を奪わんとも、諸悪を起こさず。三には、三宝を帰敬して天神を信ぜず。四には、正見を得て、歳次日月の吉凶を択ばず。五には、常に人天に生まれてもろもろの悪道を離る。六には、賢善の心明らかなることを得て、人、讃誉せしむ。七には、世俗を棄てて常に聖道を求めん。八には、断常の見を離れて因縁の法を信ず。九には、常に正信・正行・正発心の人と共に、あい会〈あつ〉まり遇わん。十には、善道に生まるることを得しむ。この邪見を遠離する善根を以て、阿耨多羅三藐三菩提に回向す。この人、速やかに六波羅蜜を満ぜん。善浄の仏土にして正覚を成らん。菩提を得已りて、かの仏土に於いて、功徳・智慧・一切善根、衆生を荘厳せん。その国に来生して天神を信ぜず、悪道の畏を離れて、彼にして命終して、還りて善道に生ぜん。略抄。KESINDO:SYOZEN2-179/HON-372,373,HOU-483,484

 〇次日蔵経所引有八。一第五巻諸悪鬼神得敬信品第八上文。明依遠離邪見因縁速満六度得菩提也。分文為三。一諸仁者下至云為十一行余者。先標離邪有其十種。次明徴問。二一者以下至生善道六行余者。正挙其数。三以是之下至尽当文四行余者。明其益也。SYOZEN2-420/TAI9-463,464
 〇次に『日蔵経』所引に八あり。一には第五巻「諸悪鬼神得敬信品」第八の上の文。邪見の因縁を遠離するに依りて速かに六度を満たし、菩提を得ることを明かすなり。文を分かちて三と為す。一に「諸仁者」の下、「為十」というに至るまで一行余は、先まず邪を離るるにその十種あることを標す。次に徴問を明かす。二に「一者」以下、「生善道」に至るまで六行余は、正しくその数を挙ぐ。三に「以是」の下、当文を尽くすに至るまで四行余は、その益を明かすなり。SYOZEN2-420/TAI9-463,464


 ◎月蔵経巻第六諸悪鬼神得敬信品第八下言。仏出世甚難。法僧亦復難。衆生浄信難。離諸難亦難。哀愍衆生難。知足第一難。得聞正法難。能修第一難。得知難平等。於世常受楽。此十平等処。智者常速知。乃至。爾時世尊於彼諸悪鬼神衆中説法。時於彼諸悪鬼神衆中。彼悪鬼神昔於仏法作決定信。彼於後時近悪知識。心見他過。以是因縁生悪鬼神。略出。
 ◎『月蔵経』巻第六「諸悪鬼神得敬信品」の第八の下に言わく、仏の出世、はなはだ難し。法僧もまた難し。衆生の浄信難し。諸難を離るること、また難し。衆生を哀愍すること難し。知足、第一に難し。正法を聞くことを得ること難し。よく修すること、第一に難し。難を知ることを得て、平等なれば、世において常に楽を受く。この十平等処は、智者は常に速やかに知らんと。乃至。その時に世尊、かのもろもろの悪鬼神衆の中にして法を説きたまう時に、かのもろもろの悪鬼神衆の中にして、かの悪鬼神は、むかし仏法に於いて決定の信を作せりしかども、彼、後の時に於いて、悪知識に近づきて心に他の過を見る。この因縁を以て、悪鬼神に生まると。略出。KESINDO:SYOZEN2-179,180/HON-373,HOU-484

 〇二第六巻同品下文。分文為二。初仏出下至常速知三行余者。五言偈頌十二句也。説十平等明諸智者常速可知。次爾時下至尽当文三行余者。対諸悪鬼明得彼報之因縁耳。SYOZEN2-420/TAI9-469
 〇二には第六巻、同じき品の下の文。文を分かちて二と為す。初に「仏出」の下、「常速知」に至る三行余は、五言の偈頌、十二句なり。十平等を説きて諸の智者の常に速かに知るべきことを明かす。次に「爾時」の下、当文を尽くすに至るまで三行余は、諸の悪鬼に対して彼の報を得るの因縁を明かすらくのみ。SYOZEN2-420/TAI9-469


 ◎大方等大集経巻第六月蔵分中諸天王護持品第九言。爾時世尊示世間故。問娑婆世界主大梵天王言。此四天下是誰能作護持養育。時娑婆世界主大梵天王作如是言。大徳婆伽婆。兜率陀天王共無量百千兜率陀天子。護持養育北欝単越。他化自在天王共無量百千他化自在天子。護持養育東弗婆提。化楽天王共無量百千化楽天子。護持養育南閻浮提。須夜摩天王共無量百千須夜摩天子。護持養育西瞿陀尼。
 ◎『大方等大集経』巻第六「月蔵分」の中、「諸天王護持品」第九に言く、その時に世尊、世間を示すがゆえに、娑婆世界の主大梵天王に問うて言く、この四天下に、これ誰かよく護持養育を作すと。時に娑婆世界の主大梵天王、かくの如きの言を作さく、大徳婆伽婆、兜率陀天王、無量百千の兜率陀天子と共に北欝単越を護持し養育せしむ。他化自在天王、無量百千の他化自在天子と共に東弗婆提を護持し養育せしむ。化楽天王、無量百千の化楽天子と共に南閻浮提を護持し養育せしむ。須夜魔天王、無量百千の須夜魔天子と共に西瞿陀尼を護持し養育せしむ。KESINDO:SYOZEN2-180/HON-373,374,HOU-484-

