六要鈔会本 第10巻の7(9の内) 化身土の巻 真偽決判 引文 法琳『弁正論』「九箴篇」~「帰心有地篇」 |
◎=親鸞聖人『教行信証』の文。 〇=存覚『六要抄』の文 |
『教行信証六要鈔会本』 巻十之七 |
◎二皇統化。須弥四域経云。応声菩薩為伏羲。吉祥菩薩為女[カ03]也。居渟風之初。三聖立言。空寂所問経云。迦葉為老子。儒童為孔子。光浄為顔回也。興已澆之末。玄虚沖一之旨。黄老盛其談。詩書礼楽之文。周孔隆其教。明謙守質乃登聖之階梯。三畏五常為人天之由漸。蓋冥符於仏理。非正弁極談。猶謗道於[イン01]聾。麾方而莫窮遠迩。問律於兎馬。知済而不測浅深。因斯而談。殷周之世非釈教所宜行也。猶炎威赫耀。童子不能正目而視。迅雷奮撃。懦夫不能張耳而聴。是以。河池涌浮。昭王懼於誕神。雲霓変色。穆后欣亡聖。周書異記云。昭王二十四年四月八日江河泉水悉泛漲。穆王五十二年二月十五日。暴風起樹木折。天陰雲黒。有白虹之怪也。豈能越葱河而禀化。踰雲嶺而效誠。浄名云。是盲者遇。非日月咎。適欲窮其鑿竅之弁。恐傷吾子混沌之性。非爾所知。其盲一也。 ◎(弁正論)二皇、化を統べて(『須弥四域経』に云わく、応声菩薩を伏義とす、吉祥菩薩を女[カ03]とするなり)、淳風の初めに居り、三聖、言を立てて(『空寂所問経』に云わく、迦葉を老子とす、儒童を孔子とす、光浄を顔回とするなり)、已澆の末を興す。玄虚沖一の旨、黄老その談を盛りにす。詩書礼楽の文、周孔その教を隆〈たか〉くす。謙を明らかにし、質を守る、すなわち聖に登るの階梯なり。三畏・五常は人天の由漸とす。けだし冥に仏理に符〈かな〉う、正弁の極談にあらや。なお道を[イン01]聾に謗り、方を麾きて遠迩を窮むることなかれ。律を兎馬に問う、済〈わた〉るを知りて浅深を測らず。これに因りて談ずるに、殷周の世は釈教の宜しく行うべきところにあらざるなり。なお炎威耀を赫〈かがや〉かす、童子、目を正しゅうして視ることあたわず。迅雷奮い撃つ、懦夫、耳を張りて聴くことあたわず。ここを以て河池涌き浮かぶ、昭王、神を誕ずることを懼る。雲霓色を変ず、穆后、聖を亡〈うしな〉わんことを欣ぶ。(『周書異記』に云わく、昭王二十四年四月八日、江河泉水ことごとく泛〈うかび〉漲せり。穆王五十二年二月十五日、暴風起ちて樹木折れ、天陰り雲黒し、白虹の怪あるなり)。あによく葱河を越えて化を禀け、雪嶺を踰えて誠を効〈いた〉さんや。『浄名』(維摩経)に云わく「これ盲者の過なり〈盲者遇えり〉、日月の咎にあらず」。たまたまその鑿竅の弁を窮めんと欲う、恐らくは、吾子混沌の性を傷む。それ知るところにあらず、その盲、一なり。KESINDO:SYOZEN2-196,197/-HON-392,393,HOU-501,502- 〇自此以下次明九箴。但依略初文相起尽前後易迷。故示題目。其目録云。内九箴篇第六答外九迷論。周世無機一。建造像塔二。威儀器服三。棄耕分衛四。教為治本五。忠孝靡違六。三宝無翻七。異方同制八。老身非仏九。已上。目録如此。正於諸段所安題目。初有内字。又一乃至九之字上各有指字。於九迷者別無題目。二皇等者。即是初段。謂内周世無機指一之末文也。題目以前外論文言題目以後内箴初文所除是多。依為初段所引前後文言出之。即本文云。外論曰。夫言者非尚於華。辞貴在乎中理。歌者非尚於清。響貴資乎合節。仏経如来説法之時。諸国天子普来集聴。或放光明遍大千土。但釈迦在世之日当我周朝。史冊所書固無遺漏。未聞天王詣彼葱嶺。豈於中華之帝無善不預道場。辺鄙之君有縁普沾法座。