釈![]() 無量寿経連義述文賛 巻下の2(5の内の5) |
無量寿経連義述文賛 巻下之二 |
[経] 仏告弥勒。汝等能於此世。端心正意。不作衆悪。甚為至徳。十方世界。最無倫匹。所以者何。諸仏国土。天人之類。自然作善。不大為悪。易可開化。 [経] (仏、弥勒に告げたまわく、汝等能くこの世にして、端心正意にして、衆悪を作らざるは、甚だ至徳なりとす。十方世界に最も倫匹なし。所以はいかん。諸仏国土の天人の類は、自然に善を作して、大きに悪を為〈つく〉らずば、開化すべきこと易し。) 経曰。仏告弥勒至易可開化者。述云。第三広挙業苦令人厭捨有二。初嘆前解行。後正申業苦。此初即嘆弥勒領解奉行也。JMS03-28L (経に曰く「仏告弥勒」より「易可開化」に至るまでは、述して云く、第三に広く業苦を挙げて、人をして厭捨せしむるに二あり。初には前の解行を嘆じ、後には正しく業苦を申ぶ。これは初に即ち弥勒の領解奉行を嘆ずるなり。)JMS03-28L [経] 今我。於此世間作仏。処於五悪五痛五焼之中。為最劇苦。教化群生。令捨五悪。令去五痛。令離五焼。 [経] (今我この世間にして仏に作りて、五悪・五痛・五焼の中に処する、最も劇苦なりとす。群生を教化して、五悪を捨てしめ、五痛を去らしめ、五焼を離れしむ。) 経曰。今我於此至令離五焼者。述云。第二正申業苦而令厭捨有三。初略釈。次別釈。後総釈。初又有二。此初令捨令離也。JMS03-28L (経に曰く「今我於此」より「令離五焼」に至るまでは、述して云く、第二に正しく業苦を申べて厭捨せしむるに三あり。初に略釈、次に別釈、後に総釈なり。初にまた二あり。これは初に令捨令離なり。)JMS03-28L 有説。五悪為因。痛焼為果。即五戒所防。身三非為三。口四為第四。飲酒為第五。酬此五因即受五痛。痛者苦受。焼者苦具。若痛若焼皆地獄報。故前文云臨終寒熱与痛苦倶。遂弾余家五痛人中受。五焼在地獄。云此太錯判経文。害文傷義。直由不了痛是苦受焼是苦具。不可人中受痛而無苦具。地獄有苦具而無痛故。又作五悪先入悪道後生人中故。地獄受痛焼報已然後生人受余報苦。此恐不然。JMS03-28L,29R (有るが説かく。五悪を因と為し、痛焼を果と為す。即ち五戒の所防なり。身三の非を三と為し、口四を第四と為し、飲酒を第五と為す。この五因に酬いて即ち五痛を受く。痛者は苦受、焼は苦具なり。もしは痛、もしは焼、皆地獄の報なり。故に前の文に、臨終、寒熱と痛苦と倶なりという。遂に余家の五痛は人中に受け、五焼は地獄に在りというを弾じて云く、これ太〈はなは〉だ錯りて経文を判ず。文を害し義を傷つく。直ちに痛はこれ苦受、焼はこれ苦具なりと了せざるに由る。人中には痛を受くるも苦具なく、地獄には苦具あるも痛なしというべからざるが故に。また五悪を作りて先ず悪道に入り、後に人中に生まるるが故に、地獄に痛焼の報を受け已りて、然る後に人に生じて余報の苦を受くると。これ恐らくは然らず。)JMS03-28L,29R 若言五悪即五戒所防者。不妄語戒唯防妄語。如何口四為第四悪応正理耶。又痛必兼具。焼如何無受。故不可言人中有受而無具。地獄有具而無受。又如闍王殺其父王已現受衆苦。必不可言先受痛焼後受余苦。経曰。華報応成虚言故。今還存所弾之義。殺盜邪淫妄語飲酒是其五悪。五痛華報。現閉王法身遭厄難名為五痛。三途果報名為五焼。不爾便違世有常道王法牢獄等諸文故。JMS03-29R,29L (もし五悪は即ち五戒の所防といわば、不妄語戒はただ妄語を防ぐ。如何ぞ口四を第四悪と為す。正理に応ぜんや。また痛は必ず具を兼ぬ。焼は如何ぞ受なからん。故に人中には受ありて具なく、地獄には具ありて受なしというべからず。また闍王の如きはその父王を殺し已りて現に衆苦を受く。必ずしも先に痛焼を受け、後に余の苦を受くというべからず。経に華報というは応に虚言と成るべきが故に。今は還りて所弾の義を存す。殺盜・邪淫・妄語・飲酒これその五悪なり。五痛は華報なり。現に王法に閉られ、身に厄難に遭うを名づけて五痛と為す。三途の果報を名づけて五焼と為す。爾らずんば便ち「世有常道王法牢獄〈世に常道の王法の牢獄あり〉」等の諸文に違するが故に。)JMS03-29R,29L [経] 降化其意。令持五善。獲其福徳度世長寿泥[オン01]之道。 [経] (その意を降化して、五善を持たしめ、その福徳、度世・長寿・泥[オン01]の道を護しむ。) 経曰。降化其意至涅槃之道者。述云。此後令持令得也。五善即防五悪之戒。由持五戒現無衆苦故。獲福徳反五痛也。後生西方終為涅槃故。度世長寿即反五焼也。JMS03-29L (経に曰く「降化其意」より「涅槃之道」に至るまでは、述して云く、これは後に令持令得なり。五善は即ち五悪を防ぐ戒なり。五戒を持するに由りて現に衆苦なきが故に。「獲福徳〈獲其福徳〉」は五痛に反するなり。後に西方に生じて、終に涅槃を為〈う〉るが故に。「度世長寿」は即ち五焼に反するなり。)JMS03-29L [経] 仏言。何等五悪。何等五痛。何等五焼。 [経] (仏のたまわく、何等をか五悪とする、何等をか五痛、何等をか五焼。) 経曰。仏言何等至何等五焼者。述云。第二別釈有二。初問。後釈。初又有二。此初問所捨離也。JMS03-29L (経に曰く「仏言何等」より「何等五焼」に至るまでは、述して云く、第二に別釈に二あり。初には問、後には釈なり。初にまた二あり。これは初に捨離する所を問うなり。)JMS03-29L [経] 何等消化五悪。令持五善。獲其福徳・度世・長寿・泥[オン01]之道。 [経] (何等か五悪を消化して、五善を持たしめて、その福徳、度世・長寿・泥[オン01]の道を護しむる。) 経曰。何等消化至涅槃之道者。述云。此後問所持得也。JMS03-29L (経に曰く「何等消化」より「涅槃之道」に至るまでは、述して云く、これは後に持得する所を問うなり。)JMS03-29L [経] 仏言。其一悪者。諸天人民蠕動之類。欲為衆悪。莫不皆然。強者伏弱。転相剋賊。残害殺戮。迭相呑噬。不知修善。悪逆無道。後受殃罰。自然趣向。神明記識。犯者不赦。故有貧窮下賤乞丐孤独聾盲[イン01]唖愚痴弊悪。至有[オウ02]狂不逮之属。又有尊貴豪富高才明達。皆由宿世慈孝。修善積徳所致。 [経] (仏のたまわく、その一の悪というは、諸天・人民・蠕動〈ぜんどう〉の類、衆悪を為〈つく〉らんと欲〈おぼ〉して、みな然らざるはなし。強き者は弱きを伏す。転た相い剋賊し残害殺戮して迭〈たが〉いに相い呑噬〈のみすう〉す。善を修することを知らず。悪逆無道にして後に殃罰を受けて、自然に趣向す。神明記識して、犯せる者を赦さず。故に貧窮・下賎・乞丐〈こつがい〉・孤独・聾盲・[イン01]唖・愚痴弊悪のものありて、[オウ02]・狂・不逮の属〈やから〉あるに至る。また尊貴・豪富・高才・明達なるものあり。みな宿世の慈孝ありて修善積徳の所致に由る。) 経曰。仏言其一悪者至積徳所致者。述云。第二釈有五。此初釈殺生有二。初釈所捨離。後釈所持得。初又有三。初牒釈。次総結。後寄喩顕過。初又有三。此初釈悪也。剋者殺也。賊者害也。JMS03-29L,30R (経に曰く「仏言其一悪者」より「積徳所致」に至るまでは、述して云く、第二に釈に五あり。これは初に殺生を釈するに二あり。初には捨離する所を釈し、後には持得する所を釈す。初にまた三あり。初には牒釈、次には総結、後には喩に寄せて過を顕す。初にまた三あり。これは初に悪を釈するなり。「剋」は殺なり。「賊」は害なり。)JMS03-29L,30R 有説。神明者即同生同生。同生在右肩記所作悪。同名在左肩記所作善。故云記識。此恐非也。業報感起非神所堪故。今即還同精神剋識以種子識功能不亡名記識故。孤者無父母独者無子女。[オウ05](烏皇反)羸也。弱也。俗文短小目[オウ05]。狂(其亡反)変性意也。又乱也。JMS03-30R (有るが説かく。「神明」とは即ち同生同生なり。同生は右の肩に在り作す所の悪を記し、同名は左肩に在りて作す所の善を記するが故に「記識」という。これ恐らくは非なり。業報の感起は神の所堪に非ざるが故に。今は即ち還りて精神剋識に同じく、種子識の功能の亡ぜざるを以て「記識」と名づくるが故に。「孤」とは父母なく、「独」は子女なきなり。「[オウ05]」〈烏皇の反〉は羸なり、弱なり。俗文に短小を[オウ05]と目づく。「狂」〈其亡の反〉は性意を変ずるなり。また乱なり。)JMS03-30R [経] 世有常道王法牢獄。不肯畏慎。為悪入罪。受其殃罰。求望解脱。難得免出。 [経] (世に常道の王法の牢獄あり。肯て畏れ慎まず。悪を為〈つく〉り罪に入りて、その殃罰を受く。解脱を求望すれども免出を得ること難し。) 経曰。世有常道至難得定出者。述曰。此次釈痛也。JMS03-30R (経に曰く「世有常道」より「難得定出」に至るまでは、述して云く、これは次に痛を釈するなり。)JMS03-30R [経] 世間有此目前現事。寿終後世尤深。尤劇。入其幽冥。転生受身。譬如王法痛苦極刑。故有自然三塗。無量苦悩。転貿其身。改形易道。所受寿命。或長或短。魂神精識。自然趣之。当独値向。相従共生。更相報復。無有絶已。殃悪未尽。不得相離。展転其中。無有出期。難得解脱。痛不可言。天地之間。自然有是。雖不即時卒暴応至善悪之道。会当帰之。 [経] (世間にこの目の前の現事あり。寿終して後世に尤も深く尤も劇しくして、その幽冥に入りて生を転じて身を受く。譬えば王法の痛苦極刑するが如し。故に自然の三塗、無量の苦悩あり。転たその身を貿〈か〉え形を改め道を易〈か〉えて、受くるところの寿命、あるいは長くあるいは短し。魂神・精識、自然にこれに趣く。当に独り値い向かい、相従いて共に生じて、更いに相報復すべし。絶え已〈や〉むことあることなし。殃悪未だ尽きざれば、相離るることを得ず。その中に展転して出ずる期あることなし。解脱を得難し。痛み言うべからず。天地の間に自然にこれあり。即時に卒暴〈にわか〉に善悪の道に至るべからずといえども、会〈かなら〉ず当にこれに帰〈いた〉るべし。) 経曰。世間有此至会当帰之者。述云。此後釈焼也。貿(莫候反)三倉換易。卒暴者忽也。会当者必也。帰之者至也。JMS03-30R (経に曰く「世間有此」より「会当帰之」に至るまでは、述して云く、これは後に焼を釈すなり。「貿」〈莫候の反〉は三倉に換易なり。「卒暴」は忽なり。「会当」は必なり。「帰之」は至なり。)JMS03-30R [経] 是為一大悪一痛一焼。勤苦如是。 [経] (これを一大悪・一痛・一焼と為す。勤苦かくの如し。) 経曰。是為大悪至勤苦如是者。述云。此第二結也。JMS03-30R (経に曰く「是為大悪」より「勤苦如是」に至るまでは、述して云く、これは第二に結なり。)JMS03-30R [経] 譬如大火焚焼人身。 [経] (たとえば大火の人身を焚焼するが如し。) 経曰。譬如大火焚焼人身者。述云。此第三顕過也。JMS03-30R,30L (経に曰く「譬如大火焚焼人身」とは、述して云く、これは第三に過を顕すなり。)JMS03-30R,30L [経] 人能於中。一心制意。端身正行。独作諸善。不為衆悪者。身独度脱。獲其福徳度世上天泥[オン01]之道。是為一大善也。 [経] (人、よく中に於て一心制意、端身正行にして、独り諸善を作〈な〉して衆悪を為〈つく〉らざれば、身独り度脱して、その福徳・度世・上天・泥[オン01]の道を獲。これを一の大善となすなり。) 経曰。人能於中至為一大善也者。述云。此第二釈所持得也。JMS03-30L (経に曰く「人能於中」より「為一大善也」に至るまでは、述して云く、これは第二に持得する所を釈す。)JMS03-30L [経] 仏言。其二悪者。世間人民父子兄弟室家夫婦。都無義理。不順法度。奢淫[キョウ02]縦。各欲快意。任心自恣。更相欺惑。心口各異。言念無実。佞諂不忠。巧言諛媚。嫉賢謗善。陥入怨枉。主上不明。任用臣下。臣下自在。機偽多端。践度能行。知其形勢。在位不正。為其所欺。妄損忠良。不当天心。臣欺其君。子欺其父。兄弟夫婦中外知識。更相欺誑。各懐貪欲瞋恚愚痴。欲自厚己。欲貪多有。尊卑上下。心倶同然。破家亡身。不顧前後。親属内外。坐之而滅。或時室家知識郷党市里愚民野人。転共従事。更相殺害。忿成怨結。富有慳惜。不肯施与。愛宝貪重。心労身苦。如是。至竟無所恃怙。独来独去。無一随者。善悪禍福。追命所生。或在楽処。或入苦毒。然後。乃悔。当復何及。世間人民。心愚無智。見善憎謗。不思慕及。但欲為悪。妄作非法。常懐盗心。[ケ01]望他利。消散磨尽。而復求牽。邪心不正。