 ◎大徳婆伽婆。毘沙門天王共無量百千諸夜叉衆。護持養育北欝単越。提頭頼[タ04]天王共無量百千乾闥婆衆。護持養育東弗婆提。毘楼勒天王共無量百千鳩槃荼衆。護持養育南閻浮提。毘楼博叉天王共無量百千龍衆。護持養育西瞿陀尼。
 ◎(月蔵分)大徳婆伽婆、毘沙門天王、無量百千の諸夜叉衆と共に、北欝単越を護持し養育せしむ。提頭頼[タ04]天王、無量百千の乾闥婆衆と共に、東弗婆提を護持し養育せしむ。毘楼勒天王、無量百千の鳩槃荼衆と共に、南閻浮提を護持し養育せしむ。毘楼博叉天王、無量百千の龍衆と共に、西瞿陀尼を護持し養育せしむ。KESINDO:SYOZEN2-180/HON-374,HOU-484,485-

 ◎大徳婆伽婆。天仙七宿・三曜・三天童女。護持養育北欝単越。彼天仙七宿者。虚・危・室・壁・奎・婁・胃。三曜者。鎭星・歳星・[ケイ11]惑星。三天童女者。鳩槃・弥那・迷沙。大徳婆伽婆。彼天仙七宿中。虚・危・室三宿是鎭星土境。鳩槃是辰。壁・奎二宿是歳星土境。弥那是辰。婁・胃二宿是[ケイ11]惑土境。迷沙是辰。大徳婆伽婆。如是天仙七宿・三曜・三天童女。護持養育北欝単越。
 ◎(月蔵分)大徳婆伽婆、天仙七宿・三曜・三天童女、北欝単越を護持し養育せしむ。かの天仙七宿とは虚・危・室・壁・奎・婁・胃なり。三曜は鎮星・歳星・[ケイ11]惑星なり。三天童女は鳩槃・弥那・迷沙なり。大徳婆伽婆、かの天仙七宿の中に虚・危・室の三宿は、これ鎮星の土境なり。鳩槃はこれ辰なり。壁・奎の二宿は、これ歳星の土境なり。弥那はこれ辰なり。婁・胃の二宿は、これ[ケイ11]惑の土境なり。迷沙はこれ辰なり。大徳婆伽婆、かくのごとき天仙七宿・三曜・三天童女、北欝単越を護持し養育せしむ。KESINDO:SYOZEN2-180,181/-HON-374,HOU-485-

 ◎大徳婆伽婆。天仙七宿・三曜・三天童女。護持養育東弗婆提。彼天仙七宿者。昴・畢・觜・参・井・鬼・柳。三曜者。太白星・歳星・月。三天童女者。毘利沙・弥偸那・羯迦[タ04]迦。大徳婆伽婆。彼天仙七宿中。昴・畢二宿是太白土境。毘利沙是辰。觜・参・井三宿是歳星土境。弥偸那是辰。鬼・柳二宿是月土境。羯迦[タ04]迦是辰。大徳婆伽婆。如是天仙七宿・三曜・三天童女。護持養育東弗婆提。
 ◎(月蔵分)大徳婆伽婆、天仙七宿・三曜・三天童女、東弗婆提を護持し養育せしむ。かの天仙七宿は昴・畢・觜・参・井・鬼・柳なり。三曜は太白星・歳星・月なり。三天童女は毘利沙・弥偸那・羯迦[タ04]迦なり。大徳婆伽婆、かの天仙七宿の中に昴・畢の二宿はこれ太白の土境なり。毘利沙はこれ辰なり。觜・参・井の三宿はこれ歳星の土境なり。弥偸那はこれ辰なり。鬼・柳の二宿はこれ月の土境なり。羯迦[タ04]迦はこれ辰なり。KESINDO:SYOZEN2-181/-HON-374,375,HOU-485-

 ◎大徳婆伽婆。天仙七宿・三曜・三天童女。護持養育南閻浮提。彼天仙七宿者。星・張・翼・軫・角・亢・[テイ05]。三曜者。日・辰星・太白星。三天童女者。[シャク02]訶([シャク02] 星黒の反。須陵の反)・迦若・兜羅。大徳婆伽婆。彼天仙七宿中。星・張・翼是日土境。[シャク02]訶是辰。軫・角二宿是辰星土境。迦若是辰。亢・[テイ05]二宿是太白土境。兜羅是辰。大徳婆伽婆。如是天仙七宿・三曜・三天童女。護持養育南閻浮提。
 ◎(月蔵分)大徳婆伽婆、かくのごとき天仙七宿・三曜・三天童女、東弗婆提を護持し養育せしむ。大徳婆伽婆、天仙七宿・三曜・三天童女、南閻浮提を護持し養育せしむ。かの天仙七宿は星・張・翼・軫・角・亢・[テイ05]なり。三曜は日・辰星・太白星なり。三天童女は[シャク02]訶([シャク02] 星黒の反。須陵の反)・迦若・兜羅なり。大徳婆伽婆、かの天仙七宿の中に、星・張・翼はこれ日の土境なり。[シャク02]訶はこれ辰なり。軫・角の二宿はこれ辰星の土境なり。迦若はこれ辰なり。亢・[テイ05]の二宿はこれ太白の土境なり。兜羅はこれ辰なり。大徳婆伽婆、かくのごとき天仙七宿・三曜・三天童女、南閻浮提を護持し養育せしむ。KESINDO:SYOZEN2-181/-HON-375,HOU-485,486-

