第2卷 もくじ        更新日97/02/09

写真は私がシステム設計をして、劇場「飛天」に
納入したコンピューター制御の音声調整卓ミキシ
ング操作が、記憶出来て1ヶ月に及ぶ公演でもボ
タン1つで毎回ベストの状態で再現出来る。

 レベルフロチャート
 リアメンテ
 パンケーキ
 水中のサウンド
 アルニコとフェライト
 スピーカの端子
 スピーカシステムのマルチ駆動はいつ頃から始まったのか

 アルテックランシングのスピーカの特長
 やまちゃんの体験記
   しくニューサウンドを聴こう会に参加し
 ダンピングファクタ
 やまちゃんヘリコ搭乗記
 


レベルフロチャート

 サウンドシステムの設計、ならびに施工が終わってしまった後で、サウンドシステム全体のノイズが多いので、何とか対策ができないか、という話をよく聞きます。
このような問題が発生することを、あらかじめ予測するために<レベルフロチャート>という考え方があります。
ミキシングコンソールの入力と出力の間のレベル変化を、フロチャートにしてカタログに掲載しているメーカもありますが、ほとんどの資料では見たこともありません。
サウンドシステムの<S/N値>を最良の条件に設定するには、ラウドスピーカからシステムの逆向きにレベルの流れを書いていき、パワーアンププロセッシング機器ミキシングコンソールのレベルを、決定していけばよいのです。
 アルテックランシングは、<レベルフロチャート>を記入していくことができる製図用紙まで用意していました。
 詳細については、弊社サウンドシステム資料集内の<サウンドシステムに必要な設備その基本的な考え方>を参照して下さい。

やまちゃんの見解

 私達が、音声機器の設計をする時、アンプの構成をいかにすれば、最良の性能が出るのか考慮します。
 当然レベルダイヤ(レベルフローチャート)は、重要なファクターです。
昔は、製作する機器の承認図をユーザー(注文者)に出すとき、このレベルダイヤを添付していた時もありました。
 しかし最近は、入力と出力のレベルを記入するだけの様になっています。
 メーカーとして、今後レベルダイヤの資料を取説(取扱説明書)に添付するようにしましょう。

 

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リアメンテ

サウンドシステムでラウドスピーカを使う場合に、検討を加える要素として、<十分な音圧を確保できるのか><聞き手全体に均等な音圧をサービスできるのか><明瞭度を確保できるのか>
という項目がありますが、もう一つ大事なことは、ラウドスピーカが壊れた場合に迅速かつ楽にメンテナンスができるのか、ということについても考えておかなくてはなりません。
ある劇場のアンプ室のラック群
背面に回って機器の保守が出来る

特にプロセニアムスピーカシステムに使われているラウドスピーカはキャットウォークの前に取り付けられていることが多くメンテナンスを、ウラドスピーカの後方からおこなわなくてはならないことが、多いのではないでしょうか。
 従ってラウドスピーカの後方からメンテナンスできる<リアメンテ>の構造になっている製品を使ったほうが、保守性能が高いということになるのです。
 アルテックランシングの一部の製品を除いて固定設備で使う場合の保守作業を考慮して、<リアメンテ>に対応できる構造となっています。


やまちゃんの感想

 スピーカ以外の音響設備を納入する時、設計段階で、平面図に機器の配置をプロットすると、
予想以上にリアメンテが出来ない場合があります。
部屋のスペースが許す限りリアメンテが出来ると、工期短縮にもなるのに!


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パンケーキ

 でき立てのパンケーキにバターをのせ、蜂蜜をいっぱいかけて食べるとおいしいものです。
アルテックランシングの<755E 8 ラウドスピーカ>が、パンケーキと呼ばれていました。
昔のカタログを見るとはっきりと<パンケーキ(PANCAKE)>と書かれています。 奥行きがわずか<2-1/4 (約57 )>しかないために、その形がパンケーキに見えたところから、名付けられたものと思います。
 JBLの<LE8T>と肩を並べた評価を得ていて、琴の演奏で<絹弦とナイロン弦の違いが分かるラウドスピーカ>と言われていました。
 最近古いパンケーキを手に入れて聞いています。 まだ食中毒にはなっていませんが、このサウンドの魅力に改めて惚れこんでいます。
 どこかでパンケーキを使っている方で、ご用が済んだ方は是非とも私宛に一方下さい。
 最近パンケーキを使っているという方が、多くいらっしゃることがわかりました。
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水中のサウンド