懼人有色。不予思計。事至乃悔。 [経] (仏言わく、その二の悪というは、世間の人民・父子・兄弟・室家・夫婦、すべて義理なくして法度に順わず。奢婬[キョウ02]縦して、おのおの意を快くせんと欲えり。心に任せて自ら恣に更いに相い欺惑す。心口おのおの異にして、言念実〈まこと〉なし。佞諂不忠にして巧言諛媚なり。賢を嫉み善を謗りて怨枉に陥入す。主上、明らかならずして臣下に任用す。臣下、自在にして機偽端多し。践度行能してその形勢を知る。位にありて正しからず、それがために欺かる。妄りに忠良を損して天の心に当たらず。臣はその君を欺き、子はその父を欺く。兄弟・夫婦・中外・知識、更いに相い欺誑して、おのおの貪欲・瞋恚・愚痴を懐く。自ら己を厚くせんと欲えり。多くあることを欲貪す。尊卑・上下、心倶に同じく然なり。家を破り身を亡して前後を顧みず。親属・内外これよりして滅ぶ。ある時は室家・知識・郷党・市里・愚民・野人、転た共に事に従いて更いに相い利害し、忿りて怨結をなす。富有慳惜して、肯て施与せず。愛宝貪重にして、心労身苦す。かくのごとくして竟りに至りて恃怙するところなし。独り来り独り去りて、ひとりも随う者なけん。善悪・禍福、命を追いて生ずるところなり。あるいは楽処にあり、あるいは苦毒に入る。然して後に乃し悔ゆとも当にまた何ぞ及ぶべき。世間の人民、心愚かにして無智なり。善を見ては憎謗して、慕及することを思わず。ただ悪をつくることを欲して妄りに非法を作す。常に盗心を懐きて他の利を[ケ01]望す。消散糜尽してまた求索す。邪心にして正しからず。人の色(し)ることあるを懼る。予め思い計らずして、事至りて乃し悔ゆ。) 経曰。仏言其二至事至乃悔者。述云。此第二釈盜有二。初釈所離有三。此初牒釈有三。此初釈悪也。JMS03-30L (経に曰く「仏言其二」より「事至乃悔」に至るまでは、述して云く、これは第二に盜を釈するに二あり。初に所離を釈するに三あり。これは初に牒釈に三あり。これは初に悪を釈するなり。)JMS03-30L 度者量也。則也。更相盜竊故無義理。非理求財故不順法軌。不勒貪心故云奢。耽財欲得故云淫。雖有心欲而言足故心口異。口出善言心懐悪計故云佞。覆蔵自性故云諂。為行無信故云不忠。言諭者意妄媚者状妄。枉者横也。度者法量。機者機関。即巧言令色。曲取君意能行機偽。知君形勢不申正諫是也。JMS03-30L (「度」は量なり、則なり。更いに相い盜竊するが故に義理なし。非理に財を求むるが故に法軌に順ぜず。貪心を勒〈おさ〉めざるが故に「奢」という。財を耽りて得んと欲するが故に「淫」という。心に欲ありと雖ども而も足れりというが故に心口異なり、口には善言を出だし、心に悪計を懐くが故に「佞」という。自性を覆蔵するが故に「諂」という。行を為すに信なきが故に「不忠」という。「諭〈諛〉」というは意の妄、媚は状の妄なり。「枉」は横なり。「度」は法量なり。「機」は機関なり。即ち言を巧みにし色を令〈よ〉くし、曲げて君の意を取り、能く機偽を行いて、君の形勢を知りて正諫を申べざる、これなり。)JMS03-30L 郷者一万二千五百家。黨者五百家。市者交易所居。五家為隣隣五為里。野人者孔子曰先進於礼楽謂野人。後進於礼楽謂君子也。包氏曰謂鄙陋也。郊外曰野。邑外謂郊。従事者相称也。JMS03-30L,31R (「郷」は一万二千五百家、「黨」は五百家なり。「市」は交易の所居なり。五家を隣と為し、隣の五を里と為す。「野人」は、孔子の曰く「先進の礼楽に於けるを野人と謂う。後進の礼楽に於けるを君子と謂うなり」。包氏の曰く、謂く鄙陋なりと。郊外を野といい、邑外を郊という。「従事」とは相い称うなり。)JMS03-30L,31R 至竟者死也。善悪者因。禍福者果。追者還。取命者招引。善悪因成必進今果起也。又追者逐也。命者業也。逐善悪業以所生故後者是也。JMS03-31R (「至竟」は死なり。「善悪」は因、「禍福」は果、「追」は還、取命は招引なり。善悪の因成ずれば必ず進んで今の果起こるなり。また「追」は逐なり。「命」は業なり。善悪の業を逐いて以て「所生〈生ずる所〉」なるが故に。「後」は是なり。)JMS03-31R [経] 今世現有王法牢獄。随罪趣向。受其殃罰。 [経] (今世に現に王法の牢獄あり。罪に随いて趣向して、その殃罰を受く。) 経曰。今世現有至受其殃罰者。述云。此次釈痛也。JMS03-31R (経に曰く「今世現有」より「受其殃罰」に至るまでは、述して云く、これは次に痛を釈するなり。)JMS03-31R [経] 因其前世。不信道徳。不修善本。今復為悪。天神剋識。別其名藉。寿終。神逝。下入悪道。故有自然三塗。無量苦悩。展転其中。世世累劫。無有出期。難得解脱。痛不可言。 [経] (その前世に道徳を信ぜず、善本を修せざるに因りて今また悪を為〈つく〉れば、天神剋識してその名籍を別つ。寿終わり神〈たましい〉逝きて悪道に下入す。故に自然の三塗、無量の苦悩あり。その中に展転して、世世累劫に出ずる期あることなし。解脱を得難し。痛み言うべからず。) 経曰。因其前世至痛不可言者。述云。此後釈焼也。JMS03-31R (経に曰く「因其前世」より「痛不可言」に至るまでは、述して云く、これは後に焼を釈するなり。)JMS03-31R [経] 是為二大悪二痛二焼。勤苦如是。 [経] (これを二の大悪・二痛・二焼と為す。勤苦かくの如し。) 経曰。是為二大悪至勤苦如是者。述云。此第二結也。JMS03-31R (経に曰く「是為二大悪」より「勤苦如是」に至るまでは、述して云く、これは第二に結なり。)JMS03-31R [経] 譬如大火焚焼人身。 [経] (譬えば大火の人身を焚焼するが如し。) 経曰。譬如大火焚焼人身者。述云。此第三顕過也。JMS03-31R (経に曰く「譬如大火焚焼人身」とは、述して云く、これは第三に過を顕すなり。)JMS03-31R [経] 人能於中。一心制意。端身正行。独作諸善。不為衆悪者。身独度脱。獲其福徳度世上天泥[オン01]之道。是為二大善也。 [経] (人よく中において、一心制意、端身正行にして、独り諸善を作し、衆悪を為〈つく〉らざれば、身独り度脱して、その福徳・度世・上天・泥[オン01]の道を獲。これを二の大善と為す。) 経曰。人能於中至為二大善也者。述云。此第二釈所持得也。JMS03-31R,31L (経に曰く「人能於中」より「為二大善也」に至るまでは、述して云く、これは第二に持得する所を釈するなり。)JMS03-31R,31L [経] 仏言。其三悪者。世間人民。相因寄生。共居天地之間。処年寿命。無能幾何。上有賢明長者尊貴豪富。下有貧窮廝賎[オウ01]劣愚夫。中有不善之人。常懐邪悪。但念淫嫉。煩満胸中。愛欲交乱。坐起不安。貪意守惜。但欲唐得。眄[ライ01]細色。邪態外逸。自妻厭憎。私妄出入。費損家財。事為非法。交結聚会。興師相伐。攻劫殺戮。強奪不道。悪心在外。不自修業。盗竊趣得。欲繋成事。恐勢迫脅。帰給妻子。恣心。快意。極身。作楽。或於親属。不避尊卑。家室中外。患而苦之。 [経] (仏言わく、その三の悪とは、世間の人民、相因り寄生して共に天地の間に居す。処年寿命、能く幾何なることなし。上に賢明・長者・尊貴・豪富あり。下に貧窮・廝賎・[オウ01]劣・愚夫あり。中に不善の人ありて、常に邪悪を懐く。ただ婬嫉を念いて煩い胸の中に満ち、愛欲交乱して坐起安からず。貪意守惜して、ただ唐〈いたずら〉に得んことを欲いて、細色を眄[ライ01]して邪態外に逸〈ほしいまま〉にす。自妻を厭い憎みて、私かに妄りに出入す。家財を費損して、事、非法を為し、交結聚会して師〈いくさ〉を興して相伐〈う〉つ。攻劫殺戮して強奪不道なり。悪心外にありて、自ら業を修せず。盗竊して趣〈わず〉かに得て、欲繋して事を成す。恐熱迫脅して妻子に帰給す。心を恣にし意を快くす。身を極〈つからか〉し楽しみを作す。あるいは親属に於て尊卑を避〈さ〉らず。家室・中外、患えてこれに苦しむ。) 経曰。仏言其三悪至患而苦之者。述云。此第三釈邪淫有二。初釈所捨有三。初牒釈又有三。此初釈悪也。JMS03-31L (経に曰く「仏言其三悪」より「患而苦之」に至るまでは、述して云く、これは第三に邪淫を釈するに二あり。初には所捨を釈するに三あり。初に牒釈にまた三あり。これは初に悪を釈するなり。)JMS03-31L 処者天。天者性。又[イチ01](与一反)楽也。唐者虚也。眄者(眠見反)説文邪視也。又下戻五戻反。説文恨視也。「[ライ01]」(力代反)説文瞳子不正也。蒼頡篇内視也。傍視也。細色者好色也。態古文態(他代反)意恣也。謂能度人情状也。[頭注:処者天。天者性。疑有脱文。]JMS03-31L (「処」は天なり。天は性なり。また「[イチ01]」〈与一の反〉は楽なり。「唐」は虚なり。「眄」(眠見の反)は、『説文』に邪に視るなり。また下戻と五戻との反。『説文』に恨み視るなり。「[ライ01]」〈力代の反〉は『説文』に瞳子の正しからざるなり。『蒼頡篇』に、内に視るなり。傍に視るなり。「細色」とは好色なり。「態」は古文には[タイ09]〈他代の反〉なり。意の恣なるなり。謂く能く人の情状を度るなり。[頭注:「処は天なり。天は性なり」。疑うらくは脱文あり。])JMS03-31L 結者期也。師(所飢反)四千人為軍。二千五百人為師。師十二匹馬也。五百人為旅也。強奪者公然劫取。不道者左道取物。貧無産業故不自修業。唯外懐摂故悪心在外。竊者私隠。趣者伺人不覚以求他物。挙之離本曰盜。撃者司馬彪曰撃動也。恐者恐怖。熱者悩熱。苦具逼身曰迫。以威凌物曰[キョウ07]。JMS03-31L,32R (「結」は期なり。「師」〈所飢反〉は、四千人を軍と為し、二千五百人を師と為す。師は十二匹の馬なり。五百人を旅と為す。「強奪」とは公然として劫〈おびやか〉し取るなり。「不道」とは左道に物を取るなり。貧して産業なきが故に「不自修業〈自ら業を修せず〉」なり。唯外に摂を懐くが故に「悪心在外〈悪心外に在り〉」なり。「竊」は私隠、「趣」は人の覚らざるを伺いて以て他物を求むるなり。これを挙げて本を離るるを「盜」という。「撃」は、司馬彪の曰く、撃は動なりと。「恐」は恐怖。「熱」は悩熱。苦具、身に逼るを「迫」という。威を以て物を凌ぐを「[キョウ07]」という。)JMS03-31L,32R [経] 亦復不畏王法禁令。 [経] (また王法の禁令を畏れず。) 経曰。亦復不畏王法禁令者。述云。此次釈痛也。JMS03-32R (経に曰く「亦復不畏王法禁令」とは、述して云く、これは次に痛を釈するなり。)JMS03-32R [経] 如是之悪。着於人鬼。日月照見。神明記識。故有自然三塗。無量苦悩。展転其中。世世累劫。無有出期。難得解脱。痛不可言。 [経] (かくの如きの悪、人鬼に着〈しる〉さる。日月照見し神明記識す。故に自然の三塗無量の苦悩あり。その中に展転して世世累劫に出ずる期あることなし。解脱を得難し。痛み言うべからず。) 経曰。如是之悪至痛不可言者。述云。此後釈焼也。著者箸同幽明也。JMS03-32R (経に曰く「如是之悪」より「痛不可言」に至るまでは、述して云く、これは後に焼を釈するなり。「著」は箸と同じ、幽明なり。)JMS03-32R [経]是為三大悪三痛三焼。勤苦如是。 [経](これを三の大悪・三痛・三焼と為す。勤苦かくの如し。) 経曰。是為三大悪至勤苦如是者。述云。此第二結也。JMS03-32R (経に曰く「是為三大悪」より「勤苦如是」に至るまでは、述して云く、これは第二に結なり。)JMS03-32R [経]譬如大火焚焼人身。 [経](譬えば大火の人身を焚焼するが如し。) 経曰。譬如大火焚焼人身者。述云。此第三顕過也。JMS03-32R (経に曰く「譬如大火焚焼人身」とは、述して云く、これは第三に過を顕すなり。)JMS03-32R [経]人能於中。一心制意。端身正行。独作諸善。不為衆悪者。身独度脱。獲其福徳度世上天泥[オン01]之道。是為三大善也。 [経](人能く中に於て、一心制意、端身正行にして、独り諸善を作して、衆悪を為〈つく〉らざれば、身独り度脱して、その福徳・度世・上天・泥[オン01]の道を獲。これを三の大善となす。) 経曰。人能於中至為三大善也者。述云。此第二釈所持得也。JMS03-32R (経に曰く「人能於中」より「為三大善也」に至るまでは、述して云く、これは第二に持得する所を釈するなり。)JMS03-32R [経] 仏言。其四悪者。世間人民。不念修善。転相教令。共為衆悪。両舌悪口妄言綺語。讒賊闘乱。憎嫉善人。敗壊賢明。於傍快喜。