 ◎大徳婆伽婆。彼天仙七宿・三曜・三天童女。護持養育西瞿陀尼。彼天仙七宿者。房・心・尾・箕・斗・牛・女。三曜者。[ケイ11]惑星・歳星・鎭星。三天童女者。毘離支迦・檀[ド01]婆・摩伽羅。大徳婆伽婆。彼天仙七宿中。房・心二宿是[ケイ11]惑土境。毘利支迦是辰。尾・箕・斗三宿是歳星土境。檀[ド01]婆是辰。牛・女二宿是鎭星土境。摩迦羅是辰。大徳婆伽婆。如是天仙七宿・三曜・三天童女。護持養育西瞿陀尼。
 ◎(月蔵分)大徳婆伽婆、かの天仙七宿・三曜・三天童女、西瞿陀尼を護持し養育せしむ。かの天仙七宿は房・心・尾・箕・斗・牛・女なり。三曜は[ケイ11]惑星・歳星・鎮星なり。三天童女は毘離支迦・檀[ド01]婆・摩伽羅なり。大徳婆伽婆、かの天仙七宿の中に房・心の二宿はこれ[ケイ11]惑の土境なり。毘利支迦はこれ辰なり。尾・箕・斗の三宿はこれ歳星の土境なり。檀[ド01]婆はこれ辰なり。牛・女の二宿はこれ鎮星の土境なり。摩伽羅はこれ辰なり。大徳婆伽婆、かくのごとき天仙七宿・三曜・三天童女、西瞿陀尼を護持し養育せしむ。KESINDO:SYOZEN2-181,182/-HON-375,HOU-486-

 ◎大徳婆伽婆。此四天下。南閻浮提最為殊勝。何以故。閻浮提人勇健聡慧。梵行相応仏。婆伽婆於中出世。是故四大天王於此倍増護持養育此閻浮提。有十六大国。謂鴦伽摩伽陀国・傍伽摩伽陀国・阿槃多国・支提国。此四大国。毘沙門天王与夜叉衆囲遶護持養育。迦尸国・都薩羅国・婆蹉国・摩羅国。此四大国。提頭頼[タ04]天王与乾闥婆衆囲遶護持養育。鳩羅婆国・毘時国・槃遮羅国・疎那国。此四大国。毘楼勒叉天王与鳩槃荼衆囲遶護持養育。阿湿婆国・蘇摩国・蘇羅[タ04]国・甘満闍国。此四大国。毘楼博叉天王。与諸龍衆。囲繞護持養育。
 ◎(月蔵分)大徳婆伽婆、この四天下に南閻浮提は最も殊勝なりとす。何を以ての故に。閻浮提の人は勇健聡慧にして、梵行、仏に相応す。婆伽婆、中に於いて出世したまう。このゆえに四大天王、ここに於いて倍増してこの閻浮提を護持し養育せしむ。十六の大国あり。いわく、鴦伽摩伽陀国・傍伽摩伽陀国・阿槃多国・支提国なり。この四大国は、毘沙門天王、夜叉衆と囲繞して護持し養育せしむ。迦尸国・都薩羅国・婆蹉国・摩羅国、この四大国は、提頭頼[タ04]天王、乾闥婆衆と囲繞して護持し養育せしむ。鳩羅婆国・毘時国・槃遮羅国・疎那国、この四大国は、毘楼勒叉天王、鳩槃荼衆と囲繞して護持し養育せしむ。阿湿婆国・蘇摩国・蘇羅[タ04]国・甘満闍国、この四大国は、毘楼博叉天王、もろもろの龍衆と囲繞して護持し養育せしむ。KESINDO:SYOZEN2-182/-HON-375,376,HOU-486-

 ◎大徳婆伽婆。過去天仙護持養育此四天下。故亦皆如是分布安置。於後随其国土城邑村落塔寺園林樹下塚間山谷曠野河泉陂泊乃至海中宝洲天祠。於彼卵生・胎生・湿生・化生。諸龍・夜叉・羅刹・餓鬼・毘舎遮・富単那・迦[タ04]富単那等。生於彼中。還住彼処。無所繋属。不受他教。是故願仏於此閻浮提一切国土。彼諸鬼神分布安置。為護持故。為護一切諸衆生故。我等於此説欲随喜。
 ◎(月蔵分)大徳婆伽婆、過去の天仙この四天下を護持養育せしむ。故にまた皆かくの如く分布安置せしむ。後に於いて、その国土・城邑・村落・塔寺・園林・樹下・塚間・山谷・曠野・河泉・波泊、乃至、海中宝洲・天祠に随いて、かの卵生・胎生・湿生・化生に於いて、もろもろの龍・夜叉・羅刹・餓鬼・毘舎遮・富単那・迦[タ04]富単那等、かの中に生じて、かの処に還住して、繋属するところなし。他の教を受けず。この故に願わくは、仏、この閻浮提の一切国土に於いて、かのもろもろの鬼神、分布安置して、護持のための故、一切もろもろの衆生を護らんがための故に、我等、この説に於いて随喜せんと欲すと。KESINDO:SYOZEN2-182/-HON-376,HOU-486,487-

 ◎仏言。如是大梵。如汝所説。爾時世尊欲重明此義。而説偈言。示現世間故。導師問梵王。於此四天下。誰護持養育。如是天師梵。諸天王為首。兜率他化天。化楽須夜摩。能護持養育如此四天下。四王及眷属。亦復能護持。二十八宿等。及以十二辰。十二天童女。護持四天下。随其所生処。龍鬼羅刹等。不受他教者。還於彼作護。天神等差別。願仏令分布。憐愍衆生故。熾然正法灯。
 ◎(月蔵分)仏の言わく、かくの如き、大梵、汝が所説の如しと。その時に世尊、重ねてこの義を明かさんと欲して、偈を説きて言わく、世間に示現するが故に、導師、梵王に問わまく、この四天下に於いて、誰か護持し養育せんと。かくの如き天師梵、諸天王を首として、兜率・他化天・化楽・須夜摩、よく、かくの如き四天下を護持し養育せしむ。四王および眷属、またよく護持せしむ。二十八宿等、および十二辰、十二天童女、四天下を護持せしむ。その所生の処に随いて、龍・鬼・羅刹等、他の教を受けざるも、彼に還りて護を作しき。天神等、差別して、願じて、仏、分布せしめたまえり。衆生を憐愍したまう故に、正法の灯を熾然ならしむ。KESINDO:SYOZEN2-182,183/-HON-376,377,HOU-487-

