彼女は
詞・曲/下山田勝彦
ロッキング=チェアーに揺られ乍ら
彼女は編み物をしていた それは
この冬生まれた二人目の孫への贈り物
思えばいつの間に時は流れ
すっかり年老いたけれど 何故か
あの頃のことは何もかも忘れず覚えてる
製糸工場の繭を茹でる音に
彼の人の打つ金槌の音に
抱かれた時の彼の人の香りに
毎日流れたラジオの声に...
彼の人の残した想い出は
小さな小さな生命だけ そして
彼女は夢を託した せめてもの慰みに
只管(ひたすら)働いた 一人きりで
働く日々だけを過ごした それは
自分と息子と彼の人の幸福のためにだけ
こうして今年老いた後で
彼女は一人溜息をついた
「過ごしてきたわ 貴方の分までも
も一度逢いましょ そのうちいつか」
ロッキング=チェアーに揺られ乍ら
彼女は編み物をしていた それは
この冬生まれた二人目の孫への贈り物
もどる