不孝二親。軽慢師長。朋友無信。難得誠実。尊貴自大。謂己有道。横行威勢。侵易於人。不能自知。為悪無恥。自以強健。欲人敬難。不畏天地神明日月。不肯作善。難可降化。自用偃[ケン07]。謂可常爾。無所憂懼。常懐[キョウ02]慢。 [経] (仏言わく、その四の悪というは、世間の人民、修善を念わず、転た相い教令して、共に衆悪を為〈つく〉る。両舌・悪口・妄言・綺語、讒賊闘乱して、善人を憎嫉し賢明を敗壊して、傍にして快喜す。二親に孝せず。師長を軽慢し朋友に信〈まこと〉なく、誠実を得難し。尊貴自大にして、己、道ありと謂〈おも〉えり。横に威勢を行じて人を侵易す。自ら知ること能わず。悪を為〈つく〉りて恥ずることなし。自ら強健なるをもって人の敬難を欲いて、天地・神明・日・月に畏れず。肯て善を作らず。降化すべきこと難し。自用〈ほしいまま〉に偃[ケン07]して常に爾るべしと謂〈おも〉えり。憂懼するところなし。常に[キョウ02]慢を懐けり。) 経曰。仏言其四悪至常懐[キョウ02]者。述云。此第四釈妄語有二。初釈所離有三。初牒釈有三。此初釈悪也。JMS03-32R (経に曰く「仏言其四悪」より「常懐[キョウ02]」に至るまでは、述して云く、これは第四に妄語を釈するに二あり。初には所離を釈するに三あり。初には牒釈に三あり。これは初に悪を釈するなり。)JMS03-32R 傍者夫婦。易神致反軽侮也。蹇(居免反)左伝偃蹇驕傲也。広雅大嬌也。謂自高大貌也。釈名云偃偃息而臥不執事也。蹇跛蹇也。痛不能作事也。JMS03-32L,33R (「傍」とは夫婦なり。「易」は神致の反、軽侮なり。「蹇〈[ケン07]〉」(居免反)は『左伝』に偃す。蹇は驕傲なり。『広雅』に大嬌なりと。謂く自高大にする貌なり。『釈名』に偃は偃息して臥して事を執らざるなり。蹇は跛蹇なり。痛くして事を作すこと能わざるなり。)JMS03-32L,33R [経]如是衆悪。天神記識。頼其前世頗作福徳。小善扶接。営護助之。今世為悪。福徳尽滅。諸善鬼神。各去離之。身独空立。無所復依。 [経](かくの如きの衆悪、天神記識す。その前世に頗る福徳を作るに頼りて、小善扶接し営護してこれを助く。今世に悪を為〈つく〉りて福徳尽滅しぬれば、もろもろの善鬼神おのおの去りて、これを離る。身独り空しく立ちてまた依るところなし。) 経曰。如是衆悪至無所復依者。述云。此次釈痛也。天神即護世天。録其作悪奏上帝釈。記在悪籍故云記識。JMS03-32L (経に曰く「如是衆悪」より「無所復依」に至るまでは、述して云く、これは次に痛を釈するなり。「天神」は即ち護世天。その作悪を録し帝釈に奏上す。記して悪籍に在るが故に「記識」という。)JMS03-32L [経] 寿命終尽諸悪所帰。自然迫促。共趣頓之。又其名藉記在神明。殃咎牽引。当独趣向。罪報自然。無従捨離。但得前行。入於火[カク01]。身心摧砕。精神痛苦。当斯之時。悔復何及。天道自然。不得蹉跌。故有自然三塗。無量苦悩。展転其中。世世累劫。無有出期。難得解脱。痛不可言。 [経] (寿命終尽して諸悪の帰するところなり。自然に迫促して共に趣きこれを頓〈うば〉う。またその名籍記して神明にあり。殃咎牽引して当に独り趣向すべし。罪報自然にして従いて捨離することなし。ただ前〈すす〉み行〈ゆい〉て火[カク01]に入ることを得て。身心摧砕して精神痛苦す。この時に当たりて悔ゆともまた何ぞ及ばん。天道自然にして蹉跌を得ず。故に自然の三塗無量の苦悩あり。その中に展転して世世累劫に出ずる期あることなし。解脱を得難し。痛み言うべからず。) 経曰。寿命終尽至痛不可言者。述云。此後釈焼也。JMS03-32L (経に曰く「寿命終尽」より「痛不可言」に至るまでは、述して云く、これは後に焼を釈するなり。)JMS03-32L 有説。名言種子在頼耶神。業種引生。必有趣向故云名籍在神明。即違自許護世天神奏上帝釈。記在悪籍故。今即寿命尽時悪業所引。鬼神促摂将入悪道。逐其名籍往受苦報。頓者至也。従者処也。得者依也。JMS03-32L (有るが説かく。名言種子、頼耶神に在り。業種引きて生ず。必ず趣向あるが故に「名籍在神明〈名籍記して神明にあり〉」というと。即ち自ら護世天神、帝釈に奏上して、記して悪籍に在りと許すに違するが故に。今は即ち寿命尽くる時、悪業の引く所、鬼神促し摂めて将に悪道に入るべしと。その名籍を逐いて往きて苦報を受く。「頓」は至なり。「従」は処なり。「得」は依なり。)JMS03-32L 有説。天道者即天下之道。恐非也。苦報未必在天下故。今即天者業也。悪業之道故。瑜伽亦云業天。蓋同此矣。自然者明了状。蹉(千阿反)跌(徒結反)通俗文失躡曰跌。広雅差也。亦偃也。業報運数終不参差故。即不違之義。JMS03-32L,33R (有るが説かく。「天道」は即ち天下の道と。恐らくは非なり。苦報は未だ必ずしも天下に在らざるが故に。今は即ち「天」は業なり。悪業の道なるが故に。『瑜伽』にはまた業天という。蓋しこれと同じ。「自然」は明了の状。「蹉〈千阿の反〉跌〈徒結の反〉」は、通俗文に躡を失うを跌という。『広雅』に差なり、また偃なり。業報の運数、終に参差せざるが故に。即ち不違の義なり。)JMS03-32L,33R [経] 是為四大悪四痛四焼。勤苦如是。 [経] (これを四の大悪・四痛・四焼と為す。勤苦かくの如し。) 経曰。是為四大悪至勤苦如是者。述云。此第二結也。JMS03-33R (経に曰く「是為四大悪」より「勤苦如是」に至るまでは、述して云く、これは第二に結なり。)JMS03-33R [経] 譬如大火焚焼人身。 [経] (譬えば大火の人身を焚焼するが如し。) 経曰。譬如大火焚焼人身者。述云。此第三顕過也。JMS03-33R (経に曰く「譬如大火焚焼人身」とは、述して云く、これは第三に過を顕すなり。)JMS03-33R [経] 人能於中。一心制意。端身正行。独作諸善。不為衆悪者。身独度脱。獲其福徳度世上天泥[オン01]之道。是為四大善也。 [経] (人能く中に於て、一心制意、端身正行にして、独り諸善を作〈なし〉て、衆悪を為〈つく〉らざれば、身独り度脱して、その福徳・度世・上天・泥[オン01]の道を獲。これを四の大善と為すなり。) 経曰。人能於中至為大善也者。述云。此第二釈所持得也。JMS03-33R (経に曰く「人能於中」より「為大善也」に至るまでは、述して云く、これは第二に持得する所を釈するなり。)JMS03-33R [経] 仏言。其五悪者。世間人民。徙倚懈惰。不肯作善。治身修業。室家眷属。飢寒困苦。父母教誨。瞋目怒膺。言令不和。違戻反逆。譬如怨家。不如無子。取与無節。衆共患厭。負恩違義。無有報償之心。貧窮困乏。不能復得。辜較縦奪。放恣遊散。串数唐得。用自賑給。耽酒嗜美。飲食無度。 [経] (仏言わく、その五の悪というは、世間の人民、徙倚懈惰にして肯て善を作らず。身を治め業を修して、家室・眷属、飢寒困苦す。父母教誨するに、瞋りて目〈み〉、怒りて膺〈こた〉う。言令不和にして、違戻反逆す。たとえば怨家の如し、子あらんにはしかじ。取与するに節〈はか〉ることなし。衆共に患え厭う。恩を負き義に違して、報償の心あることなし。貧窮困乏にしてまた得ること能わず。辜較縦奪にして放恣遊散す。串数して唐得して、もって自ら賑給す。耽酒嗜美にして、飲食度〈はか〉ることなし。) 経曰。仏言其五悪至飲食無度者。述云。此第五釈飲酒有二。初釈所離有三。初牒釈有三。此初釈悪有二。此初造悪也。JMS03-33R (経に曰く「仏言其五悪」より「飲食無度」に至るまでは、述して云く、これは第五に飲酒を釈するに二あり。初には所離を釈するに三あり。初には牒釈に三あり。これは初に悪を釈するに二あり。これは初に造悪なり。)JMS03-33R 徙倚者猶徘徊也。又失所之状。宜従初也。倚依音。辜(古胡反)爾雅罪也。較苞学反粗略也。広雅明也。見也。謂較然易見也。位法師云辜者罪也。較者直也。奪者盜也。貞罪直突盜人財物以為快意。未知較直出於何処。散者行也。振者恵也。損富補貧。賑亦同。慣串同也。[頭注:貞罪直突。更詳。]JMS03-33R,33L (「徙倚」は猶し徘徊のごときなり。また所を失うの状なり。宜しく初に従うべきなり。倚は依の音。「辜」〈古胡の反〉は『爾雅』に罪なり。「較」は苞学の反、粗略なり。『広雅』に明なり、見なり。較然として見易きをいうなり。位法師の云く、辜は罪なり、較は直なり、奪は盜なり。貞罪直ちに突きて、人の財物を盜み以て快意と為すと。未だ知らず、較直、何の処より出づることを。「散」は行なり。「振」は恵なり。富を損し貧を補う。賑もまた同じ。慣は「串」と同じなり。[頭注:貞罪直突。更に詳らかにせよ。])JMS03-33R,33L [経] 肆心蕩逸。魯扈牴突。不識人情。強欲抑制。見人有善。憎嫉悪之。無義無礼。無所顧難。自用職当。不可諌暁。六親眷属。所資有無。不能憂念。不惟父母之恩。不存師友之義。心常念悪。口常言悪。身常行悪。曾無一善。不信先聖。諸仏経法。不信行道。可得度世。不信死後。神明更生。不信作善得善。為悪得悪。欲殺真人。闘乱衆僧。欲害父母。兄弟眷属。六親憎悪。願令其死。 [経] (心を肆〈ほしいまま〉に蕩逸して魯扈抵突。人情を識〈さと〉らずして、強いて抑制せんと欲う。人の善あるを見て憎嫉してこれを悪む。無義無礼にして顧難するところなし。自用職当して諌暁すべからず。六親眷属、所資の有無、憂念すること能わず。父母の恩を惟〈おも〉わず。師友の義を存ぜず。心に常に悪を念い、口に常に悪を言い、身に常に悪を行じて、曾て一善なし。先聖・諸仏の経法を信ぜず。道を行じて度世を得べきことを信ぜず。死して後、神明更らに生ずることを信ぜず。善を作りて善を得、悪を為りて悪を得と信ぜず。真人を殺し衆僧を闘乱せんと欲し、父母・兄弟・眷属を害せんと欲う。六親憎悪して、それをして死せしめんと願ず。) 経曰。肆心蕩逸至願令其死者。述云。此後悪過也。肆者申也。JMS03-33L (経に曰く「肆心蕩逸」より「願令其死」に至るまでは、述して云く、これは後に悪の過なり。「肆」は申なり。)JMS03-33L 有説。魯扈是強直自用之志。抵突是触誤侵陵之懐。未知従何。魯(力古反)孔安国云鈍也。方言何也。扈(胡古反)漢書音義曰跋扈自縦恣也。薛綜曰勇健貌。又作虜扈。謂縦横行也。虜人獲也。戦而俘獲也。[頭注:方言何也。今按方言。曰曾何也等。非是釈魯字。更詳。]JMS03-33L (有るが説かく。「魯扈」はこれ強直自用の志なり。「抵突」はこれ触誤侵陵の懐と。未だ知らず、何に従ることを。「魯」〈力古の反〉は、孔安国云く、鈍なりと。『方言』に何なり。「扈」〈胡古の反〉は『漢書の音義』に曰く、跋扈は自ら縦恣にするなりと。薛綜が曰く、勇健の貌、また虜扈に作る。謂く縦横に行くなり。虜は人に獲らるるなり。戦いて俘獲にせらるるなり。[頭注:方言何也。今『方言』を按ずるに、「曾は何也」等という。これ魯字を釈するに非ず。更に詳らかにせよ。])JMS03-33L 六親者。有説。父親有三。母親有三。合有六親。或有引世語以申難定。応劭云父母兄弟妻子。王弼云父母兄弟夫婦。皆違持頌云父之六親母之六親。識当者認也。有作職当。伝謂敢也。良恐訛之。JMS03-33L,34R (「六親」は、有るが説かく。父の親に三あり、母の親に三あり、合して六親あり。或いは有るひと、世語を引きて以て定め難きことを申ぶ。応劭が云く、父母兄弟妻子なりと。王弼が云く、父母兄弟夫婦なりと。皆、持頌に、父の六親、母の六親というに違す。識当は認なり。有るひと、職当に作る。伝に謂く、敢なり。良に恐らく訛れり。)JMS03-33L,34R [経] 如是世人。心意倶然。愚痴矇昧。而自以智慧。不知生所従来。死所趣向。不仁不順。悪逆天地。而於其中[ケ01]望僥倖。欲求長生。会当帰死。慈心教誨。令其念善。開示生死・善悪之趣。自然有是。而不肯信之。苦心与語。無益其人。心中閉塞。意不開解。 [経] (かくの如きの世人、心・意倶に然なり。愚痴矇昧にして自ら智慧ありと以〈おも〉うて、生じて従来するところ、死して趣向するところを知らず。不仁不順にして、天地に悪逆す。その中に於て[ケ01]望僥倖して、長生を欲求すれども、会〈かなら〉ず当に死に帰すべし。慈心教誨してそれをして善を念ぜしめ、生死・善悪の趣、自然にこれあることを開示すれども、しかも肯てこれを信ぜず。苦心にともに語すれども、その人に益なし。心中閉塞して意開解せず。) 経曰。如是世人至意不開解者。述云。此次釈痛也。僥(五彫古遶二反)徼遇也。謂求親遇也。