 ◎爾時仏告月蔵菩薩摩訶薩言。了知清浄土。此賢劫初。人寿四万歳時。鳩留孫仏出興於世。彼仏為無量阿僧祇億那由他百千衆生。廻生死輪転正法輪。追廻悪道安置善道及解脱果。彼仏以此四大天下付属娑婆世界主大梵天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王等。護持故。養育故。憐他衆生故。令三宝種不断絶故。熾然故。地精気・衆生精気・正法精気久住増長故。令諸衆生休息三悪道故。趣向三善道故。以四天下付属大梵及諸天王。如是漸次劫尽。諸天人尽。一切善業白法尽滅。増長大悪諸煩悩溺。人寿三万歳時。拘那含牟尼仏出興於世。彼仏以此四大天下付属娑婆世界主大梵天王・他化自在天王乃至四大天王及諸眷属。護持養育故。乃至令一切衆生休息三悪道趣向三善道故。以此四天下付属大梵及諸天王。
 ◎(月蔵分)その時に仏、月蔵菩薩摩訶薩に告げて言わく、清浄土を了知するに、この賢劫の初め人寿四万歳の時、鳩留孫仏、世に出興したまいき。かの仏、無量阿僧祇億那由他百千の衆生のために、生死に回して正法輪を輪転せしむ。追うて悪道に回して、善道および解脱の果を安置せしむ。かの仏、この四大天下を以て、娑婆世界の主大梵天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王等に付嘱せしむ。護持の故に、養育の故に、他の衆生を憐れむが故に、三宝の種をして断絶せざらしめんが故に、熾然ならんが故に、地の精気・衆生の精気・正法の精気、久しく住せしめ増長せんが故に、もろもろの衆生をして三悪道を休息せしめんが故に、三善道に趣向せんが故に、四天下を以て大梵および諸天王に付嘱せしむ。かくの如き漸次に劫尽き、諸天人尽き、一切善業・白法尽き滅して、大悪・もろもろの煩悩溺を増長せん。人寿三万歳の時、拘那含牟尼仏、世に出興したまいき。かの仏、この四大天下を以て、娑婆世界の主大梵天王・他化自在天王・乃至四大天王およびもろもろの眷属に付嘱したまう。護持養育の故に、乃至、一切衆生をして三悪道を休息して、三善道に趣向せしめんが故に、この四天下を以て、大梵および諸天王に付嘱したまう。KESINDO:SYOZEN2-183,/-HON-377,378,HOU-487-

 ◎如是次第劫尽。諸天人尽。白法亦尽。増長大悪諸煩悩溺。人寿二万歳時。迦葉如来出興於世。彼仏以此四大天下付属娑婆世界主大梵天王他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王・[キョウ02]尸迦・帝釈・四天王等及諸眷属。護持養育故。乃至令一切衆生休息三悪道趣向三善道故。彼迦葉仏以此四天下付属大梵四天王等。及付諸天仙衆・七曜・十二天童女・二十八宿等。護持故。養育故。
 ◎(月蔵分)かくの如き次第に劫尽き、諸天人尽き、白法また尽きて、大悪もろもろの煩悩溺を増長せん。人寿二万歳の時、迦葉如来、世に出興したまう。かの仏、この四大天下を以て、娑婆世界の主大梵天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王・[キョウ02]尸迦帝釈・四天王等、およびもろもろの眷属に付嘱したまえり。護持養育の故に、乃至一切衆生をして三悪道を休息せしめ、三善道に趣向せしめんが故に、かの迦葉仏、この四天下を以て、大梵・四天王等に付嘱し、および諸天仙衆・七曜・十二天童女・二十八宿等に付したまえり。護持の故に、養育の故に。KESINDO:SYOZEN2-183,184/-HON-378,HOU-487,488-

 ◎了知清浄土。如是次第至今劫濁・煩悩濁・衆生濁・大悪煩悩濁・闘諍悪世時。人寿百歳。一切白法尽。一切諸悪闇翳。世間譬如海水一味大鹹。大煩悩味遍満於世。集会悪黨。手執髑髏。血塗其掌。共相殺害。如是悪衆生中。我今出世苦提樹下。初成正覚。受提謂波利諸商人食。為彼等故。以此閻浮提分布天龍・乾闥婆・鳩槃荼・夜叉等。護持養育故。
 ◎(月蔵分)清浄土を了知するに、かくの如き次第に、今、劫濁・煩悩濁・衆生濁・大悪煩悩濁・闘諍悪世の時、人寿百歳に至るまで、一切の白法尽き、一切諸悪闇翳ならん。世間は、たとえば海水の一味にして大鹹なるがごとし。大煩悩の味、世に遍満せん。集会の悪党、手に髑髏を執り、血をその掌に塗らん、共にあい殺害せん。かくの如きの悪の衆生の中に、我いま出世して、菩提樹下に初めて正覚を成じて、提謂・波利・もろもろの商人の食を受けて、彼等がための故に、この閻浮提を以て天・龍・乾闥婆・鳩槃荼・夜叉等に分布せしむ。護持養育の故に。KESINDO:SYOZEN2-184/-HON-378,HOU-488-