光明所照則衆生離苦。而此土何辜偏無人悟。独隔恩外曾不見聞。取要。内周世無機指一内箴曰。夫淳儀麗天矇*(ソウ 目+叟)莫鑑其色。雷霆駭地。聾夫弗聆其響者。蓋機感之絶也。作暴兇跖孔智無以遏其心。結憤野夫賜弁。莫能[ケン05]其忿。亦情性之殊也。有註。故道合則万里懸応。勢乖則肝胆楚越。況無始結曠悩愛与滄海校深。有為業広塵労将巨岳争峻。群情不能頓至。故導之以積漸。衆行不可備修。故策之以限分。猶天地二化始合於自然。略註。斉魯再変乃臻於至道。密雲導於時雨。堅氷創於履霜。皆漸積之謂也故(此下二皇統化以下十四行余併如所引。)SYOZEN2-432,433/TAI9-602,603 〇これより以下、次に九箴を明かす。ただし初を略するに依りて、文相起尽前後迷いやすし。故に題目を示す。その目録に云わく「内九箴の篇第六、外の九迷論を答す。周世に機なき一。像塔を建造する二。威儀器服三。耕を棄てて分衛する四。教は治の本たる五。忠孝違なき六。三宝翻なき七。異方同制の八。老の身は仏にあらざる九」已上。目録かくの如し。正しく諸段に於いて安ずる所の題目、初に内の字あり。また一乃至九の字の上に、おのおの指の字あり。九迷に於いては別に題目なし。「二皇」等とは、即ちこれ初段、謂わく内には周世に機なき指の一の末の文なり。題目以前は外論の文言、題目以後は内箴の初文、除く所はこれ多し。初段所引の前後の文言たるに依りて、これを出だす。即ち本文に云わく「外論に曰わく、それ言は華を尚ぶにあらず、辞の貴きことは理に中〈あ〉たるにあり。歌は清を尚ぶにあらず、響の貴きことは節に合〈かな〉うに資〈よ〉る。仏経は如来説法の時、諸国の天子普く来たりて集い聴く。あるいは光明を放ちて大千の土に遍く。ただし釈迦在世の日は我が周朝に当たる。史冊に書する所、固〈まこと〉に遺漏なし。いまだ天王の彼の葱嶺に詣ずることを聞かず。あに中華の帝に於いて善なくして道場に預からず。辺鄙の君、縁ありて普く法座に沾う。光明の照らす所、則ち衆生は苦を離る。しかしてこの土は何の辜あってか偏に人の悟りなく、独り恩外に隔てて、かつて見聞せざるや」取要。内には周世に機なき指の一、内箴に曰わく「それ淳儀は天に麗とも、矇*(ソウ 目+叟)はその色を鑑みることなし。雷霆の地を駭かすに、聾夫その響を聆〈き〉かざるは、けだし機感の絶たるなり。暴を作す兇跖孔の智も以てその心を遏〈とど〉むることなし。憤を結ぶ野夫賜が弁も、能くその忿をのぞくことなし。また情性の殊なるなり。(註あり。)故に道の合〈かな〉うるときは則ち万里懸〈はる〉かに応じ、勢乖く則〈とき〉んば肝胆楚越なり。況わんや無始結曠し、悩愛と滄海と深きことを校〈くら〉ぶ。有為業広し、塵労、巨岳を将て峻〈けわ〉しきことを争う。群情、頓に至ること能わず。故にこれを導くに積漸を以てす。衆行、備に修すべからず。故にこれを策〈はげ〉むに限分を以てす。天地の二化、始めて自然に合〈かな〉うがごとし。(註を略す。)斉魯、再び変じて乃ち至道に臻〈いた〉る。密雲、時雨を導き、堅氷、霜を履むに創まる。皆漸積の謂なるが故に(この下「二皇統化」以下の十四行余は併しながら所引の如し。)SYOZEN2-432,433/TAI9-602,603 ◎内建造像塔指二。自漢明已下訖于斉梁。王公守牧清信士女。及比丘比丘尼等。冥感至聖国覩神光者。凡二百余人。至如見迹万山浮耀滬涜。清台之下覩満月之容。雍門之外観相輪之影。南平獲応於瑞像。文宣感夢於聖牙。蕭后一鑄剋成。