倖(胡耿反)非其所得而謂得也。JMS03-34R (経に曰く「如是世人」より「意不開解」に至るまでは、述して云く、これは次に痛を釈するなり。「僥」〈五彫と古遶との二反〉は遇うことを徼〈もと〉むるなり。謂く親遇を求むるなり。「倖」〈胡耿の反〉はその得る所に非ずして而も得るを謂うなり。)JMS03-34R [経] 大命将終。悔懼交至。不予修善。臨窮方悔。悔之於後。将何及乎。天地之間。五道分明。恢廓窈窕。浩浩茫茫。善悪報応。禍福相承。身自当之。無誰代者。数之自然。応其所行。殃咎追命。無得縦捨。善人行善。従楽入楽。従明入明。悪人行悪。従苦入苦。従冥入冥。誰能知者。独仏知耳。教語開示。信用者少。生死不休。悪道不絶。如是世人。難可具尽。故有自然三塗。無量苦悩。展転其中。世世累劫。無有出期。難得解脱。痛不可言。 [経] (大命将に終わらんとするに、悔懼交わり至る。。予め善を修せずして、窮〈おわり〉に臨んで方〈まさ〉に悔ゆ。これを悔ゆとも後に於て将に何ぞ及ばんや。天地の間に五道分明なり。恢廓窈窕として浩浩茫茫たり。善悪報応し禍福相承けて、身自らこれを当く。誰も代わる者なし。数〈ことわ〉りの自然なること、その所行に応ず。殃咎命を追うて縦捨を得ることなし。善人は善を行じて、楽より楽に入り、明より明に入る。悪人は悪を行じて、苦より苦に入り、冥より冥に入る。誰か能く知れる者、独り仏のみ知りたまえりまくのみ。教語開示するに信用する者は少なし。生死休〈や〉まず。悪道絶えず。かくのごときの世人、具さに尽くすべきこと難し。故に自然の三塗無量の苦悩あり。その中に展転して世世累劫に出ずる期あることなし。解脱を得難し。痛み言うべからず。) 経曰。大命将終至痛不可言者。述云此後釈焼也。命是天地寿三大中之一故云大。窈窕者幽冥貌。浩浩者大水貌。茫茫者冥昧貌。数者理数。JMS03-34R (経に曰く「大命将終」より「痛不可言」に至るまでは、述して云く、これは後に焼を釈するなり。「命」はこれ天・地・寿の三大の中の一なるが故に「大」という。「窈窕」とは幽冥の貌、「浩浩」は大水の貌、「茫茫」は冥昧の貌、「数」は理数なり。)JMS03-34R [経] 是為五大悪五痛五焼。勤苦如是。 [経] (これを五の大悪、五痛、五焼とす。勤苦かくの如し。) 経曰。是為五大悪至勤苦如是者。述云。此第二結也。JMS03-34R (経に曰く「是為五大悪」より「勤苦如是」に至るまでは、述して云く、これは第二に結なり。)JMS03-34R [経] 譬如大火焚焼人身。 [経] (たとえば大火の人身を焚焼するが如し。) 経曰。譬如大火焚焼人身。述云。此第三顕過也。JMS03-34R (経に曰く「譬如大火焚焼人身」とは、述して云く、これは第三に過を顕すなり。)JMS03-34R [経] 人能於中。一心制意。端身正念。言行相副。所作至誠。所語如語。心口不転。独作諸善。不為衆悪。身独度脱。獲其福徳度世上天泥[オン01]之道。是為五大善也。 [経] (人、能く中に於て一心制意、端身正念にして、言行相い副〈かな〉い、所作誠を至す。所語語のごとく、心口転ぜずして、独り諸善を作して衆悪を為〈つく〉らざれば、身独り度脱して、その福徳、度世・上天・泥[オン01]の道を獲。これを五の大善とす。) 経曰。人能於中至為大善也者。述云。此第二釈所持得也。副者助也。称也。JMS03-34R (経に曰く「人能於中」より「為大善也」に至るまでは、述して云く、これは第二に持得する所を釈するなり。「副」は助なり、称なり。)JMS03-34R [経] 仏告弥勒。吾語汝等。是世五悪。勤苦若此。五痛・五焼。展転相生。 [経] (仏、弥勒に告げたまわく、吾、汝等に語る。この世の五悪、勤苦かくのごとし。五痛、五焼、展転して相生ず。) 経曰。仏告弥勒至展転相生者。述云。第三総釈有二。初総釈所離。後総釈所得。初又有二。此初総標也。JMS03-34R,34L (経に曰く「仏告弥勒」より「展転相生」に至るまでは、述して云く、第三に総釈に二あり。初には総じて所離を釈し、後に総じて所得を釈す。初にまた二あり。これは初に総じて標するなり。)JMS03-34R,34L [経] 但作衆悪。不修善本。皆悉自然。入諸悪趣。或其今世。先被殃病。求死不得。求生不得。罪悪所招。示衆見之。 [経] (ただ衆悪を作りて善本を修せざれば、みなことごとく自然にもろもろの悪趣に入る。あるいはそれ今世に先ず殃病を被る。死を求むるに得ず。生を求むるに得ず。罪悪の招くところ、衆に示してこれを見せしむ。) 経曰。但作衆悪至示衆見之者。述云。此後別釈有二。此初従悪生痛焼也。作衆悪者即五悪。入悪趣者即五焼。被殃病者即五痛。JMS03-34L (経に曰く「但作衆悪」より「示衆見之」に至るまでは、述して云く、これは後に別釈に二あり。これは初に悪によりて痛焼を生ずるなり。「作衆悪〈衆悪を作りて〉」とは即ち五悪なり。「入悪趣〈もろもろの悪趣に入る〉」とは即ち五焼なり。「被殃病〈殃病を被る〉」とは即ち五痛なり。)JMS03-34L [経] 身死随行。入三悪道。苦毒無量。自相焦然。 [経] (身死して行に随うて三悪道に入りて、苦毒無量なり。自ら相い焦然す。) 経曰。身死随行至自相[ショウ04]然者。述云。此後従焼生悪痛有三。此初五焼也。行者業也。JMS03-34L (経に曰く「身死随行」より「自相[ショウ04]然」に至るまでは、述して云く、これは後に焼により悪と痛とを生ずるに三あり。これは初に五焼なり。「行」は業なり。)JMS03-34L [経] 至其久後。共作怨結。従小微起。遂成大悪。皆由貪着財色。不能施恵。痴欲所迫。随心思想。煩悩結縛。無有解已。厚己諍利。無所省録。富貴栄華。当時快意。不能忍辱。不務修善。威勢無幾。随以磨滅。 [経] (その久しくして後、共に怨結を作すに至りて、小微より起こりて遂に大悪を成す。みな財色に貪着するに由りて、施恵するに能わず。痴欲に迫められて心に随うて思想す。煩悩結縛して解け已むことあることなし。己を厚くし利を諍いて省録するところなし。富貴・栄華、時に当たりて快意して、忍辱すること能わず。修善を務〈いとな〉まず。威勢幾ばくなくして随いてもって磨滅し、) 経曰。至其久後至随以磨滅者。述云。此次従焼生悪也。省者察也。JMS03-34L (経に曰く「至其久後」より「随以磨滅」に至るまでは、述して云く、これは次に焼より悪を生ずるなり。「省」とは察なり。)JMS03-34L [経] 身坐労苦。久後大劇。天道施張。自然糺挙。綱紀羅網。上下相応。煢煢[ソウ04][ソウ04]。当入其中。古今有是。痛哉可傷。 [経] (身坐〈とどま〉りて労苦す。久しくして後に大に劇し。天道施張して自然に糺挙し、綱紀・羅網、上下に相応す。煢煢[ソウ04][ソウ04]として当にその中に入るべし。古今にもこれあり。痛ましきかな、傷むべし。) 経曰。身坐労苦至痛哉可傷者。述云。此後従悪生痛也。JMS03-34L (経に曰く「身坐労苦」より「痛哉可傷」に至るまでは、述して云く、これは後に悪より痛を生ずるなり。)JMS03-34L 坐亦由也。受也。苦増不止故云久大劇。業果之理更無作者故云天道施張。造悪必彰故自糺挙。糺亦糾(唐由反)。決疑云三合縄也。非此中意。今約也。限也。糺是古体也。身当法網故云綱紀羅網。貴賤勿不従法故上下相応。罪者帰之無人伴送故云煢。[ソウ04][ソウ04]者怱也。煢古文[ケイ20][X41]同。臣営反。独也。単也。JMS03-34L,35R (「坐」はまた由なり、受なり。苦増じて止まらざるが故に「久大劇〈久しくして後に大に劇し〉」という。業果の理、更に作者なきが故に「天道施張」という。悪を造れば必ず彰るるが故に「自糺挙〈自然に糺挙し〉」という。「糺」はまた糾〈唐由の反〉なり。『決疑』に云く、三合の縄なりと。この中の意に非ず。今は約なり、限なり。糺はこれ古体なり。身、法網に当るが故に「綱紀・羅網」という。貴賤、法に従わずということなきが故に「上下相応〈上下に相応す〉」という。罪はこれに帰するに人の伴送なきが故に「煢」という。「[ソウ04][ソウ04]」は怱なり。「煢」は古文の[ケイ20][X41]と同じ。臣営の反、独なり、単なり。)JMS03-34L,35R [経] 仏語弥勒。世間如是。仏皆哀之。 [経] (仏、弥勒に語りたまわく、世間かくの如し。仏皆これを哀みたまうに、) 経曰。仏語弥勒至仏皆哀之者。述云。第二釈所持有二。此初結彰己悲也。JMS03-35R (経に曰く「仏語弥勒」より「仏皆哀之」に至るまでは、述して云く、第二に所持を釈するに二あり。これは初に己が悲を結彰するなり。)JMS03-35R [経] 以威神力。摧滅衆悪。悉令就善。棄捐所思。奉持経戒。受行道法。無所違失。終得度世泥[オン01]之道。 [経] (威神力を以て、衆悪を摧滅してことごとく善に就けしむ。所思を棄捐し経戒を奉持し、道法を受行して違失するところなし。終に度世・泥[オン01]の道を得。) 経曰。以威神力至涅槃之道者。述云。此後正申化益也。滅悪就善者令修世善。棄思受道者修出世善。JMS03-35R (経に曰く「以威神力」より「涅槃之道」に至るまでは、述して云く、これは後に正しく化益を申ぶるなり。「滅悪就善〈衆悪を摧滅してことごとく善に就けしむ〉」とは世善を修せしむ。「棄思受道〈所思を棄捐し経戒を奉持し、道法を受行し〉」とは出世善を修す。)JMS03-35R [経] 仏言。汝今諸天人民。及後世人。得仏経語。当熟思之。能於其中。端心正行。主上為善。率化其下。転相勅令。各自端守。尊聖敬善。仁慈博愛。仏語教誨。無敢虧負。当求度世。抜断生死衆悪之本。当離三塗無量。憂畏。苦痛之道。 [経] (仏言わく、汝、いま諸天・人民および後世の人、仏の経語を得て当に熟〈つらつら〉これを思う。能くその中に於て心を端〈ただ〉しくし正行して、主上、善を為してその下を率化して、転た相い勅令し、おのおの自ら端守して聖を尊び善を敬い、仁慈博愛し、仏語の教誨、敢て虧負することなし。当に度世を求めて生死衆悪の本を抜断すべし。当に三塗無量、憂畏、苦痛の道を離るべし。) 経曰。仏言汝今至苦痛之道者。述云。第四勧人修捨有二。初仏勧修捨。後弥勒領解。初又有三。初以理正勧次。挙現化勧。後以化滅勧。初又有二。此初正勧修棄也。端守者匡邪守正故。JMS03-35R,35L (経に曰く「仏言汝今」より「苦痛之道」に至るまでは、述して云く、第四に人に勧めて修捨せしむるに二あり。初には仏勧を修捨せしめ、後には弥勒の領解。初にまた三あり。初には理を以て正しく勧め、次には現化を挙げて勧め、後には化滅を以て勧む。初にまた二あり。これは初に正しく修棄を勧むるなり。「端守」とは邪を匡し正を守るが故に。)JMS03-35R,35L [経] 汝等於是。広植徳本。布恩施恵。勿犯道禁。忍辱精進。一心智恵。転相教化。為徳立善。正心正意。斎戒清浄。一日一夜。勝在無量寿国。為善百歳。所以者何。彼仏国土。無為自然。皆積修善。無毛髪之悪。 [経] (汝等、ここにして広く徳本を植えて恩を布き恵を施して、道禁を犯すことなかれ。忍辱・精進し、一心・智慧をもって転た相い教化し、徳を為し善を立して、正心正意し、斎戒清浄なること一日一夜すれば、無量寿国にありて善を為すこと百歳するに勝れたり。所以は何ん。かの仏国土は無為自然にして、みな修善を積んで毛髪の悪なければなり。) 経曰。汝等於是至無髮毛之悪者。述云。此後対歎令修有二。此初対弥陀土歎勝令修也。JMS03-35L (経に曰く「汝等於是」より「無髮毛之悪」に至るまでは、述して云く、これは後に対して歎じて修せしむるに二あり。これは初に弥陀の土に対して勝を歎じて修せしむるなり。)JMS03-35L 施等六度即自利得。転化立善即利他行。行善是也。正心斎戒即止善也。此修難成故於一日勝西方国百年之善。而称讃云生彼国疾得無上菩提者彼無時不修故。此修善時少故不相違也。JMS03-35L (施等の六度は即ち自利の得、「転化立善〈転た相い教化し、徳を為し善を立し〉」は即ち利他の行なり。行善これなり。「正心斎戒〈正心正意し、斎戒清浄なること〉」は即ち止善なり。ここに修すること成じ難き故に、一日に於けるも西方国の百年の善に勝る。而るに『称讃』に、彼の国に生ずれば疾く無上菩提を得というは、彼には時として修せざることなきが故に。ここは修善の時少なきが故に相違せざるなり。)JMS03-35L [経] 於此修善。十日十夜。勝於他方諸仏国土。為善千歳。所以者何。他方仏国。為善者多。為悪者少。