振動理論と石場(石端)建て

こんにゃくのような家であり、ただし豆腐であってはいけない

建物を『固める=強い』という感覚は私達人間はすぐにわかりやすい。しかしながらこんにゃくの様な家が本当は強いんだということを理解するのは少し時間がかかる。それはこんにゃくの様でであっても決して豆腐ではない。エネルギー不変の法則という絶対命題が存在しています。例えば家を30度までゆがめるだけのエネルギーが存在した時、全くゆがまない家を造ったとすれば、家が左右に激しく動きます。しかしながら全く弱点のない家など、現場で組み立てる以上絶対に不可能。出来るとしたら現場におけるプラスチック一体成型で建てる以外に方法は見当たりません。これを不可能とすれば、どこかでゆがみが起こります。
30度ゆがめるエネルギーは、一点でも弱い箇所があるとそこにエネルギーが集中し、そこから一気に倒壊してしまいます。ですが、30度ゆがめるエネルギーをより多い箇所に何十何百のパーツで分散してわざと潰れやすいような仕組みを造れば、エネルギーも分散され倒壊しにくくなります。少しずつ接点を壊すことによってエネルギーを分散していくシステム、地震の時に構造材が「みしみし」音を立てる部分を平均分散的に配置されること。つまり、しなりあるこんにゃくが震動台の上に乗っているような建物を目指す。このシステムに向いているのが正に『石場(石端)建て構法』であり、全体戦で戦えるようなシステムが、足固め構法であるといえます。従って振動理論的立場、難しい言葉でいいますと、限界耐力計算変位増分法的にいって、地震に強い家とは、こんにゃくのような家であり、石場(石端)建てがそれに向いているということです。
                                   --- ただし豆腐であってはいけない ---
さらにもう一筆申し上げると、伝統構法の家とは限界耐力変位増分法的にいうと、最初は強くないが変形が大きくなるとさらに反力を増してくる。ないしは持続する型(木組みの型あるいは土壁等の耐震要素)の復元力特性をもったものばかりを集めて来て家を造ることであり、それをもって『伝統構法の家』だというのが正しい考え方であり、これを満足するのは石場(石端)建て足固め構法で竹小舞土壁式の家でしかこのことはどう考えても成立しないと考えられる。相撲でいいますと、立会い土俵際まで相手に押し込まれるが、俵に足がかかったとたん「うっちゃり腰」で耐える。そんな力士のような耐力をもつものばかりで家を建てる。決して相撲取りの大鵬関と柏戸関を混在させて建てるべきでないということです。

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