宗皇四摸而不就。其例甚衆。不可具陳。豈以爾之無目而斥彼之有霊哉。 ◎(弁正論)内には像塔を建造す、指の二。漢明よりこのかた、斉・梁に訖〈おう・おえる・いたる〉まで、王・公・守牧、清信の士・女、及び比丘・比丘尼等、冥に至聖を感じ、国に神光を覩る者、おおよそ二百余人。迹を万山に見〈みそなわ〉し、耀〈ひかり〉を滬涜〈ことく〉に浮かぶ、清台の下〈もと〉に満月の容〈かたち〉を覩、雍門の外に相輪の影を観るがごときに至る。南平は応を瑞像に獲、文宣は夢を聖牙に感ず。蕭后一たび鋳て剋成し、宗皇四たび摸して就〈な〉らず。その例、はなはだ衆し、具に陳ぶべからず。あに爾が無目を以て、かの有霊を斥〈きら〉わんや。KESINDO:SYOZEN2-197/-HON-393,394,HOU-502,503- 〇内建等者即二箴也。自漢明下至有霊哉六行余者。当段外論文末註也。是故此文雖在建造像等題前。於此句者。居外論末而所弾折外論意句故。以其意楽助内箴故為示其義安題後歟。SYOZEN2-433/TAI9-616 〇「内建」等とは、即ち二箴なり。「自漢明」の下、「有霊哉」に至る六行余は、当段外論の文の末の註なり。この故にこの文は建造像等の題の前にありといえども、この句に於いては、外論の末に居して、しかも外論の意を弾折する所の句なるが故に、その意楽、内箴を助くるを以ての故に、その義を示さんがために題の後に安ずるか。SYOZEN2-433/TAI9-616 ◎然徳無不備者。謂之為涅槃。道無不通者。名之為菩提。智無不周者。称之為仏陀。以此漢語訳彼梵言。則彼此之仏昭然可信也。何以明之。夫仏陀者。漢言大覚也。菩提者。漢言大道也。涅槃者。漢言無為也。而吾子終日踐菩提之地不知大道。即菩提異号也。禀形於大覚之境未閑大覚。即仏陀之訳名也。故荘周公且有大覚者。而後知其大夢也。郭註云。覚者聖人也。言患在懐者皆夢也。註云。夫子与子游未能忘言而神解。故非大覚也。君子曰。孔丘之談。茲亦尽矣。涅槃寂照。不可識識。不可知智。則言語断。而心行滅。故忘言也。法身乃三点四徳之所成。肅然無累。故称解脱。此其神解而患息也。夫子雖聖。遥以推功仏。何者。按劉向古舊二録云。仏流経於中夏一百五十年後。老子方説五千文。然而周之与老並見仏経所説。言教往往可験。乃至。 ◎(弁正論)しかるに徳として備わらざる者なし、これを謂いて涅槃とす。道として通ぜざる者なし、これを名づけて菩提とす。智として周からざる者なし、これを称して仏陀とす。この漢語を以て、かの梵言を訳す。則ち彼此の仏、昭然として信ずべきなり。何を以てかこれを明かすとならば、それ仏陀は漢には大覚というなり。菩提は漢には大道と言うなり。涅槃は漢には無為と言うなり。しかるに吾子、終日に菩提の地を践んで大道即ち菩提の異号なることを知らず。形を大覚の境に禀けて、いまだ大覚即ち仏陀の訳名なることを閑〈なら〉わず。故に荘周が公〈い〉わく「また大覚ある者は、後にその大夢を知るなり」。『郭註』に云わく「覚は聖人なり。言うこころは患〈うれい〉懐にあるはみな夢なり」。『註』に云わく「夫子、子游と、いまだ言を忘れて神解することあたわず、故に大覚にあらざるなり」。君子の曰わく、孔丘の談、ここにまた尽きぬ。涅槃寂照、識として識〈さと〉るべからず、知として智るべからず。則ち言語断えて心行滅す、故に言を忘るるなり。法身は乃し三点・四徳の成す所、蕭然として無累なり。故に解脱と称す。これその神解して患息するなり。夫子、聖なりといえども、遙かに以て功を仏に推〈ゆず〉れり。