福徳自然。無造悪之地。唯此間多悪。無有自然。勤苦求欲。転相欺紿。心労形困。飲苦食毒。如是怱務。未嘗寧息。 [経] (ここにして善を修すること十日十夜すれば、他方の諸仏国土にして善を為すこと千歳するに勝れたり。所以は何ん。他方の仏国は善を為す者は多く、悪を為す者は少なし。福徳自然にして造悪の地〈ところ〉なければなり。ただこの間のみ悪多くして、自然なることあることなし。勤苦求欲して、転た相い欺紿し、心労し形困して、苦を飲み毒を食す。かくのごときの怱務、未だ嘗〈むかし〉にも寧息せず。) 経曰。於此修善至未甞寧息者。述云。此後対余仏土歎勝令修也。即望上位所居勝土[キョウ01]量歎勝令増修意。殆者危也。尽也。今此中意存其俗語言欺之也。JMS03-35L (経に曰く「於此修善」より「未甞寧息」に至るまでは、述して云く、これは後に余仏の土に対して勝を歎じて修せしむるなり。即ち上位所居の勝土に望めて、[キョウ01]量して勝を歎じて修意を増せしむ。「殆」とは危なり、尽なり。今この中の意は、その俗語を存す。言うこころはこれを欺くなり。)JMS03-35L [経] 吾哀汝等天人之類。苦心誨喩。教令修善。随器開導。授与経法。莫不承用。在意所願。皆令得道。仏所遊履。国邑丘聚。靡不蒙化。天下和順。日月清明。風雨以時。災[レイ01]不起。国豊民安。兵戈無用。崇徳興仁。務修礼譲。 [経] (吾、汝等、天人の類を哀みて苦心に誨喩し、教えて善を修せしむ。器に随いて開導して経法を授与するに、承用せざることなし。意の所願に在〈まかせ〉て、みな得道せしむ。仏の遊履するところの国邑・丘聚、化を蒙らざるはなし。天下和順し日月清明なり。風雨時をもってし災[レイ01]起こらず。国豊かに民安くして、兵戈用いることなく、徳を崇め仁を興して、務〈まつりごと〉礼譲を修〈おこな〉う。) 経曰。吾哀汝等至務修礼譲者。述云。此第二挙現化益以勧修有二。此初修善得益也。JMS03-35L,36R (経に曰く「吾哀汝等」より「務修礼譲」に至るまでは、述して云く、これは第二に現化の益を挙げて以て修を勧むるに二あり。これは初に修善得益なり。)JMS03-35L,36R 邑者周礼四井為邑方二里也。九夫為井方一里也。説文八家一井也。聚落者小郷曰聚。広雅落居也。謂人所聚居也。[レイ01](力制反)疫[レイ01]也。人病相注也。釈名云病気流行中人也。戈(居和反)平頭戟。長十尺六寸。或六尺六寸也。JMS03-36R (「邑」とは『周礼』に四井を邑と為す。方二里なり。九夫を井と為す。方一里なり。『説文』に八家は一井なり。「聚落」とは、小郷を聚という。『広雅』に落は居なり。謂く人の聚居する所なり。「[レイ01]」〈力制の反〉は疫[レイ01]なり。人病相い注ぐなり。『釈名』に云く、病気流行して人に中るなり。「戈」〈居和の反〉は平頭の戟なり。長〈たけ〉十尺六寸、或いは六尺六寸なり。)JMS03-36R [経] 仏言。我哀愍汝等諸天人民。甚於父母念子。今我於此世間。作仏降化五悪。消除五痛。絶滅五焼。以善攻悪。抜生死之苦。令獲五徳。昇無為之安。 [経] (仏言わく、我、汝等諸天・人民を哀愍すること父母の子を念うよりも甚だし。今我この世間において作仏して、五悪を降化し五痛を消除し五焼を絶滅して、善をもって悪を改め、生死の苦を抜きて五徳を獲しめ、無為の安に昇らしむ。) 経曰。仏言我哀至無為之安者。述云。此後滅悪離苦也。滅五悪故獲五徳。離痛焼故。昇無為之安楽。JMS03-36R (経に曰く「仏言我哀」より「無為之安」に至るまでは、述して云く、これは後に滅悪離苦なり。五悪を滅するが故に五徳を獲、痛焼を離るるが故に無為の安楽に昇るなり。)JMS03-36R [経] 吾去世後。経道漸滅。人民諂偽。復為衆悪。五痛五焼。還如前法。久後転劇。不可悉説。我但為汝略言之耳。 [経] (吾世を去りて後、経道漸く滅し人民諂偽にして、また衆悪を為〈つく〉らん。五焼・五痛、還りて前の法のごとくならん。久しくして後に転た劇しからんこと、悉く説くべからず。我ただ汝がために略してこれを言うまくのみ。) 経曰。吾去世後至略言之耳者。述云。此第三以滅化損以勧修有二。此初彰去聖後損也。悉者備也。JMS03-36R (経に曰く「吾去世後」より「略言之耳」に至るまでは、述して云く、これは第三に滅化の損を以て以て修を勧むるに二あり。これは初に聖を去る後の損を彰すなり。「悉」は備なり。)JMS03-36R [経] 仏語弥勒。汝等各善思之。転相教誡。如仏経法。無得犯也。 [経] (仏、弥勒に語りたまわく、汝等おのおの善くこれを思いて転た相い教誡すること、仏の経法の如くして犯を得ることなかれ。) 経曰。仏語弥勒至無得犯也者。述云。此後勧人使修也。JMS03-36R (経に曰く「仏語弥勒」より「無得犯也」に至るまでは、述して云く、これは後に人を勧めて修せしめるなり。)JMS03-36R [経] 於是弥勒菩薩。合掌白言。仏所説甚善。世人実爾。如来普慈哀愍。悉令度脱。受仏重誨。不敢違失。 [経] (ここに弥勒菩薩、合掌して白言さく、仏の所説甚だ善し。世人実に爾なり。如来、普き慈をもって哀愍して、ことごとく度脱せしむ。仏の重誨を受けつ。敢て違失せじ。) 〈※「仏所説甚善」は、本願寺派蔵版と憬興依用本には「仏所説甚苦」とあるようである。〉 経曰。於是弥勒至不敢違失者。述云。此第二弥勒領解也。甚苦実爾者領解。不敢違失者奉行。不敢者畏也。JMS03-36R,36L (経に曰く「於是弥勒」より「不敢違失」に至るまでは、述して云く、これは第二に弥勒の領解なり。「甚苦実爾〈仏の所説甚だ善し。世人実に爾なり〉」は領解なり。「不敢違失〈敢て違失せじ〉」とは奉行なり。「不敢」は畏なり。)JMS03-36R,36L [経] 仏告阿難。汝起更整衣服。合掌恭敬。礼無量寿仏。十方国土諸仏如来。常共称揚讃歎彼仏無着無礙。 [経] (仏、阿難に告げたまわく、汝、起ちて更に衣服を整え合掌恭敬して、無量寿仏を礼せよ。十方国土の諸仏如来、常に共にかの仏の無着無碍なるを称揚し讃歎す。) 経曰。仏告阿難至無着無礙者。述云。第三褒貶得失令物修棄有五。此初仏命阿難礼弥陀仏也。弥勒是影響衆之主。阿難為当機宜之首故。仏唯対此二大聖勧物令修浄土之因。JMS03-36L (経に曰く「仏告阿難」より「無着無礙」に至るまでは、述して云く、第三に得失を褒貶して物をして修棄せしむるに五あり。これは初に仏、阿難に命じて弥陀仏を礼せしむるなり。弥勒はこれ影響衆の主なり。阿難は当機宜の首たるが故に、仏は唯この二大聖に対して、物を勧めて浄土の因を修せしむ。)JMS03-36L [経] 於是阿難起整衣服。正身西面。恭敬合掌。五体投地。礼無量寿仏白言。世尊。願見彼仏。安楽国土。及諸菩薩声聞大衆。 [経] (ここに阿難起ちて衣服を整え、身を正しくし面〈おもて〉を西にして恭敬し合掌し、五体を地に投げて、無量寿仏を礼したてまつりてもうさく、世尊、願わくは、かの仏、安楽国土およびもろもろの菩薩・声聞・大衆を見たてまつらん。) 経曰。於是阿難至声聞之衆者。述云。此第二阿難承命礼仏以求見也。土是所居衆是所化故兼之也。JMS03-36L (経に曰く「於是阿難」より「声聞之衆者」に至るまでは、述して云く、これは第二に阿難、命を承けて仏を礼し以て見ることを求むるなり。土はこれ所居、衆はこれ所化なるが故にこれを兼ぬるなり。)JMS03-36L [経] 説是語已。即時無量寿仏。放大光明。普照一切。諸仏世界。金剛囲山。須弥山王。大小諸山。一切所有皆同一色。譬如劫水弥満世界。其中万物沈没不現。滉瀁浩汗。唯見大水。彼仏光明亦復如是。声聞菩薩。一切光明。皆悉隠蔽。唯見仏光明曜顕赫。 [経] (この語を説き已るに、即時に無量寿仏、大光明を放ちて普く一切諸仏の世界を照らしたまう。金剛囲山・須弥山王・大小の諸山、一切所有みな同じく一色なり。譬えば劫水の世界に弥満するに、その中の万物、沈没して現ぜず。滉瀁浩汗として、ただ大水を見るが如し。かの仏の光明も、またまたかくの如し。声聞・菩薩の一切の光明、皆悉く隠蔽して、ただ仏光の明曜顕赫なるを見たてまつる。) 経曰。説是語已至唯見仏光者。述云。此第三彼仏放光応請令見。JMS03-36L (経に曰く「説是語已」より「唯見仏光」に至るまでは、述して云く、これは第三に彼の仏、光を放ちて請に応じて見せしむ。)JMS03-36L 滉瀁者積水貌猶浩蕩也。汗(下且反)者熱気所蒸液也。又汚(烏臥反)泥着物也。説文穢也。宜従初也。今言浩汗者布水貌。JMS03-36L,37R (「滉瀁」とは、積水の貌、猶し浩蕩のごときなり。「汗」〈下且反〉は熱気、蒸す所の液なり。また汚〈烏臥の反〉は泥の物に着くなり。『説文』に穢なり。宜く初に従うべきなり。今「浩汗」というは布水の貌なり。)JMS03-36L,37R [経] 爾時阿難。即見無量寿仏。威徳巍巍。如須弥山王。高出一切諸世界上。相好光明。靡不照燿。此会四衆。一時悉見。彼見此土。亦復如是。 [経] (その時に阿難、すなわち無量寿仏を見たてまつれば、威徳巍巍として、須弥山王の高くして一切の諸世界の上に出でたるが如し。相好光明、照曜せざることなし。この会の四衆、一時にことごとく見る。彼〈かしこ〉にこの土を見ること、またまたかくの如し。) 経曰。爾時阿難至亦復如是者。述云。此第四尋光備見彼土得失也。此衆見彼土彼土見娑婆明昧有異如前已解。JMS03-37R (経に曰く「爾時阿難」より「亦復如是」に至るまでは、述して云く、これは第四に光を尋ねて備に彼の土の得失を見るなり。この衆は彼の土を見る。彼土、娑婆を見るに明昧異あること、前に已に解するが如し。)JMS03-37R [経] 爾時仏告阿難及慈氏菩薩。汝見彼国。従地已上。至浄居天。其中所有。微妙厳浄。自然之物。為悉見不。阿難対曰唯然已見。汝寧復聞無量寿仏大音。宣布一切世界。化衆生不。阿難対曰唯然已聞。彼国人民。乗百千由旬七宝宮殿。無所障碍。遍至十方。供養諸仏。汝復見不。対曰已見。 [経] (その時に仏、阿難および慈氏菩薩に告げたまわく、汝、かの国を見るに、地より已上、浄居天に至るまで、その中の所有、微妙厳浄なる自然の物、ことごとく見るとやせん、いなや。阿難、対えて曰さく、やや然なり。すでに見たまえつと。汝むしろまた無量寿仏の大音、一切世界に宣布して衆生を化するを聞くや、いなや。阿難、対えて曰さく、やや然なり。すでに聞きたまえつと。かの国の人民、百千由旬の七宝の宮殿に乗じて障碍するところなく、遍く十方に至りて諸仏を供養す。汝また見るや、いなや。対えて曰さく、すでに見たまえつと。) 経曰。爾時仏告至対曰已見者。述云。此第五彰彼失令求令捨有二。此初彰徳令求有三問答也。JMS03-37R (経に曰く「爾時仏告」より「対曰已見」に至るまでは、述して云く、これは第五に彼の失を彰して求めしめ、捨てしむるに二あり。これは初に徳を彰して求めしむるに三の問答あるなり。)JMS03-37R 諸説浄土無天地異者即違此文。従地以上至浄居天。然帛延経云。即諸仏国中従第一四天王上至三十六天上諸菩薩阿羅漢天人皆復於虚空中大共作衆音伎楽。JMS03-37R (諸説に浄土に天地の異しとは、即ちこの文に「従地以上至浄居天〈地より已上、浄居天に至るまで〉」というに違す。然るに帛延の経に云く「即ち諸仏の国中、第一四天王の上より三十六天の上に到るまで、諸の菩薩・阿羅漢・天・人、皆また虚空の中に於いて、大に共に衆音の伎楽を作せり」と。)JMS03-37R 下云則第一四天王諸天人。第二[トウ01]利天上諸天人。第三天上諸天人。第四天上諸天人。第五天上諸天人。第六天上諸天人。第七梵天上諸天人上至第十六天上諸天人上至三十六天上諸天人。JMS03-37R,37L (下に云く「則ち第一四天王の諸の天人、第二[トウ01]利天上の諸の天人、第三天上の諸の天人、第四天上の諸の天人、第五天上の諸の天人、第六天上の諸の天人、第七梵天上の諸の天人、上第十六天上の諸の天人に到り、上三十六天上の諸の天人に至る」と。)JMS03-37R,37L 支謙経亦云即諸仏国中従第一四天上至三十二天上諸天人。後云阿弥陀仏為諸菩薩阿羅漢説経。菩薩阿羅漢及諸天人民無央数皆飛到阿弥陀仏所聞法歓喜。即第一四天王。第二[トウ01]利天上至三十二天上諸天人各持天上万種自然之物来下為阿弥陀仏作礼供養仏及諸菩薩阿羅漢。JMS03-37L (支謙の経にもまた云く「即ち諸仏国の中に第一四天の上より、三十三天の上に至るまで」と。後に云く「阿弥陀仏、諸の菩薩・阿羅漢の為に経を説く。