 ◎以是大集十方所有仏土。一切無余菩薩摩訶薩等。悉来集此。乃至於此娑婆仏土。其処百億日月・百億四天下・百億四大海・百億鉄囲山大鉄囲山・百億須弥山・百億四阿修羅城・百億四大天王・百億三十三天・乃至百億非想非非想処。如是略数。娑婆仏土。我於是処而作仏事。乃至於娑婆仏土所有諸梵天王及諸眷属・魔天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王・帝釈天王・四大天王・阿修羅王・龍王・夜叉王・羅刹王・乾闥婆王・緊那羅王・迦楼羅王・摩[ゴ02]羅伽王・鳩槃荼王・餓鬼王・毘舎遮王・富単那王・迦[タ04]富単那王等。悉将眷属於此大集。為聞法故。乃至於此娑婆仏土所有諸菩薩摩訶薩等及諸声聞。一切無余悉来集此。為聞法故。我今為此所集大衆顕示甚深仏法。復為護世間故。以此閻浮提所集鬼神。分布安置護持養育。
 ◎(月蔵分)ここを以て大いに十方所有の仏土・一切無余の菩薩摩訶薩等を集めて、ことごとくここに来集せん。乃至この娑婆仏土に於いて、その処の百億の日月、百億の四天下、百億の四大海、百億の鉄囲山・大鉄囲山、百億の須弥山、百億の四阿修羅城、百億の四大天王、百億の三十三天、乃至百億の非想非非想処、かくの如きの数を略せり。娑婆仏土、我この処にして仏事を作す。乃至、娑婆仏土の所有の諸梵天王およびもろもろの眷属、魔天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王・帝釈天王・四大天王・阿修羅王・龍王・夜叉王・羅刹王・乾闥婆王・緊那羅王・迦楼羅王・摩[ゴ02]羅伽王・鳩槃荼王・餓鬼王・毘舎遮王・富単那王・迦[タ04]富単那王等において、ことごとく眷属を将いて、ここに大集せり。聞法のための故に。乃至、ここに娑婆仏土の所有のもろもろの菩薩摩訶薩等およびもろもろの声聞、一切余なく、ことごとくここに来集せり。聞法のためのゆえに。我いま、この所集の大衆のために甚深の仏法を顕示せしむ。また世間を護らんがための故に、この閻浮提所集の鬼神を以て分布安置す。護持養育すべし。KESINDO:SYOZEN2-184,185/-HON-378,379,HOU-488,489-

 ◎爾時世尊復問娑婆世界主大梵天王言。過去諸仏以此四大天下曽付属誰令作護持養育。時娑婆世界主大梵天王言。過去諸仏以此四天下曽付属我及[キョウ02]尸迦。令作護持。而我有失不。彰己名及帝釈名。但称諸余天王及宿曜辰。護持養育。爾時娑婆世界主大梵天王及[キョウ02]尸迦帝釈。頂礼仏足而作是言。大徳婆伽婆。大徳修伽陀。我今謝過。我如小兒愚癡無智。於如来前不自称名。大徳婆伽婆。唯願容恕。大徳修伽陀。唯願容恕。諸来大衆亦願容恕。我於境界言説教令。得自在処護持養育。乃至令諸衆生趣善道故。我等曽於鳩留孫仏。已受教勅。乃至令三宝種已作熾然。拘那含牟尼仏・葉達仏所。我受教勅亦如是。於三宝種已勤熾然。地精気・衆生精気・正法味醍醐精気久住増長故。亦如我今於世尊所頂受教勅。於己境界言説教令。得自在処休息一切闘諍飢饉。乃至令三宝種不断絶故。三種精気久住増長故。遮障悪行衆生護養行法衆生故。休息衆生三悪道趣向三善道故。為令仏法得久住故。勤作護持。
 ◎(月蔵分)その時に世尊、また娑婆世界の主、大梵天王に問うて言わく、過去の諸仏、この四大天下を以て、かつて誰に付嘱して護持養育を作さしめたまうや。時に娑婆世界の主大梵天王言さく、過去の諸仏、この四天下を以て、かつて我および[キョウ02]尸迦に付嘱したまいて、護持を作さしめき。しかして、我、失ありや。己が名および帝釈の名を彰さずして、ただ諸余の天王および宿・曜・辰を称せしむ、護持養育すべしと。その時に娑婆世界の主大梵天王および[キョウ02]尸迦帝釈、仏足を頂礼してこの言を作さく、大徳婆伽婆、大徳修伽陀、我いま過を謝すべし。我小児のごとくして、愚痴無智にして、如来の前にして、自ら称名せざらんや。大徳婆伽婆、やや願わくは容恕したまえ。大徳修伽陀、やや願わくは容恕したまえ。諸来の大衆、また願わくは容恕したまえ。我、境界に於いて言説教令す。自在の処を得て護持養育すべし。乃至、もろもろの衆生をして善道に趣かしめんが故に、我等むかし鳩留孫仏のみもとにして、すでに教勅を受けたまわりて、乃至、三宝の種すでに熾然ならしむ。拘那含牟尼仏・迦葉仏の所〈みもと〉にして、我教勅を受けたまわりしこと、またかくの如し。三宝の種においてすでに勤〈ねんごろ〉にして熾然ならしむ。地の精気、衆生の精気、正法の味、醍醐の精気、久しく住し増長せしむるが故に、また我がごときも今、世尊の所〈みもと〉にして教勅を頂受し、己が境界に於いて言説教令す。自在の処を得て、一切闘諍飢饉を休息せしめ、乃至、三宝の種断絶せざらしむるが故に、三種の精気久住して増長せしむるが故に、悪行の衆生を遮障して、行法の衆生を護養するが故に、衆生をして三悪道を休息せしめ、三善道に趣向するが故に、仏法をして久しく住せしむることを得しめんがための故に、勤〈ねんごろ〉に護持を作すと。KESINDO:SYOZEN2-185,186/-HON-379,380,HOU-489,490-