いかんとなれば、劉向が古旧二録を案ずるに云わく「仏流、中夏を経て一百五十年の後、老子方に五千文を説く。しかるに周と老と、並びに仏経の所説を見る。言教往往たり、験〈かんが〉えつべし」乃至。KESINDO:SYOZEN2-197,198/-HON-393,394,HOU-502,503- 〇然徳無不備者等者内箴文也。上有数行。今又除之。問。若如然者。霊哉之下然徳之上尤以可置乃至言乎。答。上文雖在内箴之前。以其意通引加内箴為鉤鎖也。若言乃至。只可相似錯乱文段。是故不置乃至言也。可験之下言乃至者。当段之中猶有残文。又除三四及五箴初。故云爾也。是等数箴繁故不載其文而已。SYOZEN2-433,434/TAI9-625 〇「然徳無不備者」等とは内箴の文なり。上に数行あり、今またこれを除く。問う、もし然の如くならば、「霊哉」の下、「然徳」の上に尤以て乃至の言を置くべし。答う、上の文、内箴の前にありといえども、その意通ずつを以て、内箴に引き加えて鉤鎖をなすなり。もし乃至といわば、ただ文段を錯乱するに相似たり。この故に乃至の言を置かざるなり。「可験」の下に「乃至」というは、当段の中に、なお残文あり。また三・四及び五箴の初を除く。故に爾いうなり。これらの数箴は繁なるが故にその文を載せざらくのみ。SYOZEN2-433,434/TAI9-625 ◎正法念経云。人不持戒。諸天減少。阿修羅盛。善龍無力。悪龍有力。悪龍有力則降霜雹。非時暴風疾雨。五穀不登。疾疫競起。人民飢饉。互相殘害。若人持戒。多諸天増足威光。修羅減少。悪龍無力。善龍有力。善龍有力風雨順時。四気和暢。甘雨降稔穀豐。人民安楽。兵戈戦息。疾疫不行也。乃至。 ◎(弁正論)『正法念経』に云わく、人、戒を持たざれば、諸天減少し、阿修羅盛なり。善龍力なし、悪龍力あり。悪龍力あれば、則ち霜雹を降して、非時の暴風疾雨、五穀登〈みの〉らず、疾疫競い起こり、人民飢饉す、たがいに相残害す。もし人、戒を持てば、多く諸天威光を増足す。修羅減少し、悪龍力なし、善龍力あり。善龍力あれば、風雨、時に順じ、四気和暢なり。甘雨降りて、稔穀豊かなり。人民安楽にして、兵戈戦息す、疾疫行ぜざるなり。乃至。KESINDO:SYOZEN2-198/-HON-394,395,HOU-503- 〇次引正法念経以下五箴終文。今所引者是註文也。問。此註之意宣何事乎。依無当段外論之言並内箴文。難弁旨趣。請聞具文欲知元由。答。外論曰。夫国以民為本。本固則邦寧。是以賜及育子之門恩流孕婦之室。故子孫享祀世載不虧。雖至孝毀躬不令絶祀。故得国家富強天下昌盛。未聞人民凋尽家国可存。今仏教即不妻不娶名為奉法。唯早逝号得涅槃。既闕長生之方。又無不死之術。斯則一世之中家国空矣。取意。内教為治本指五内箴曰。夫澄神変性入道之要門。絶情棄欲登聖之遐本。故云道高者尚。徳弘者賞。以道伝神。以徳授聖。神聖相伝。是謂良嗣。塞道之源伐徳之根。此謂無後。非云棄欲為無後也。子不聞乎。昔何尚之言釈氏之化無所不可。諒入道之教源。誠済俗之称首。夫行一善則去一悪。去一悪則息一刑。一刑息於家。則万刑息於国。故知五戒十善為正治之本矣。又五戒修而悪趣減。十善暢而人天滋。人天滋則正化隆。悪趣衰而災害殄。已上。所引註者此文注也。此中文句又与唐本聊有相違。一云甘雨降。雨下降上有時一字。二云稔穀豊。加一字云百穀稔豊。三云戈戦息戦字為[シュウ04]。[シュウ04]叶義歟。不行也下言乃至者。当箴之中猶有残文。又下六七八九悉除故置此言。