親鸞聖人 正 信 偈 意訳 (19) 道綽禅師 |
道綽決聖道難証 唯明浄土可通入 万善自力貶勤修 円満徳号勧専称 三不三信誨慇懃 像末法滅同悲引 一生造悪値弘誓 至安養界証妙果 |
意訳 道綽禅師は、聖道門の教えによってさとりを開くことはあまりにも困難であることを明らかにし、 浄土門だけが通入できる道であることを明かにされた。 万善の諸行は自力であるから勤め修めることを捨て、 ただひたすらに功徳に満ちた名号を称えることを勧められた。 三つの不信心と三つの信心とをねんごろに教えてくださり、 像法・末法から法滅の時代に生きる人々を、慈悲の心によって平等に導いてくださる。 たとえ一生にわたって悪を作りつづけてきた人でも、ほんとうに阿弥陀仏の弘誓にあうことができたら、 安養界に生まれて、さとりを開くことができるといわれた。 |
書き下し文 道綽、聖道の証しがたきことを決して、 ただ浄土の通入すべきことを明かす。 万善の自力、勤修を貶す。 円満の徳号、専称を勧む。 三不三信の誨、慇懃にして、 像・末・法滅、同じく悲引す。 一生悪を造れども、弘誓に値いぬれば、 安養界に至りて妙果を証せしむと、いえり。 |
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語句 道綽=七高僧の第4祖。西暦562〜645年。北斉(中国北朝)に誕生。14歳で出家。北周武帝の 廃仏により還俗。宣帝の仏教復興によって再出家。道綽禅師が四十八歳のとき、玄中寺で 曇鸞大師の碑文を読み、浄土教に入る。84歳、玄中寺で没する。 聖道=聖道門。難行道。あらゆる苦行をかさね、仏・菩薩をめざして修行する教え。 万善の自力=あらゆる善行や修行を積む自力の仏道。 円満の徳号=徳号は名号、南無阿弥陀仏。阿弥陀仏の功徳が満ちている念仏。 三不三信=道綽禅師の『安楽集』に次のように説かれている。「南無阿弥陀仏と念仏すれば、 煩悩が晴れて阿弥陀仏の浄土に往生できるといわれるが、念仏しても煩悩が晴れず、 往生の願いも果たされないのはなぜなのか。その理由は、一つには信心が淳くなく、信心が 有るような無いような状態だからである。二つには信心が一つに定まってないからである。 三つには信心が持続せず、他の思いが混じり合うからである。もし持続して絶えることのない 信心であれば、それは一心であり、淳心である。この三つの心が保たれるなら、かならず浄土 に往生できる。」 像末法滅=像法・末法・法滅の時代。釈尊が亡くなってから五百年は「正法」。その後、五百年(千年) の「像法」、一万年の「末法」と、仏法を伝え、実践する人が少なくなり、ついには仏法が消滅す る「法滅」の時代になる。 安養界=阿弥陀仏の浄土。 妙果を証す=さとりを開くこと。 |