 ◎仏言。善哉善哉妙丈夫。汝応如是。爾時仏告百億大梵天王言。所有行法住法順法厭捨悪者。令悉付属汝等手中。汝等賢首於百億四天下各各境界言説教令。得自在処。所有衆生弊悪麁[コウ07]悩害。於他無有慈愍。不観後世畏。触悩刹利心及婆羅門・毘舎・首陀心。乃至触悩畜生心。如是作殺生因縁。乃至作邪見因縁。随其所作非時風雨。乃至令地精気・衆生精気・正法精気作損減因縁者。汝応遮止令住善法。若有衆生。欲得善者。欲得法者。欲度生死彼岸者。所有修行檀波羅蜜者。乃至修行般若波羅蜜者。所有行法住法衆生。及為行法營事者。彼諸衆生。汝等応当護持養育。若有衆生。受持読誦。為他演説。種種解説経論。汝等当与彼諸衆生念持方便得堅固力。入所聞不忘。智信諸法相。令離生死。修八聖道。三昧根相応。若有衆生。於汝境界住法。奢摩他毘婆舎那次第方便。与諸三昧相応。勤求修習三種菩提者。汝等応当遮護摂受。勤作捨施。勿令乏少。若有衆生。施其飲食衣服臥具。病患因縁施湯薬者。汝等応当令彼施主五利増長。何等為五。一者寿増長。二者財増長。三者楽増長。四者善行増長。五者慧増長。汝等長夜得利益安楽。以是因縁汝等能満六波羅蜜。不久得成一切種智。
 ◎(月蔵分)仏の言わく、善いかな、善いかな、妙丈夫、汝かくの如くなるべしと。その時に仏、百億の大梵天王に告げて言わく、所有の行法、法に住し法に順じて悪を厭捨せん者は、今ことごとく汝等が手の中〈うち〉に付嘱す。汝等賢首、百億の四天下おのおのの境界において、言説教令す。自在の処を得て、所有の衆生、弊悪・麁[コウ07」にして、他において悩害し、慈愍あることなし。後世の畏を観ぜずして、刹利心および婆羅門・毘舎・首陀心を触悩せん、乃至、畜生心を触悩せん。かくの如き殺生を作す因縁、乃至、邪見を作す因縁、その所作に随いて非時の風雨あらん。乃至、地の精気・衆生の精気・正法の精気、損減の因縁を作さしめば、汝、遮止して善法に住せしむべし。もし衆生ありて善を得んと欲わん者、法を得んと欲わん者、生死彼岸に度せんと欲わん者、檀波羅蜜を修行することあらんところの者、乃至、般若波羅蜜を修行せん者、所有の行法、法に住せん衆生、および行法のために事を営まん者、かのもろもろの衆生、汝等まさに護持養育すべし。もし衆生ありて、受持し読誦して、他のために演説し種種に経論を解説せん。汝等、まさにかのもろもろの衆生と、念持方便して堅固力を得べし。所聞に入りて忘れず、諸法の相を智信して、生死を離れしめ、八聖道を修して、三昧の根相応せん。もし衆生ありて、汝が境界において法に住せん、奢摩他・毘婆舎那、次第方便して、もろもろの三昧と相応して、勤に三種の菩提を修習せんと求めん者、汝等、まさに遮護し摂受して、勤に捨施を作して、乏少せしむることなかるべし。もし衆生ありて、その飲食・衣服・臥具を施し、病患の因縁に湯薬を施ん者、汝等、まさにかの施主をして五利増長せしむべし。何等をか五とする。一には寿増長せん、二には財増長せん、三には楽増長せん、四には善行増長せん、五には慧増長するなり。汝等、長夜に利益安楽を得ん。この因縁を以て、汝等、よく六波羅蜜を満ち、久しからずして一切種智を成ずることを得ん。KESINDO:SYOZEN2-186,187/-HON-380,381,HOU-490,491-

 ◎時娑婆世界主大梵天王為首。共百億諸梵天王咸作是言。如是如是。大徳婆伽婆。我等各各於己境界弊悪麁[コウ07]悩害。於他無慈愍心。不観後世畏。乃至我当遮障与彼施主増長五事。仏言。善哉善哉。汝応如是。爾時復有一切菩薩摩訶薩・一切諸大声聞・一切天龍乃至一切人非人等讃言。善哉善哉大雄猛士。汝等如是法得久住。令諸衆生得離悪道速趣善道。
 ◎(月蔵分)時に娑婆世界の主大梵天王を首として、百億の諸梵天王と共に、ことごとくこの言を作さく、かくの如し、かくの如し。大徳婆伽婆、我等おのおのに己が境界於いて、弊悪・麁[コウ07」にして、他を悩害し、慈愍の心なく、後世の畏れを観ぜざらん。乃至、我まさに遮障して、かの施主と〈かの施主とのために〉五事を増長すべしと。仏の言わく、善いかな、善いかな、汝かくのごとくなるべし。その時にまた、一切菩薩摩訶薩、一切諸大声聞、一切天・龍、乃至一切人・非人等ありて、讃めて言く、善いかな、善いかな、大雄猛士、汝等、かくの如き法、久しく住することを得、もろもろの衆生をして悪道を離るること得、速やかに善道に趣かしめん。KESINDO:SYOZEN2-187/-HON-381,HOU-491-