SYOZEN2-434/TAI9-633,634 〇次に『正法念経』を引く以下は五箴の終文、今の所引はこれ註文なり。問う、この註の意は何の事を宣ぶるや。当段外論の言、並びに内箴の文なきに依りて、旨趣を弁じ難し。請う、具なる文を聞きて元由を知らんと欲す。答う、外論に曰わく「それ国は民を以て本とす。本固きときは則ち邦寧〈や〉すし。ここを以て賜は育子の門に及び、恩は孕婦の室に流る。故に子孫は享祀して世載に虧〈か〉けず。至孝、躬を毀すといえども祀を絶たしめず。故に国家富強にして天下昌盛せることを得しむ。いまだ人民凋尽して家国の存すべきを聞かず。今仏教には即ち不妻不娶を名づけて奉法とす。ただ早く逝するを涅槃を得と号す。既に長生の方を欠く。また不死の術なし。これ則ち一世の中に家国空し」取意。内教の治の本たることは指の五内箴に曰わく「それ神を澄し性を変えるは入道の要門、情を絶ち欲を棄つるは登聖の遐本なり。故に道高き者は尚〈とう〉とびらる。徳弘き者は賞せらる。道を以て神に伝い、徳を以て聖に授く。神聖相伝す。これを良嗣という。道の源を塞ぎ、徳の根を伐る。これを後なしという。欲を棄つるを後なしとするというにはあらず。子、聞かずや、昔何尚が言えることを、釈氏の化、可ならずという所なし。諒〈まこと〉に入道の教源、誠に済俗の称首なり。それ一善を行えば則ち一悪を去る。一悪を去れば則ち一刑を息む。一刑、家に息むるときは、則ち万刑、国に息む。故に知りぬ、五戒十善は正治の本たり。また五戒修して悪趣減し、十善暢〈の〉びて人天滋し。人天滋くして則ち正化隆なり。悪趣衰えて災害殄〈ほろ〉ぶ」已上。所引の註は、この文の注なり。この中の文句は、また唐本と聊か相違あり。一に「甘雨降る」という。雨の下、降の上に時の一字あり。二に「稔穀豊かなり」という。一字を加えて「百穀稔豊」という。三に「戈戦息」という、戦の字は[シュウ04]たり、[シュウ04]は義に叶うか。「不行也」の下に「乃至」というは、当箴の中になお残文あり。また下の六・七・八・九悉く除くが故にこの言を置く。SYOZEN2-434/TAI9-633,634 ◎君子曰。道士大霄隠書。元上真書等云。元上大道君治在五十五重無極。大羅天中。玉京之上。七宝台金床玉机。仙童玉女之所侍衞。住三十二天三界之外。案神仙五岳圖云。大道天尊治大玄都玉光州金真之郡天保之縣元明之郷定志之里。災所不及。霊書経云。大羅是五億五万五千五百五十五重天之上天也。五岳図云。都者都也。太上大道。道之中道神明君最守静。居太玄之都。諸天内音云。天与諸仙鳴楼都之鼓。朝晏玉京以楽道君。 ◎(弁正論)君子の曰わく、道士大霄が『隠書』、無上が『真書』等に云わく「無上大道君、治、五十五重無極大羅天の中、玉京の上、七宝の台、金床玉机にあり。仙童・玉女の侍衛するところ、三十二天三界の外に住す」。『神仙五岳図』を案ずるに云わく「大道天尊は大玄都、玉光州、金真の郡、天保の県、元明の郷、定志の里を治す。災及ばざるところなり」。『霊書経』に云わく「大羅はこれ五億五万五千五百五十五重天の上天なり」。『五岳の図』に云わく「都とは覩〈都・鄙〉なり、太上は大道なり、道の中の道神なり、明君もっとも静を守りて太玄の都に居る」。『諸天内音』に云わく「天と諸仙と、楼都の鼓を鳴らし、玉京に朝晏して、以て道君を楽しましむ」と。KESINDO:SYOZEN2-198,199/-HON-395,HOU-503- 〇言君子曰道士等者。