bX119
1993年大映『まあだだよ』
監督・脚本:黒澤明
出演:松村達雄・香川京子・所ジョージ・井川比佐志

PIBD-1079
本篇134分+特典125分
片面・2層ディスク 2枚組
ハイビジョン・ニューマスター仕様
16:9スクイーズ(ビスタ)収録
チャプター付き
日本語字幕収録
副音声解説収録
メイキング(2種)収録
静止画資料(宣材・スチール・画コンテ)
予告編&TVスポット収録
解説書(10p)付き
ピクチャー・ディスク
 黒澤明自らが『内田百闡S集』に収録された「まあだかい」「ノラや」「新方丈記」等の多くの随筆を参照しながら、内田百閧ニその門下生の交流を年代記の趣向で巧みに組み合わせて脚本を執筆。
 百關謳カの誕生日を祝うため、門下生たちが始めた“摩阿陀会”のエピソ−ドを挟み込んで、ときにユーモラスに、ときにしみじみと、紡ぎだすようにして師弟愛を描いていく。
 戦災で焼かれる百關謳カの家は、家の前の坂道を含め、東宝・砧スタジオに建てられ、当時の時代色を再現。黒澤自身が好きだった唱歌もふんだんに盛り込まれ、複数キャメラで撮影された“第一回摩阿陀会”の「オイチニの薬屋さん」の場面は楽しさに溢れた名場面である。
 また最新の技術も採用され、ラストの夢の夕焼けの場面は、バックスクリーンというコンピュータ制御の技術を使い、ハイビジョンで撮影された。
 百關謳カとその門下生の交流がそのまま黒澤組を象徴する本作は、数ある黒澤作品の中で最もノスタルジックで、最も心情吐露的な、愛すべき作品と言えよう。
あらすじ
昭和一八年の春。先生は生徒たちへ、作家活動に専念するため、学校を去ることを告げた。生徒たちは『仰げば尊し』を歌い敬愛する先生を送る。退職後に引っ越した家にも、高山、甘木、桐山、沢村ら門下生たちが遊びにやって来る。といっても皆、中年のいい大人なのだが。ある日、先生の家で還暦の祝宴が開かれた。先生と奥さん、門下生たちの馬鹿鍋を囲みながらの楽しい会話が弾むが、戦時下のこと、空襲で水をさされてしまう。先生の家は空襲で焼けてしまい、知人の厚意で貸してもらった、三畳一間の堀建小屋暮らしを余儀なくされる。先生と奥さんは狭いこの小屋で夏、秋、冬、春……三年半を暮らす。昭和二一年の晩春、門下生たちの画策で第一回『摩阿陀会』が開かれた。元気な先生はなかなか死なない、そこを洒落で死ぬのは『まあだかい?』というわけだ。吉例となっていくビールを飲み乾して先生は『まあだだよ!』と答える。宴会は盛り上がり、混乱の極致である。門下生たちの尽力で新しい家ができた。先生はお礼の申しようもないと感謝し、幸せそうである。猫を抱いた奥さんも嬉しそうだ。ある日、先生もお気に入りの猫、ノラがふいに失踪する。以来先生は哀しみにくれる毎日を過ごす。ノラを捜す周囲の人たちの善意に、先生の胸は感激でいっぱいになった。昭和三七年、晩春。第十七回の『摩阿陀会』。先生の髪は白くなり、門下生たちは子供や孫を同伴しての出席である。先生は小さな子供たちへ言葉を贈る。『みんな、自分が本当に好きなものを見つけて下さい……』。途中で体調をくずした先生は、門下生に付き添われて家へ帰る。布団の中で眠る先生は、なんだか楽しそうな顔をしている。先生は夢を見ているらしい。