 ◎爾時世尊欲重明此義而説偈言。我告月蔵言。入此賢劫初。鳩留仏付属梵等四天下。遮障諸悪故。熾然正法眼。捨離諸悪事。護持行法者。不断三宝種。増長三精気。休息諸悪趣。令向諸善道。拘那含牟尼。復属大梵王・他化化楽天乃至四天王。次後迦葉仏。復属梵天王・化楽等四天・帝釈護世王・過去諸天仙。為諸世間故。安置諸曜宿。令護持養育。至於濁悪世。白法尽滅時。我独覚無上。安置護人民。今於大衆前。数数悩乱我。応当捨説法。置我令護持。十方諸菩薩。一切悉来集。天王亦来此娑婆仏国土。我問大梵王。誰昔護持者。帝釈大梵天。指示余天王。於時釈梵王。謝過導師言。我等所王処。遮障一切悪。熾然三宝種。増長三精気。遮障諸悪朋。護持善朋黨。已上抄出。
 ◎(月蔵分)その時に世尊、重ねてこの義を明らめんと欲〈おぼ〉して、偈を説きて言わく、我月蔵に告げて言わく、この賢劫の初めに入りて、鳩留孫仏、梵等に四天下を付嘱したまう。諸悪を遮障するが故に、正法の眼を熾然ならしむ。もろもろの悪事を捨離し、行法の者を護持し、三宝の種を断たず、三精気を増長し、もろもろの悪趣を休息し、もろもろの善道に向かえしむ。拘那含牟尼、また大梵王・他化・化楽天・乃至四天王に嘱したまう。次後に迦葉仏、また梵天王・化楽等四天・帝釈・護世王・過去の諸天仙に嘱したまう。もろもろの世間のための故に、もろもろの曜宿を安置して、護持し養育せしめたまえり。濁悪世に至りて、白法尽滅せん時、我、独覚無上にして、人民を安置し護らん。今大衆の前にして、しばしば我を悩乱せば、まさに説法を捨つべし。我に置て護持せしめよ。十方のもろもろの菩薩、一切ことごとく来集せん。天王もまた、この娑婆仏国土に来らしめん。我、大梵王に問わく、誰か昔護持せる者と。帝釈・大梵天、余の天王を指示す。時に、釈・梵王、過を導師に謝して言く、我等、所王の処、一切の悪を遮障し、三宝の種を熾然ならしめ、三精気を増長し、諸悪の朋を遮障して、善朋党を護持せしむと。已上抄出。KESINDO:SYOZEN2-187,188/-HON-381,382,383,HOU-491,492

 〇三第六巻諸天王護持品第九之文。広説天王諸天仙等護持養育四天下相。分文為二。一自文初至正法灯七十五行。是明世尊大梵問答。二爾時仏告月蔵下。至尽当文五丁余者。是明仏告月蔵菩薩。賢劫四仏以四天下付属梵釈四天等相。又明尊大梵問答以下重重所説之義。初中有三。初爾時之下。至持養育一行余者。世尊問也。次時娑婆下。至欲随喜天十四行十一字者。梵王答也。後仏言之下。至尽当文八行余者。又明仏説。二中有六。一初十四字先標梵答。二大徳以下。至瞿陀尼五行余者。明兜率陀他化自在化楽天王須夜摩天此等空居四大天主。各与無量我天子等。如次護養北東南西四大洲也。三大徳之下。至西瞿陀五行余者。明毘沙門(此云多聞)提頭頼[タ04](此云持国)毘楼勒叉(此云増長)毘楼博叉(此云広目)此四天王各与眷属。如前次第護養四洲。四大徳之下。至瞿陀尼三十一行。是明二十八宿之中所当七宿。七曜之中所当三曜。十二天中所当三辰。十二天童女中各三。亦如前次護養四洲。宿曜辰名皆見本文。此中二十八宿配当梵漢有異。月氏配当依仏経説。震旦所列世俗説歟。弘決十云。如摩[トウ11]伽中。又有蓮華実婆羅門。問帝勝伽言。汝知星不。答言。蜜要猶知。況此小術。広説二十八宿及七曜等。然経列四方星与此有稍異。此方者。西方七奎婁胃昂畢觜参。南方七井鬼柳星張翼軫。東方七角亢[テイ04]房心尾箕。北方七斗牛女虚危室壁。経所列者。西方従昴星終至柳星。如此遞遷。一方各七。是地七異故。已上。摩[トウ11]伽経。与今所挙日蔵説同。為示両説今出文也。五大徳之下。至持養育十一行余。是明別於此閻浮提十六大国。四大天王各領四国護持養育。六大徳之下。至欲随喜八行余者。是明梵王引古結上請仏於此分布安置諸鬼神等護持養育。三中為三。初十字者明仏印可。次爾時下十三字者明欲説偈。後示現下七行一字正是五言二十四句其偈頌也。総説上来問答事耳。二中為二。初爾時下十一字者先明告命。次了知下是正説也。於中有七。一自文之初至持養育五十行者。是明賢劫四仏付嘱。二爾時世尊復問之下。至作護持二十一行余。是明世尊大梵問答。初二行余是世尊問。時娑婆下梵王答也。此答有三。初過去下至作護持一行余者。正答仏問。次而我下。至云大衆亦願容恕六行余者。大梵謝過。後我於下十行余者。明梵王述由蒙過去三仏教勅今仏勅故。於三宝種不令断絶。誓可遮障悪行衆生。護養行法衆生。三仏言以下十三字者明仏印可。四爾時仏告百億之下。至切種智二十四行。是明世尊勅大梵王説可遮止邪見衆生。令住善法致護養者。汝満六度速成種智。五時娑婆下。至応如是四行余者。是明大梵領受仏勅。世尊印可梵言。六爾時已下。至趣善道三行余者。明諸菩薩大声聞及諸衆等讃如来徳。七爾時已下。至尽当文十五行余。是明世尊重説偈頌宣如上事。初十三字明欲説偈。我告以下所謂五言四十八句其偈頌也。SYOZEN2-420,421,422/TAI9-483,484