第七巻中(如目録者第六巻也)気為道本篇第七文楽道君下当篇文言猶繁多也。SYOZEN2-434,435/TAI9-636 〇「君子曰道士」等というは、第七巻の中に(目録の如きは第六巻なり)「気は道の本とす篇、第七」の文、「楽道君」の下、当篇の文言はなお繁多なり。SYOZEN2-434,435/TAI9-636 ◎案道士所上経目。皆云。依宋人陸脩静而列一千二百二十八巻。本無雑書諸子之名。而道士今列乃有二千四十巻。其中多取漢書藝文志目。妄註八百八十四巻為道経論。乃至。案陶朱者。即是范蠡親事越王勾踐。君臣悉囚於呉。甞屎飲尿亦以甚矣。又復范蠡之子被戮於斉。父既有変化之術。何以不能変化免之。案造立天地記。称老子託生幽王皇后腹中。即是幽王之子。又身為柱史。復是幽王之臣。化胡経言。老子在漢為東方朔。若審爾者。知幽王為犬戎所殺。豈可不愛君父与神符。令君父不死邪。乃至。指陸脩静目録。既無正本。何謬之甚也。然脩静為目已是大偽。今玄都録復是偽中之偽矣。乃至。 ◎(弁正論)道士の上ぐるところの経目〈けいのな・けいぼく〉を案ずるに、みな云わく「宋人陸修静に依りて、一千二百二十八巻を列ねたり」。もと雑書諸子の名なし。しかるに道士いま列ぬるに、すなわち二千四十巻あり。その中に多く『漢書』芸文志の目を取りて、みだりに八百八十四巻を註〈しる〉して、道経論とす。(乃至)陶朱を案ずれば、すなわちこれ范蠡なり。親〈まのあた〉り越王勾践にに事えて、君臣ことごとく呉に囚れて、屎を嘗め尿を飲んで、また以て甚だし。また范蠡の子は、斉に戮〈ころ〉さる。父すでに変化の術あらば、何ぞ以て変化してこれを免るることあたわざらん。『造立天地の記』を案ずるに称すらく、老子、幽王の皇后の腹の中に託生す。すなわちこれ幽王の子なり。また身、柱史たり、またこれ幽王の臣なり。『化胡経』に言わく「老子、漢にありては東方朔とす」。もし審かに爾らば、知りぬ、幽王は犬戎のために殺さる。あに君父を愛して神符を与え、君父をして死せざらしめざるべけんや。(乃至)陸修静が目録を指す、すでに正本なし。何ぞ謬りの甚だしきをや。しかるに修静、目〈な〉をなすこと、すでにこれ大偽なり。今『玄都録』またこれ偽中の偽なり。乃至。KESINDO:-HON-395,396,HOU-503,504 〇言案道士所上等者。第八巻初出道偽謬篇第十文。此篇之中。於出諸謬。是出諸子為道書謬之破文也。SYOZEN2-435/TAI9-639 〇「案道士所上」等とは、第八巻の「初出道偽謬の篇、第十」の文なり。この篇の中に、諸の謬を出だすに於いて、これ諸子を道書とする謬を出だすの破文なり。SYOZEN2-435/TAI9-639 ◎又云。大経中説。道有九十六種。唯仏一道是於正道。其余九十五種皆是外道。朕捨外道以事如来。若有公卿能入此誓者。各可発菩薩心。老子・周公・孔子等。雖是如来弟子而為化既邪。止是世間之善。不能隔凡成聖。公卿百官侯王宗室。宜反偽就真捨邪入正。故経教成実論説云。若事外道心重。仏法心軽。即是邪見。若心一等。是無記不当。若善悪事仏。強孝子心少者。乃是清言。言清者。清是表裏倶浄。垢穢惑累皆尽。信是信正不邪。故言清信仏弟子。其余等皆邪見。不得称清信也。乃至。捨老子之邪風。入流法之真教。已上抄出。 ◎(弁正論)また云わく、『大経』(涅槃経)の中に説かく「道に九十六種あり。ただ仏の一道これ正道に於けるなり。その余の九十五種みなこれ外道なり」と。朕、外道を捨てて以て如来に事う。もし公卿ありて、よくこの誓いに入らん者は、おのおの菩薩〈ぼだい〉心を発すべし。