菩薩・阿羅漢及び諸天・人民、無央数、皆、阿弥陀仏の所に飛び到りて法を聞きて歓喜す」。「即ち第一四天王、第二[トウ01]利天上より、三十二天上に至るまで、諸天人おのおの天上万種自然の物を持ち来下して阿弥陀仏の為に礼を作し仏及び諸菩薩阿羅漢を供養す」と。)JMS03-37L 准此二経。諸世界中皆有三十六天及三十三天。雖復一本訳家異故。JMS03-37L (この二経に准ずるに、諸の世界の中に皆、三十六天及び三十三天あり。また一本と雖ども訳家の異なるが故に。)JMS03-37L 依密厳経有二十六天。謂六欲天梵天。有十浄居。有五無色。及有四無想天故。彼頌曰。欲色無色界 無想等天宮 仏超過彼已 而依密厳住。依本業経有二十八天。即欲界有六。禅各有四。浄居為一。不説無想。加大静天及無色四也。依華厳経。有三十二天。謂六欲天初禅有五。上三各四。浄居亦五。及四無色。不説無想故。JMS03-37L,38R (『密厳経』に依るに二十六天あり。謂く六欲天、梵天、十浄居あり、五無色あり、及び四無想天あるが故に。彼の頌に曰く「欲・色・無色界・無想等天宮、仏は彼を超過し已りて而も密厳に依りて住す」と。『本業経』に依るに二十八天あり。即ち欲界に六あり、禅におのおの四あり、浄居を一と為し、無想を説かず、大静天と及び無色の四を加うるなり。『華厳経』に依るに三十二天あり。謂く六欲天と初禅とに五あり。上三におのおの四と、浄居にまた五と、及び四無色となり。無想を説かざるが故に。)JMS03-37L,38R 総而言之。支謙本即同華厳故雖不説無想大静有三十二。而帛延云三十六者蓋是訛也。将其謙本[ケン03]帛延経。延経多訛。故雖有無色天而依欲色住更無別処故。JMS03-38R (総じてこれを言わば、支謙の本は即ち『華厳』に同ずるが故に、無想大静を説かずと雖ども三十二あり。而るに帛延に「三十六」というは蓋しこれ訛なり。その謙の本を将きて帛延の経を[ケン03]ずるに、延の経は訛多しと。故に無色天ありと雖ども而も欲色に依りて住して更に別の処なきが故に。)JMS03-38R 今唯問乃至浄居所有荘厳。雖有浄居天而定性那含必不生浄土。而密厳云。或生欲自在 及以色界天 乃至無想宮 阿迦尼[タ04]処 空識無所有 非想非非想 如是諸地中 漸次除貪欲 住彼非究竟 尋来生密厳者。彼密厳之土。既十地菩薩所生之処故不相違。前文自云浄居諸天与阿加尼[タ04]螺髻梵王同会一処。咸於此土仏及菩薩生希有心。故即知彼天生密厳土是菩薩也。傍論且止応釈本文。JMS03-38R,38L (今は唯、乃至浄居所有荘厳〈「浄居天に至るまで、その中の所有、微妙厳浄なる自然の物」〉を問う。浄居天ありと雖ども、定性の那含は必ず浄土に生ぜず。而るに『密厳』に云く「或いは欲自在、及以び色界天、乃至無想宮、阿迦尼[タ04]処、空識無所有、非想非非想に生ず。かくの如きの諸地の中に漸次に貪欲を除き、彼に住するは究竟に非ざれば、尋ねて密厳に来生す」とは、彼の密厳の土は、既に十地の菩薩の所生の処なるが故に相違せず。前の文に自ら云く「浄居諸天と阿加尼[タ04]螺髻梵王と同じく一処に会して、咸くこの土の仏及び菩薩に於いて希有心を生ず」と。故に即ち知りぬ。彼の天の、密厳土に生ずるは、これ菩薩なり。傍論は且く止めて応に本文を釈すべし。)JMS03-38R,38L [経] 彼国人民有胎生者。汝復見不。対曰已見。其胎生者所処宮殿。或百由旬。或五百由旬。各於其中。受諸快楽。如[トウ01]利天上。亦皆自然。 [経] (かの国の人民、胎生の者あり。汝また見るや、いなやと。対えて曰さく、すでに見たまえつと。その胎生の者の処するところの宮殿、あるいは百由旬、あるいは五百由旬なり。おのおのその中にしてもろもろの快楽を受く。[トウ01]利天上のごとく、またみな自然なり。) 経曰。彼国人民至亦皆自然者。述云。此後顕彼土失令厭令捨有二。初彰彼胎生之失。後勧発修捨之意。初又有四。此初寄問彰彼胎生之果也。JMS03-38L (経に曰く「彼国人民」より「亦皆自然」に至るまでは、述して云く。これは後に彼の土の失を顕して、厭わしめ捨てしむるに二あり。初には彼の胎生の失を彰し、後に修捨の意を勧発す。初にまた四あり。これは初に問に寄せて彼の胎生の果を彰すなり。)JMS03-38L 百由旬者即下輩疑仏所生之宮。五百由旬者即中輩疑智所止之宮。而帛謙経若中若下皆云二千里城者蓋是略挙不尽之言。不爾中下輩応無参差故此文為勝。量之大小思之可会。五百歳即此方年数故。余本皆云於是間五百歳也。JMS03-38L,39R (「百由旬」とは、即ち下輩の疑仏所生の宮なり。「五百由旬」とは、即ち中輩の疑智所止の宮なり。而るに帛と謙との経に、もしは中、もしは下、皆、二千里城というは、蓋しこれ略して挙ぐる不尽の言なるのみ。爾らずば、中下輩は応に参差なかるべきが故に、この文を勝と為す。量の大小、これを思いて会すべし。「五百歳」とは即ち此方の年数なり。故に余本に皆、「この間に於いて五百歳」というなり。)JMS03-38L,39R [経] 爾時慈氏菩薩白仏言世尊。何因何縁。彼国人民。胎生化生。 [経] (その時に慈氏菩薩、仏に白して言さく、世尊、何の因、何の縁ありてか、かの国の人民、胎生化生なると。) 経曰。爾時慈氏至胎生化生者。述云。此第二対因顕果有二。此初問。即正問胎生之因兼其化生也。JMS03-39R (経に曰く「爾時慈氏」より「胎生化生」に至るまでは、述して云く、これは第二に因に対して果を顕すに二あり。これは初に問なり。即ち正しく胎生の因を問い、その化生を兼ぬるなり。)JMS03-39R [経] 仏告慈氏。若有衆生。以疑惑心。修諸功徳。願生彼国。不了仏智。不思議智。不可称智。大乗広智。無等無倫最上勝智。於此諸智。疑惑不信。然猶信罪福。修習善本。願生其国。此諸衆生。生彼宮殿。寿五百歳。常不見仏。不聞経法。不見菩薩声聞聖衆。是故於彼国土。謂之胎生。 [経] (仏、慈氏に告げたまわく、もし衆生ありて、疑惑の心をもってもろもろの功徳を修して、かの国に生ぜんと願ず。仏智・不思議智・不可称智・大乗広智・無等無倫最上勝智を了らず。この諸智において疑惑して信ぜず。しかるになお罪福を信じ善本を修習してその国に生ぜんと願ず。このもろもろの衆生、かの宮殿に生まれて寿五百歳、常に仏を見たてまつらず。経法を聞かず。菩薩・声聞・聖衆を見ず。この故にかの国土において、これを胎生と謂う。) 経曰。仏告慈氏至謂之胎生者。唯総別違理。過同前解。良亦次第乖諸論故。〈頭注:唯総別違理。疑此次上有欠文。更勘。〉JMS03-39R (経に曰く「仏告慈氏」より「謂之胎生」に至るまでは、唯、総別は理に違す。過は前の解に同じ。良にまた次第は諸の論に乖くが故に。〈頭注:「唯総別違理」。疑らくはこの次上に欠文あり。更に勘うべし。〉)JMS03-39R 有説。仏智即総標四智区故。大円鏡智名不思議智。平等性智名不可称智。妙観察智名大乗広智。成所作智名無等無倫最上勝智。此亦不然。後之四智。如其次第鏡等四智。随順聖教不応四智皆名仏智故。平等妙観二智心品菩薩亦得故。故此五智如其次第。彼仏地経中五法是也。清浄法界名為仏智。智処智性皆名智故。JMS03-39R,39L (有るが説かく。「仏智」は即ち総標なり。四智は区〈まちまち〉なるが故に。大円鏡智を「不思議智」と名づけ、平等性智を「不可称智」と名づけ、妙観察智を「大乗広智」と名づけ、成所作智を「無等無倫最上勝智」と名づくと。これまた然らず。後の四智、その次第の如く鏡等の四智ならば、聖教に随順するに、応に四智を皆、仏智と名くべからざるが故に。平等と妙観との二智の心品は菩薩もまた得るが故に。故にこの五智はその次第の如し。彼の『仏地経』の中の五法これなり。清浄法界を名づけて仏智と為す。智処も智性も皆、智と名づくるが故に。)JMS03-39R,39L 有疑。弥陀雖有弘誓。衆生万品。頗能接引十方天人令生彼国。故云不了仏智。弥陀既証一真法界。無徳不円。諸患悉尽。尽当際而不竭称本願而迎接。故有縁衆生皆生彼土。不可以疑網経懐也。JMS03-39L (有るが疑ごうらく。弥陀に弘誓ありと雖ども。衆生は万品なり。頗る能く十方の天人を接引して彼の国に生ぜしめんやと。故に「不了仏智」という。弥陀は既に一真法界を証して、徳として円かならずということなし。諸の患は悉く尽くす。当際を尽くすとも竭〈つく〉さず。本願に称いて迎接す。故に有縁の衆生、皆、彼の土に生ず。疑網を以て懐〈おも〉いを経るべからず。)JMS03-39L 大円鏡智名不思議智。有聞経説善悪罪福重者先引。便疑称念弥陀仏名必生彼土。言恒作諸悪悪必深重。不応十念相続微善能滅諸罪。而往生彼入正定聚畢不退転。故云不了不思議智。不思議智有大威力。非思量境故。汝不聞乎。一面之鏡無像不現。[ゴ05]疑一智力消諸罪障。又如毫毛万斤少火能焚。故十念称仏念別能除八十億劫生死之罪。往生浄土有何可怪也。JMS03-39L,40R (大円鏡智を「不思議智」と名づく。有るが経に善悪罪福重き者、先に引くと説くを聞きて、便ち弥陀仏の名を称念して必ず彼の土に生ずるというを疑いて、言く、恒作の諸悪、悪必ず深重なり。応に十念相続の微善は能く諸罪を滅すべからず。而も彼に往生して正定聚に入りて畢に不退転ならんやと。故に「不了不思議智〈不思議智を了せず〉」という。「不思議智」に大威力ありて、思量の境に非ざるが故に。汝、聞かざるや、一面の鏡に像として現ぜざることなきことを。[ゴ05]〈なん〉ぞ一智の力の、諸の罪障を消することを疑わん。また毫毛の万斤なるを、少火の、能く焚くが如し。故に十念の称仏念は別に能く八十億劫の生死の罪を除きて、浄土に往生すること、何の怪しむべきことあらん。)JMS03-39L,40R 平等性智名不可称智。有聞仏智於法懸絶。懐疑而言。名必相待。待不覚而名覚。有何懸絶念獲多福。今釈此疑顕仏有不可称智。平等性智。証二空理。境智平等玄絶称説。而以名遣名而詮玄旨。悟旨者亡言。境既不可称智可言不可称。不可称故念者福多。由此不可疑網在懐。JMS03-40R (平等性智を「不可称智」と名づく。有るが仏智は法に於いて懸〈はる〉かに絶すと聞きて、疑を懐きて言く。名は必ず相待なり。不覚に待して覚と名づく。何の懸絶なることかありて、念じて多福を獲んやと。今、この疑を釈して、仏に不可称智あることを顕す。平等性智は、二空の理を証すれば、境智平等にして称説を玄絶す。而も名を以て名を遣りて玄旨を詮す。旨を悟る者は言を亡ず。境既に称すべからざれば、智を不可称というべし。不可称の故に念ずる者は福多し。これに由りて、疑網を懐に在くべからず。)JMS03-40R 妙観察智名大乗広智。有聞念仏皆得往生。而起疑言。過現諸仏雖復無量済生不尽。一仏能度衆生尽。不応更有余仏化生。如何念弥陀仏者。皆生彼土。故云不了大乗広智。JMS03-40R,40L (妙観察智を「大乗広智」と名づく。有るが念仏すれば皆往生を得と聞きて、疑を起こして言く。過現の諸仏はまた無量なりと雖ども生を済うこと尽きず。一仏能く衆生を度し尽くさば、応に更に余仏の生を化することあるべからず。如何ぞ弥陀仏を念ずる者、皆、彼土に生ぜんと。故に「不了大乗広智〈大乗広智を了せず〉」という。)JMS03-40R,40L 妙観察智。常含智悲。於諸有縁。無不運載而入涅槃。但諸衆生各有所属。属者雖尽不属猶在。故更有余仏出世化益。由此念仏皆生浄土意在茲也。JMS03-40L (妙観察智は常に智悲を含みて諸の有縁に於いて運載して涅槃に入れしめざることなし。ただ諸の衆生におのおの所属あり。属は尽くと雖ども、不属はなお在り。故に更に余仏の出世化益あり。これに由りて念仏して皆、浄土に生ず。意はここに在るなり。)JMS03-40L 成所作名無等無倫最上勝智。有聞如来不答十四不可記事。便疑於仏。不能遍知一切諸法。既無勝用。念有何福。故云不了無等倫智。成所作智遍縁六塵。不同凡夫故云無等。雖達万境常在妙定。非如二乗入出不同故云無倫。二障都尽発三業化作四記論。非諸菩薩之所能為故云最上勝。最上勝者。如其次第簡三祇劫故。如来答難必有利益。答十四事唯有戯論知而不答。故念之者福定非少。由此疑仏智。雖生彼国而在辺地不被聖化。事若胎生宜之応捨。JMS03-40L,41R (成所作を「無等無倫最上勝智」と名づく。有るが如来は十四不可記の事を答えずと聞きて、便ち仏を疑う。遍く一切諸法を知ること能わず、既に勝用なし。念ずるに何の福かあらんと。故に「不了無等倫智〈無等倫智を了せず〉」いう。成所作智は遍く六塵を縁ず。