3.星の見え方
 
 私たちは、全天で約8,600個にものぼる星々を肉眼で見ることができます。しかし、星の数は暗いほど多くなっていきます。カメラのシャッターを開けたままにしておきますと、その露出時間が長いほど沢山の星が写真に写ることからもお分かりいただけるかと思います。
 
 そんなにも沢山の星があるのですから、中には複数の星が同じ方向に見えてしまうこともあります。実際に同じ場所に複数の星が存在していることもありますが、それぞれの星までの距離はまちまちで、たまたま地球がある方角から見ると重なって見えるケースもあります。このような星を「重星」といいます。
 
 重星の中で一番お馴染みなのは、はくちょう座のβ星アルビレオかと思います。ちょうど白鳥のくちばしの部分にある星で、緑とオレンジの2つの星が並んで見えるのが小さな双眼鏡でもハッキリ分かります。もう1つ、有名なのがおおぐま座のζ星、北斗七星のひしゃくの先端から2つ目に当たるミザールいう星です。ミザール自身は2.4等の明るい星なのですが、目を凝らして見てみるとすぐ横に4.2等の80番星(アルコル)がくっついているのが分かります。その昔、アラビアで視力検査に使われたというくらいで、視力1.0あれば肉眼での観測も可能です。この両星の角距離(見かけの距離)は11'50"なので、望遠鏡で見ると驚くほど離れて見えます。それどころか、ミザールのそば(角距離で14.4")にもう一つの別の星がくっついて見えてきます。これは、ミザールBと呼ばれていまして、主星であるミザールAの周囲を回っている「お伴」の星なのです。ミザールアルコルは実距離で3光年離れていてたまたま同じ方角に見えるだけですが、ミザールAとBは実際に同じところにあって互いの共通重心の周りを回り合っています。このような星を「連星」といいます。
 
 また、ミザールA分光器にかけますと、2種類の異なるスペクトルが現れます。これの意味するところは、ミザールA自身は非常に近接した2つの星が回り合っているけれども、その距離があまりに近いため、地球からではどんな大きな望遠鏡を使っても2つに分離できない連星だということです。このような星を特に「分光連星」といいます。これに対して先ほどのミザールAとBのように実際に観測できる連星は「実視連星」と呼ばれます。
 
 余談になりますが、その後の研究の結果、ミザールAだけでなく、実はミザールBも、そしてアルコルまでもが分光連星になっていることが分かりました。学者の中には3光年離れてはいても、アルコルももしかしたらミザールの長周期の連星なのではないかと言い出す人も出てきていて、さらに研究が進むのを楽しみにしたいと思います。


 
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