老子・周公・孔子等、これ如来の弟子として化をなすといえども、すでに邪なり。ただこれ世間の善なり。凡を隔てて聖と成すことあたわず。公卿・百官・侯王・宗室、宜しく偽を反〈かえ〉して真に就き、邪を捨て正に入るべし。故に経教『成実論』に説いて云わく、もし外道に事えては心重く、仏法は心軽し。すなわちこれ邪見なり。もし心一等なる、これ無記にして善悪に当たらず。仏に事えて心強くして、孝〈老〉子に心少なきは、すなわちこれ清信なり。清と言うは、清はこれ表裏ともに浄く、垢穢惑累みな尽くす。信は、これ正を信じて邪ならざる故に、清信の仏弟子という。その余、等しくみな邪見なり、清信と称することを得ざるなり。乃至。老子の邪風を捨てて、法の真教に入流せよと。已上抄出。KESINDO:SYOZEN2-199,200/HON-396,HOU-504,505 〇次言又云大経等者。同巻之終。帰心有地篇第十二之釈文也。言大経者指涅槃経。天台学者多以彼経称大経也。朕捨外道以事等者。朕者天子自称言也。昔染武帝。捨老子教永帰仏教。受菩薩戒。今弁正論以明此事為要須也。問。今鈔之中。引此論文有何要耶。答。捨外邪教入内正法。衆生依怙仏教本意顕此事故。被引用歟。将又謂之。外教内教頗非対論。如天与地而及比校。教主世尊是雖仏身。猶是応身。居娑婆故。輙以季老論其勝劣。故於所明化身土之当巻引之。弥陀報身更非比量。為顕此義。尤大切歟。凡此論文。一一文義不可輙解。又非要須。雖然粗勘諸篇科段。示文出処名目等耳。SYOZEN2-435/TAI9-646 〇次に「又云大経」等というは、同巻の終、「帰心有地の篇、第十二」の釈文なり。「大経」というは『涅槃経』を指す。天台の学者は多く彼の経を以て大経と称するなり。「朕捨外道以事」等とは、朕とは天子の自ら称する言なり。昔、染の武帝は老子の教を捨てて永く仏教に帰し、菩薩の戒を受く。今『弁正論』はこの事を明かすを以て要須とするなり。問う、今の鈔の中にこの論文を引かる、何の要かあるや。答う、外の邪教を捨てて内の正法に入るは、衆生の依怙仏教の本意、この事を顕すが故に引用せらるるか。はたまたこれを謂うに、外教・内教、頗る対論にあらず。天と地と比校に及ぶが如し。教主世尊はこれ仏身なりといえども、なおこれ応身にして、娑婆に居するが故に、輙く季老を以てその勝劣を論ず。故に化身土を明かす所の当巻に於いて、これを引かる。弥陀の報身は更に比量にあらず。この義を顕さんがために、尤も大切なるか。凡そこの論文、一一の文義は輙く解すべからず。また要須にあらず。然りといえども、ほぼ諸篇科段を勘みて、文の出処名目等を示すらくのみ。SYOZEN2-435/TAI9-646 ◎光明寺和尚云。上方諸仏如恒沙。還舒舌相。為娑婆十悪五逆多疑謗。信邪事鬼[イ02]神魔。妄想求恩謂有福。災障禍横転弥多。連年臥病於床枕。聾盲脚折手率[ケツ01]。承事神明得此報。如何不捨念弥陀。已上。 ◎(法事讃)光明寺の和尚の云わく「上方の諸仏、恒沙のごとし。還りて舌相を舒べたまうことは、娑婆の十悪・五逆、多く疑謗し、邪を信じ、鬼に事え、神魔をあかしめて、妄りに想いて、恩を求めて福あらんと謂えば、災障禍横うたたいよいよ多し、連年、床枕に臥病し、聾・盲、脚折れ、手率〈攣・ひ〉きつり、神明に承事してこの報を得るもののためなり。いかんぞ捨てて弥陀を念ぜざる」已上。KESINDO:SYOZEN2-200/HON-396,HOU-505 |