凡夫に同じからざるが故に「無等」という。万境に達すと雖も常に妙定に在り。二乗の入出不同なるが如きに非ざるが故に「無倫」という。二障都て尽きて三業の化を発こし、四記の論を作す。諸の菩薩の能く為る所に非ざるが故に「最上勝」という。「最上勝」とは、その次第の如く三祇劫に簡ぶが故に。如来の答難は必ず利益あり。十四事を答うるは唯、戯論あれば、知りて答えず。故にこれを念ずる者は福定んで少に非ず。これに由りて仏智を疑うもの、彼の国に生ずと雖も、辺地に在りて聖化を被むらず。事もし胎生ならば、宜しく応に捨つべし。)JMS03-40L,41R [経] 若有衆生。明信仏智。乃至勝智。作諸功徳。信心回向。此諸衆生。於七宝華中。自然化生。跏趺而坐。須臾之頃。身相光明。智慧功徳。如諸菩薩。具足成就。 [経] (もし衆生ありて、明らかに仏智、乃至、勝智を信じ、もろもろの功徳を作して、信心回向せん。このもろもろの衆生、七宝華中において、自然に化生して、跏趺して坐し、須臾の頃〈あいだ〉に身相・光明、智慧・功徳、もろもろの菩薩のごとく具足し成就せん。) 経曰。若有衆生至具足成就者。述云。此後兼答化生因果也。JMS03-41R (経に曰く「若有衆生」より「具足成就」に至るまでは、述して云く、これは後に兼ねて化生の因果を答うなり。)JMS03-41R [経] 復次慈氏。他方仏国諸大菩薩。発心欲見無量寿仏。恭敬供養。及諸菩薩声聞之衆。彼菩薩等命終得生無量寿仏国。於七宝華中自然化生。弥勒当知彼化生者智慧勝故。 [経] (また次に慈氏、他方仏国の諸大菩薩、発心して無量寿仏を見たてまつり、恭敬供養すること、もろもろの菩薩・声聞の衆に及ぼさんと欲す。かの菩薩等、命終して無量寿国に生ずることを得て、七宝華中より自然に化生す。弥勒、当に知るべし。かの化生の者は智慧勝れたるが故なり。) 経曰。復次慈氏至智慧勝故者。述云。此第三[キョウ01]量顕劣有二。此初歎化生之勝也。JMS03-41R (経に曰く「復次慈氏」より「智慧勝故」に至るまでは、述して云く、これは第三に[キョウ01]量して劣を顕すに二あり。これは初に化生の勝を歎ずるなり。)JMS03-41R [経] 其胎生者。皆無智慧。於五百歳中。常不見仏。不聞経法。不見菩薩諸声聞衆。無由供養於仏。不知菩薩法式。不得修習功徳。当知此人。宿世之時無有智慧。疑惑所致。 [経] (その胎生の者はみな智慧なし。五百歳の中に於て、常に仏を見ず。経法を聞かず。菩薩・諸声聞衆を見ず。仏を供養するに由なし。菩薩の法式を知らず。功徳を修習することを得ず。当に知るべし、この人、宿世の時、智慧あることなくして疑惑するが致すところなり。) 経曰。其胎生者至疑惑所致者。述云。此次顕胎生之劣也。惑者執也。JMS03-41R (経に曰く「其胎生者」より「疑惑所致」に至るまでは、述して云く、これは次に胎生の劣を顕すなり。「惑」は執なり。)JMS03-41R [経] 仏告弥勒。譬如転輪聖王。別有七宝宮室。種種荘厳。張設牀張。懸諸[ゾウ02]幡。若有諸小王子。得罪於王。輒内彼宮中。繋以金鎖。供給飲食・衣服・牀褥・華香・伎楽。如転輪王。無所乏少。於意云何。此諸王子。寧楽彼処不。 [経] (仏、弥勒に告げたまわく、たとえば転輪聖王の如き、別に七宝の宮室ありて、種種に荘厳し、牀帳を張設し、もろもろの[ゾウ02]幡を懸く。もしもろもろの小王子ありて罪を王に得れば、すなわちかの宮中に内(い)れて繋ぐに金鎖をもってす。飲食・衣服・牀褥・華香・妓楽を供給せんこと、転輪王のごとくして乏少するところなけん。意において云何ぞ。このもろもろの王子、むしろかの処を楽いてんや、いなや。) 経曰。仏語弥勒至楽彼処不者。述云。此第四寄喩申過有三。此初立喩反問也。JMS03-41R (経に曰く「仏語弥勒」より「楽彼処不」に至るまでは、述して云く、これは第四に喩に寄せて過を申るに三あり。これは初に喩を立てて反問するなり。)JMS03-41R [経] 対曰。不也。但種種方便。求諸大力。欲自免出。 [経] (対えて曰さく、いななり。ただ種種に方便して、もろもろの大力を求めて、自ら免出することを欲せん。) 経曰。対曰不也至欲自免出者。述云。此次弥勒順答也。JMS03-41R,41L (経に曰く「対曰不也」より「欲自免出」に至るまでは、述して云く、これは次に弥勒の順答なり。)JMS03-41R,41L [経] 仏告弥勒。此諸衆生。亦復如是。以疑惑仏智故。生彼宮殿。無有刑罰乃至一念悪事。但於五百歳中。不見三宝。不得供養修諸善本。以此為苦雖有余楽。猶不楽彼処。 [経] (仏、弥勒に告げたまわく、このもろもろの衆生もまたまたかくのごとし。仏智を疑惑するをもってのゆえに、かの宮殿に生ず。刑罰、乃至、一念の悪事あることなし。ただし五百歳の中〈うち〉において三宝を見ず。もろもろの善本を供養し修することを得ず。これをもって苦とす。余の楽ありといえども、なおし、かの処を楽わず。) 経曰。仏告弥勒至不楽彼処者。述云。此第三如来申過也。JMS03-41L (経に曰く「仏告弥勒」より「不楽彼処」に至るまでは、述して云く、これは第三の如来の、過を申ぶるなり。)JMS03-41L [経] 若此衆生。識其本罪。深自悔責。求離彼処。即得如意。往詣無量寿仏所。恭敬供養。亦得遍至無量無数諸余仏所。修諸功徳。 [経] (もしこの衆生、その本罪を識〈さと〉りて深く自ら悔責してかの処を離れんと求めば、すなわち意のごとくなることを得て、無量寿仏所に往詣して恭敬供養せん。また遍く無量無数の諸余の仏所に至ることを得て、もろもろの功徳を修せん。) 経曰。若此衆生至修諸功徳者。述云。第二勧令修捨有二。此初正勧令修令捨也。識其本罪者。識本疑惑仏五智之罪。深自悔責。即離宝宮之処故。JMS03-41L (経に曰く「若此衆生」より「修諸功徳」に至るまでは、述して云く、第二は勧めて修捨せしむるに二あり。これは初に正しく勧めて修せしめ捨てしむるなり。「識其本罪〈その本罪を識〈さと〉りて〉」とは、本〈もと〉仏の五智を疑惑せん罪を識りて、深く自ら悔責して、即ち宝宮の処を離るるが故に。)JMS03-41L [経] 弥勒当知。其有菩薩。生疑惑者。為失大利。是故応当明信諸仏無上智慧。 [経] (弥勒、当に知るべし。それ菩薩ありて疑惑を生ずる者は大利を失すとす。このゆえにまさに明らかに諸仏無上の智慧を信ずべし。) 経曰。弥勒当知至無上智慧者。述曰。此後結勧修学也。JMS03-41L (経に曰く「弥勒当知」より「無上智慧」に至るまでは、述して云く、これは後に修学を結勧するなり。)JMS03-41L [経] 弥勒菩薩。白仏言世尊。於此世界。有幾所不退菩薩。生彼仏国。 [経] (弥勒菩薩、仏に白して言さく、世尊、この世界に於て幾所の不退の菩薩ありてか、かの仏国に生ぜんと。) 経曰。弥勒菩薩至彼仏国者。述云。第四重申大菩薩往生西方。増其往生之意有二。此初問也。JMS03-41L (経に曰く「弥勒菩薩」より「彼仏国」に至るまでは、述して云く、第四に重ねて大菩薩の、西方に往生することを申べて、その往生の意を増すに二あり。これは初に問なり。)JMS03-41L [経] 仏告弥勒。於此世界。有六十七億不退菩薩。往生彼国。一一菩薩。已曾供養。無数諸仏。次如弥勒者也。諸小行菩薩。及修習少功徳者。不可称計。皆当往生。 [経] (仏、弥勒に告げたまわく、この世界に於て、六十七億の不退の菩薩ありて、かの国に往生すべし。一一の菩薩、すでにむかし無数の諸仏を供養す。次いで弥勒のごとくなる者なり。もろもろの小行の菩薩、および少功徳を修習する者、称計すべからざる、みな当に往生すべし。) 経曰。仏告弥勒至皆当往生者。述云。後答有二。此初顕娑婆菩薩生彼土也。JMS03-41L (経に曰く「仏告弥勒」より「皆当往生」に至るまでは、述して云く、後に答に二あり。これは初に娑婆の菩薩、彼の土に生ずることを顕すなり。)JMS03-41L [経] 仏告弥勒。不但我刹。諸菩薩等。往生彼国。他方仏土。亦復如是。 [経] (仏、弥勒に告げたまわく、ただ我が刹のもろもろの菩薩等のみ、かの国に往生するにあらず。他方の仏土もまたまたかくのごとし。) 経曰。仏告弥勒至亦復如是者。述云。此後乗申余方往生有三。此初総標也。JMS03-41L,42R (経に曰く「仏告弥勒」より「亦復如是」に至るまでは、述して云く、これは後に乗じて余方の往生を申ぶるに三あり。これは初に総標なり。)JMS03-41L,42R [経] 其第一仏。名曰遠照。彼有百八十億菩薩。皆当往生。其第二仏。名曰宝蔵。彼有九十億菩薩。皆当往生。其第三仏。名曰無量音。彼有二百二十億菩薩。皆当往生。其第四仏。名曰甘露味。彼有二百五十億菩薩。皆当往生。其第五仏。名曰龍勝。彼有十四億菩薩。皆当往生。其第六仏。名曰勝力。彼有万四千菩薩。皆当往生。其第七仏。名曰師子。彼有五百億菩薩。皆当往生。其第八仏。名曰離垢光。彼有八十億菩薩。皆当往生。其第九仏。名曰徳首。彼有六十億菩薩。皆当往生。其第十仏。名曰妙徳山。彼有六十億菩薩。皆当往生。其第十一仏。名曰人王。彼有十億菩薩。皆当往生。其第十二仏。名曰無上華。彼有無数不可称計諸菩薩衆。皆不退転。智慧勇猛。已曾。供養無量諸仏。於七日中。即能摂取百千億劫。大士所修堅固之法。斯等菩薩。皆当往生。其第十三仏。名曰無畏。彼有七百九十億大菩薩衆。諸小菩薩。及比丘等。不可称計。皆当往生。 [経] (その第一の仏を名づけて遠照と曰う。彼に百八十億の菩薩あり、みな当に往生すべし。その第二の仏を名づけて宝蔵と曰う。彼に九十億の菩薩あり、みな当に往生すべし。その第三の仏を名づけて無量音と曰う。彼に二百二十億の菩薩あり、みな当に往生すべし。その第四の仏を名づけて甘露味と曰う。彼に二百五十億の菩薩あり、みな当に往生すべし。その第五の仏を名づけて龍勝と曰う。彼に十四億の菩薩あり、みな当に往生すべし。その第六の仏を名づけて勝力と曰う。彼に万四千の菩薩あり、みな当に往生すべし。その第七の仏を名づけて師子と曰う。彼に五百億の菩薩あり、みな当に往生すべし。その第八の仏を名づけて離垢光と曰う。彼に八十億の菩薩あり、みな当に往生すべし。その第九の仏を名づけて徳首と曰う。彼に六十億の菩薩あり、みな当に往生すべし。その第十の仏を名づけて妙徳山と曰う。彼に六十億の菩薩あり、みな当に往生すべし。その第十一の仏を名づけて人王と曰う。彼に十億の菩薩あり、みな当に往生すべし。その第十二の仏を名づけて無上華と曰う。彼に無数不可称計のもろもろの菩薩衆あり、みな不退転にして智慧勇猛なり。すでにむかし無量の諸仏を供養し、七日の中においてすなわち能く百千億劫に大士の所修、堅固の法を摂取す。これらの菩薩、みな当に往生すべし。その第十三の仏を名づけて無畏と曰う。かしこに七百九十億の大菩薩衆、もろもろの小菩薩および比丘等の称計すべからざるあり、みな当に往生すべし。) 経曰。其第一仏至皆当往生者。述云。此次別叙也。JMS03-42R (経に曰く「其第一仏」より「皆当往生」に至るまでは、述して云く、これは次に別叙なり。)JMS03-42R [経] 仏語弥勒。不但此十四仏国中。諸菩薩等。当往生也。十方世界無量仏国。其往生者。亦復如是。甚多無数。我。但説十方諸仏名号。及菩薩比丘生彼国者。昼夜一劫。尚未能竟。我今為汝略説之耳。 [経] (仏、弥勒に語りたまわく、ただこの十四仏国の中のもろもろの菩薩等のみ、当に往生すべきにあらず。十方世界無量の仏国よりその往生する者、またまたかくのごとし。甚だ多く無数なり。我ただ十方諸仏の名号、および菩薩・比丘のかの国に生ずる者を説くこと、昼夜一劫すとも、なお未だ竟ること能わじ、我今、汝がために略してこれを説くまくのみ。) 経曰。仏語弥勒至略説之耳者。述云。此後類顕往生者多令増欣求之意也。叙十三国而通娑婆故云十四。従初阿難問仏顏。終乎如来叙諸菩薩往生之属。顕問答広説分訖。JMS03-42R (経に曰く「仏語弥勒」より「略説之耳」に至るまでは、述して云く、これは後に往生の者の多きことを類顕して、欣求の意を増せしむるなり。十三国を叙すれども、娑婆に通ずるが故に十四という。初め阿難の、仏顏を問うより、如来の諸の菩薩の往生の属を叙するに終わるまでは、問答広説分を顕し訖る。)JMS03-42R [経] 仏語弥勒。其有得聞彼仏名号。歓喜踊躍。乃至一念。当知此人。為得大利。則是具足。無上功徳。是故弥勒。設有大火。充満三千大千世界。要当過此。聞是経法。歓喜信楽。受持読誦。如説修行。