 〇三に第六巻「諸天王護持品」第九の文。広く天王・諸天仙等、四天下を護持養育する相を説く。文を分かちて二と為す。一に文の初より、「正法灯」に至るまで七十五行、これ世尊と大梵との問答を明かす。二に「爾時仏告月蔵」の下、当文を尽くすに至るまで五丁余は、これ仏、月蔵菩薩に告げて、賢劫の四仏、四天下を以て梵・釈・四天等に付属する相を明かす。また世尊と大梵との問答以下は重重に所説の義を明かす。初の中に三あり。初に「爾時」の下、「持養育」に至るまで一行余は、世尊の問なり。次に「時娑婆」の下、「欲随喜天」に至るまで十四行十一字は、梵王の答なり。後に「仏言」の下、当文を尽くすに至るまで八行余は、また仏説を明かす。二が中に六あり。一に初の十四字は、まず梵答を標す。二に「大徳」以下、「瞿陀尼」に至るまで五行余は、兜率陀・他化自在・化楽天王・須夜摩天、これらの空居の四大天主、おのおの無量の我天子等と、次の如く北東南西四大洲を護養することを明かすなり。三に「大徳」の下、「西瞿陀」に至るまで五行余は、毘沙門(ここには多聞という)、提頭頼[タ04](ここには持国という)、毘楼勒叉(ここには増長という)、毘楼博叉(ここには広目という)、この四天王、おのおの眷属と、前次第の如く四洲を護養することを明かす。四に「大徳」の下、「瞿陀尼」に至るまで三十一行は、これ二十八宿の中に所当の七宿、七曜の中に所当の三曜、十二天の中に所当の三辰、十二天童女の中におのおの三、また前の次の如く四洲を護養することを明かす。宿・曜・辰の名は、みな本文に見えたり。この中に二十八宿の配当は、梵漢に異あり。月氏の配当は仏経の説に依る。震旦の所列は世俗の説か。『弘決』の十に云わく「摩[トウ11]伽の中の如し。また蓮華実婆羅門ありて、帝勝伽に問いてわく、汝、星を知るや不や。答えて言わく、蜜要すらなお知れり、況んやこの小術をや。広く二十八宿及び七曜等を説く。然るに経に四方の星を列すること、これとやや異なることあり。この方には、西方に七、奎・婁・胃・昂・畢・觜・参、南方に七、井・鬼・柳・星・張・翼・軫、東方に七、角・亢・[テイ04]・房・心・尾・箕、北方に七、斗・牛・女・虚・危・室・壁なり。経に列する所は、西方は昴・星より終に柳・星に至るまで、かくの如く遞に遷れば、一方におのおの七つ、これ地七異の故に」已上。『摩[トウ11]伽経』と今の挙ぐる所の「日蔵」の説と同じ。両説を示さんがために、今、文を出だすなり。五に「大徳」の下、「持養育」に至るまで十一行余は、これ別にこの閻浮提十六大国に於いて、四大天王おのおの四国を領して護持養育することを明かす。六に「大徳」の下、「欲随喜」に至るまで八行余は、これ梵王、古を引き上を結して、仏、ここにして、もろもろの鬼神等を分布安置して、護持し養育したまえと請することを明かす。三が中に三と為す。初の十字は仏の印可を明かす。次に「爾時」の下の十三字は偈を説かんと欲することを明かす。後に「示現」の下、七行一字は正しくこれ五言二十四句、その偈頌なり。総じて上来問答の事を説くらくのみ。二が中に二と為す。初に「爾時」の下、十一字は、まず告命を明かす。次に「了知」の下、これ正説なり。中に於いて七あり。一に文の初より、「持養育」に至るまで五十行は、これ賢劫の四仏の付嘱を明かす。二に「爾時世尊復問」の下、「作護持」に至るまで二十一行余は、これ世尊と大梵との問答を明かす。初の二行余はこれ世尊の問、「時娑婆」の下は梵王の答なり。この答に三あり。初に「過去」の下、「作護持」に至るまで一行余は、正しく仏の問に答う。次に「而我」の下、「大衆亦願容恕」というに至るまで六行余は、大梵、過を謝す。後に「我於」の下十行余は、梵王は過去三仏の教勅、今仏の勅を蒙るに由るが故に、三宝の種に於いて断絶せしめず、誓いて悪行の衆生を遮障し、行法の衆生を護養すべきことを述ぶることを明かす。三に「仏言」以下の十三字は、仏の印可を明かす。四に「爾時仏告百億」の下、「切種智」に至るまで二十四行は、これ世尊の、大梵王に勅して、邪見の衆生を遮止し、善法に住せしめて護養を致さば、汝、六度を満して速かに種智を成ずべしと説きたまうことを明かす。五に「時娑婆」の下、「応如是」に至るまで四行余は、これ大梵領受仏勅。世尊の、梵言を印可したまうことを明かす。六に「爾時」已下、「趣善道」に至るまで三行余は、諸菩薩・大声聞及び諸衆等の、如来の徳を讃ずることを明かす。七に「爾時」已下、当文を尽くすに至るまで十五行余は、これ世尊、重ねて偈頌を説きて上の如き事を宣べたまうことを明かす。初の十三字は偈を説かんと欲することを明かす。「我告」以下は、いわゆる五言四十八句、その偈頌なり。SYOZEN2-420,421,422/TAI9-483,484