所以者何。多有菩薩。欲聞此経。而不能得。若有衆生。聞此経者。於無上道。終不退転。是故応当専心信受持誦説行。 [経] (仏、弥勒に語りたまわく、それ、かの仏の名号を聞くことを得ることありて、歓喜踊躍し、乃至一念せん。当に知るべし、この人は大利を得とす。すなわちこれ無上の功徳を具足す。このゆえに弥勒、たとい大火ありて三千大千世界に充満すとも、要ず当にこれを過ぎてこの経法を聞きて、歓喜信楽し、受持読誦し、如説に修行すべし。所以は何ん。多く菩薩ありてこの経を聞かんと欲すれども得ること能わず。もし衆生ありてこの経を聞く者は、無上道において終に退転せず。この故にまさに専心に信受し持誦説行すべし。) 経曰。仏語弥勒至持誦説行者。述云。第三聞説喜行分有四。一歎経勧学。二彰説利益。三示相令信。四顕衆喜行。初又有五。此初歎聞勧行也。JMS03-42R (経に曰く「仏語弥勒」より「持誦説行」に至るまでは、述して云く、第三に聞説喜行分に四あり。一には経を歎じて学を勧め、二には説の利益を彰し、三には相を示して信ぜしむ、四には衆の喜行を顕す。初にまた五あり。これは初に聞を歎じて行を勧むるなり。)JMS03-42R [経] 仏言。吾今。為諸衆生。説此経法。令見無量寿仏。及其国土一切所有。所当為者。皆可求之。無得以我滅度之後復生疑惑。 [経] (仏言わく、吾今もろもろの衆生のためにこの経法を説きて、無量寿仏およびその国土の一切の所有を見せしむ。当に為すべきところの者はみなこれを求むべし。我が滅度の後をもってまた疑惑を生ずることを得ることなかれ。) 経曰。仏言吾今為諸衆生至復生疑惑者。述云。此第二勧物除疑也。JMS03-42R (経に曰く「仏言吾今為諸衆生」より「復生疑惑」に至るまでは、述して云く、これは第二に物を勧めて疑を除かしむるなり。)JMS03-42R [経] 当来之世。経道滅尽。我。以慈悲哀愍。特留此経。止住百歳。其有衆生。値此経者。随意所願。皆可得度。 [経] (当来の世に経道滅尽せんに、我慈悲をもって哀愍して、特〈こと〉にこの経を留めて止住すること百歳せん。それ衆生ありてこの経に値う者、意の所願に随いてみな得度すべし。) 経曰。当来之世至皆可得度者。述云。此第三歎経普済也。JMS03-42R (経に曰く「当来之世」より「皆可得度」に至るまでは、述して云く、これは第三に経の普済を歎ずるなり。)JMS03-42R 有説。釈迦正法五百年。像法千年。末法万歳。一切皆過故云滅尽。法雖滅已。仏以慈悲憐苦衆生。独留此経百歳済度。此恐不然。非唯法住違諸聖教。事亦未尽故。JMS03-42R,42L (有るが説かく。釈迦の正法五百年、像法千年、末法万歳。一切皆過ぐるが故に「滅尽」という。法は滅し已ると雖ども、仏は慈悲を以て苦の衆生を憐みて、独りこの経を留めて百歳済度すと。これ恐らくは然らず。唯『法住』、諸の聖教に違するのみに非ず。事もまた未尽なるが故に。)JMS03-42R,42L 今依法住記云。仏滅度時。以無上法付嘱十六大阿羅漢。并諸眷属。令其護持使不滅没。及勅其身与諸施主作真福田。令彼施者得大果報。所謂賓頭盧等。JMS03-42L (今『法住記』に依るに云く「仏滅度の時、無上法を以て十六大阿羅漢、并びに諸眷属に付嘱して、それをして護持せしめ、滅没せざらしめずして、及び勅して、その身を諸の施主の与〈ため〉に真福田と作りて、彼の施者をして大果報を得しめよと」。)JMS03-42L 所謂賓頭盧等。如是十六大阿羅漢。護持正法饒益有情。至此南贍部州。人寿極長至於十歳。刀兵劫起争相誅戮。仏法爾時当暫滅没。JMS03-42L (所謂る賓頭盧等、「かくの如きの十六大阿羅漢は、正法を護持して、有情を饒益して、この南贍部州に至りて、人寿極長より十歳に至りて、刀兵劫起こり争いて、相い誅戮す。仏法は爾の時に当に暫く滅没すべし」。JMS03-42L 刀兵劫後。人寿漸増至百歳位。此洲人等厭前刀兵残害苦悩。復楽修善。時此十六大阿羅漢。与諸眷属。復来人中。称揚顕説無上正法。度無量衆。令其出家。為諸有情作饒益事。如是乃至此洲人寿六万歳時。無上正法流行世間。熾然不息。JMS03-42L,43R (「刀兵劫の後、人寿漸く増して百歳に至る位、この洲の人等、前の刀兵の残害の苦悩を厭いて、また修善を楽う。時にこの十六大阿羅漢と諸の眷属と、また人中に来りて、無上の正法を称揚し顕説して、無量の衆を度して、それをして出家せしめ、諸の有情の為に饒益の事を作さん。かくの如く乃至、この洲の人寿六万歳の時、無上の正法、世間に流行して、熾然として息まず」。JMS03-42L,43R 後至人寿七万歳時。無上正法方永滅没。時此十六大阿羅漢。与諸眷属。於此洲地倶来集会。以神通力。用諸七宝。造[ソツ01]堵波。厳麗高広。釈迦如来所有遺身都集其内。JMS03-43R (「後、人寿七万歳の時に至りて、無上の正法、方に永く滅没す。時にこの十六大阿羅漢と諸の眷属と、この洲地に於いて倶に来りて集会して、神通力を以て、諸の七宝を用いて[ソツ01]堵波を造り、厳麗高広なり。釈迦如来の所有の遺身、都てその内に集む」。)JMS03-43R 爾時十六大阿羅漢。与諸眷属。遶[ソツ01]堵波。以香華持用。供養恭敬讃歎遶百千匝。瞻仰礼已。倶昇虚空向[ソツ01]堵波。作如是言。敬礼世尊釈迦如来応正等覚。我受教勅。護持正法。及与天人作諸饒益。法蔵已没。有縁已周。今辞滅度。説是語已。一時倶入無余涅槃。聖先定願力火起焚身。如灯炎滅。骸骨無遺。時[ソツ01]堵波便陥入地。至金輪際方乃停住。JMS03-43R,43L (「爾の時、十六大阿羅漢と諸眷属と、[ソツ01]堵波を遶りて、香華を以て持用いて供養し恭敬し讃歎して、遶ること百千匝し、瞻仰し礼し已りて倶に虚空に昇り、[ソツ01]堵波に向いて、かくの如き言を作さく。世尊釈迦如来応正等覚を敬礼したてまつる。我、教勅を受けて、正法を護持し、天人に及与して、諸の饒益を作す。法蔵已に没し、有縁已に周し、今辞して滅度すと。この語を説き已りて、一時に倶に無余涅槃に入る。聖、先ず定願力をもって火起こして身を焚し、灯炎の滅するが如く、骸骨遺ることなし。時に[ソツ01]堵波は便ち地に陥入し、金輪際に至りて方に乃ち停住す」。)JMS03-43R,43L 爾時世尊釈迦牟尼無上正法。於此三千大千世界永滅不現。従此無間此仏土中。有七万倶胝独覚。一時出現。至人寿量八万歳時。独覚聖衆復皆滅没。次後弥勒如来出世。JMS03-43L (「爾の時、世尊釈迦牟尼の無上正法はこの三千大千世界に於いて永く滅して現ぜず。これより無間にこの仏土の中に七万倶胝の独覚ありて、一時に出現す。人寿の量八万歳に至る時、独覚聖衆また皆滅没す。次いで後に弥勒如来出世す」と。)JMS03-43L 以此言之。当人寿七万歳時。無上正法方永滅没故。云経道滅尽。十六大聖取滅度時[ソツ01]堵波便陥入地。JMS03-43L (これを以てこれを言わば、人寿七万歳の時に当たりて、無上正法は方に永く滅没するが故に「経道滅尽」という。十六大聖、滅度を取る時、[ソツ01]堵波は便ち地に陥入す。)JMS03-43L 特者独也。大涅槃経広顕仏性。聖教中深。逐聖人而先没。此経唯開浄土。令人求生。済凡中之要。故独留百歳。機宜既異。没滅前後不可致怪。所願皆得者。即留之利益也。法滅尽後聞尚獲利往生浄土。況亦今聞者矣。JMS03-43L,44R (「特」は独なり。『大涅槃経』は広く仏性を顕す。聖教中の深なり。聖人を逐いて先に没す。この経は唯、浄土を開きて、人をして生を求めしむ。済凡の中の要なり。故に独り留ること百歳なり。機宜既に異なり。没滅の前後、怪を致すべからず。「所願皆得〈意の所願に随いてみな得度すべし〉」とは、即ち留の利益なり。法滅尽の後すら聞きて、なお利を獲て浄土に往生す。況んやまた今聞かん者をや。)JMS03-43L,44R [経] 仏語弥勒。如来興世。難値難見。諸仏経道。難得難聞。菩薩勝法。諸波羅蜜。得聞亦難。遇善知識。聞法能行。此亦為難。若聞斯経。信楽受持。難中之難。無過此難。 [経] (仏、弥勒に語りたまわく、如来の興世、値い難く見たてまつること難し。諸仏の経道、得難く聞き難し。菩薩の勝法、諸波羅蜜、聞くことを得ることまた難し。善知識に遇い、法を聞き能く行ずること、これまた難しとす。もしこの経を聞きて信楽受持すること、難きが中に難し、これに過ぐる難なし。) 経曰。是仏語弥勒至無過此難者。述云。此第四歎聞而令敬重也。JMS03-44R (経に曰く「是仏語弥勒」より「無過此難」に至るまでは、述して云く、これは第四に聞を歎じて敬重せしむるなり。)JMS03-44R [経] 是故我法。如是作。如是説。如是教。応当信順。如法修行。 [経] (このゆえに我が法、かくのごとく作し、かくのごとく説き、かくのごとく教う。まさに信順して法のごとく修行すべし。) 経曰。是故我法至如法修行者。述云。此第五結勧修学也。我法者即此経也。如是作者即此経説弥陀随願修行成身成智也。如是説者上為衆生之所説也。如是教者前教人令往生也。JMS03-44R (経に曰く「是故我法」より「如法修行」に至るまでは、述して云く、これは第五に修学を結勧するなり。「我法」は即ちこれ経なり。「如是作」は即ちこの経に弥陀は願に随いて修行して身を成じ智を成ずることを説くなり。「如是説」は上に衆生の為に説く所なり。「如是教」は前に人を教えて往生せしむるなり。)JMS03-44R [経] 爾時世尊。説此経法。無量衆生。皆発無上正覚之心。 [経] (その時に世尊、この経法を説きたまうに、無量の衆生、みな無上正覚の心を発す。) 経曰。爾時世尊至正覚之心者。述云。第二彰説利益有三。此初発願益也。JMS03-44R (経に曰く「爾時世尊」より「正覚之心」に至るまでは、述して云く、第二に説の利益を彰くに三あり。これは初に発願の益なり。)JMS03-44R [経] 万二千那由他人。得清浄法眼。二十二億諸天・人民。得阿那含果。八十万比丘。漏尽意解。 [経] (万二千那由他人、清浄法眼を得、二十二億の諸天・人民、阿那含果を得。八十万の比丘、漏尽意解す。) 経曰。万二千那由他人至漏尽意解者。述云。此次声聞益也。法眼浄者即預流果也。漏尽者障尽。意解者智満。衆聞此方穢悪可厭故得声聞之果。JMS03-44R,44L (経に曰く「万二千那由他人」より「漏尽意解」に至るまでは、述して云く、これは次に声聞の益なり。「法眼浄」は即ち預流果なり。「漏尽」は障尽くすなり。「意解」は智満なり。衆、この方穢悪は厭うべしと聞くが故に声聞の果を得。)JMS03-44R,44L [経] 四十億菩薩。得不退転。以弘誓功徳。而自荘厳。於将来世。当成正覚。 [経] (四十億の菩薩、不退転を得。弘誓の功徳をもって自ら荘厳して、将来世において当に正覚を成るべし。) 経曰。四十億菩薩至当成正覚者。述云。此後菩薩利也。聞弥陀仏成徳広大故。得不退転。聞此土多悪。誓欲済度故。以弘誓徳而自荘厳。JMS03-44L (経に曰く「四十億菩薩」より「当成正覚」に至るまでは、述して云く、これは後に菩薩の利なり。弥陀仏の成徳広大なるを聞くが故に「得不退転〈不退転を得〉」。この土の多悪きことを聞きて、誓いて済度せんと欲するが故に「以弘誓徳而自荘厳〈弘誓の功徳を以て、自ら荘厳す 〉」。)JMS03-44L [経] 爾時三千大千世界。六種震動。大光普照十方国土。百千音楽。自然而作。無量妙華。紛紛而降。 [経] (その時に三千大千世界、六種に震動す。大光普く十方国土を照らす。百千の音楽、自然にして作し、無量の妙華、粉粉として降る。) 経曰。爾時三千至芬芬而降者。述云。此第三示相令信也。芬芬者乱墜之状也。JMS03-44L (経に曰く「爾時三千」より「芬芬而降」に至るまでは、述して云く、これは第三に相を示して信ぜしむるなり。「芬芬」は乱墜の状なり。)JMS03-44L [経] 仏説経已。弥勒菩薩。及十方来諸菩薩衆。長老阿難・諸大声聞・一切大衆。聞仏所説。靡不歓喜。 [経] (仏、経を説きたまうこと已りて、弥勒菩薩および十方来の諸菩薩衆、長老阿難、諸大声聞、一切大衆、仏の所説を聞きたまえて歓喜せずということなし。) 経曰。仏説経已至靡不歓喜者。述云。此第四大衆喜行也。JMS03-44L (経に曰く「仏説経已」より「靡不歓喜」に至るまでは、述して云く、これは第四に大衆の喜行なり。)JMS03-44L 無量寿経連義述文賛巻下 JMS03-44L 元禄十二年巳卯十二月日 帝畿書肆 井上忠兵衛蔵版 JMS03-44L |