 シンクロナイズドスイミングが一般的になり、高等学校のプールでも水中スピーカを標準装備することが多くなってきています。
 マークフォーオーディオの傘下の会社であるUSIでも、昔から<UW30水中スピーカ>を販売しておりアメリカ体育協会の認定商品となっています。
 潜水艦のソナー研究を目的とした無響水槽があるのですが、軍需機密のため周波数測定ができません。USIでも正式な風波数測定はしていません。
 私がプールに、水中マイクロホンを入れて測定した限りでは、かなり広い帯域が再生されてはいるのですが、実際にプールの中に入ってサウンドを聞くと、クリスタルイヤフォーンで聞いているようなシャカシャカとした、高い周波数帯域しか聞こえません。
 耳道の中の空気が、水で圧縮されるために低い周波数帯域が、聞こえないのだと考えます。
 しかし<UW30水中スピーカ>を体に抱くと、低い周波数まで聞こえるのは、骨格を通じてサウンドが聞こえるからでしょう。最近は<UW30水中スピーカ>は、本来の目的以外の使い方がなされています。
 例えば<養殖魚に対する給餌装置>これは従来の生け簀を使った魚の養殖ではなく、大きな湾を締め切って大規模養殖をするものです。
 時間がくると魚が好きな信号を<UW30水中スピーカ>から出して、魚を呼び集めるというシステムにも使われています。
 酒味噌醤油の醸造にも<UW30水中スピーカ>が使われています。貯蔵タンクの中に、ラウドスピーカを入れて四六時中サウンドを出して微妙な振動を与えると、醸造時間を短縮できるそうです。 まだまだ<UW30水中スピーカ>の用途は広がりそうです。
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アルニコとフェライト

 ラウドスピーカのマグネットは、音響信号をサウンドに変える大きな働きをします。
ベトナム戦争の最盛期に、軍事物資であるコバルトの値段が高騰して、コスト的にラウドスピーカのマグネットとして<アルニコ>を使うことが、できなくなりました。
 その代替え?として<フェライトマグネット>が、使われたのですがラウドスピーカの音質が悪くなると言って、一時<民生オーディオ市場>が冷め切ってしまったことがあります。
 確かに<フェライト>の転換時に、サウンドのイメージを崩してしまったメーカも幾つかありますが、一般の方が大騒ぎをするほど、性能が変わってしまったとは思いません。
 なにしろラウドスピーカに、永久磁石が使われ始めた時代には、全て<フェライトマグネット>が使われており、その後安い磁性体材料として<アルニコマグネット>に変わっていったのですから.....
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** 【スピーカの端子

 ウェスタンエレクトリックの時代には、コンプレッションドライバの端子は、<L1,L2>と表示されていました。 <端子L1>は、マグネット内部で一番遠いボイスコイルの巻端に行っていました。
 しかし<端子L2>は、マグネット外側のボイスコイルの最終巻端に行っていました。 そして<L1>に<+電圧>かけた場合には、ボイスコイルをギャップの外側に押し出し、マグネットから遠ざける方向に向かわせました。
 ペーパーコーンである低域ドライバでは、マグネットとギャップはコーン紙の後ろ側にあります。ボイスコイルをマグネットの外側に押すことによって圧縮波を作りながら、スピーカエンクロージャの前にいる聞き手の方向にそれを押し出します。
 高域を再生するコンプレッションドライバでは、アルミニウム製のドーム型ダイアフラムは、マグネットの後ろにあり音は、実際にマグネット内部の穴を通って動いています。これらのドライバのマグネットの外側の方向にボイスコイルを押すと、希薄波を作りながらホーンの前にいる聞き手から離れる方向に動きます。
 もっと古い時代の高域そして低域のドライバの<L1>と<L2>における電気的極性は、それ故同じ<運動極性>を作りますが、聞き手の位置において逆の音響特性を作ることになるでしょう。
 それをどのように解釈をして使うかは、<L1,L2>とマークされている端子を持つコンポーネントを使用している全ての人々によって、選択されるべきでしょう。
 アルテックランシングは、ウェスタンエレクトリックからこの配列を受け継ぎ、その考え方を変え始めたのは1960年代の後半になってからでした。
 その時点では、アルテックランシングは一つの端子を赤にマーキングし始めました。それは赤い端子に<+電圧>をかけると、聞き手の方向に圧縮波を常に作り出すようにしたことです。この変換が進む過渡期の数年間は、端子を赤と黒に色づけするのと同時に<L1L2>とマークが打たれていました。
 今日このシステムにおけるアルテックランシングの任務は、サウンドリンフォースメントで使用されるコンポーネントの仕様書のために、AES(Audio Engineering Society)の新基準をまとめることです。AES RECOMMENDED PRACTICEの項目<2.1.5(高域ドライバ用)>と項目<4.1.5(低域ドライバ用)>では、次のように定義されています。
 電気的端子色づけによる分類機器の極性の表記。標準の実行にあたっては端子は赤と黒にし赤端子に<+電圧>をかけるときその外側に正方向の圧力を発生するようにすること。
 私達は、オーディオシステムの極性を、あまり重要でないと考えてきました。スピーカシステムが同じ適切な音響極性となっていればよいのではないか、と考えていたのです。
 しかし今日全てのスピーカの極性を反転することで、システムの聴感を変えるという全く違った高度な判別力のある聞き方で、サウンドを評価するようになってきました。
 極性を変えると、瞬時にサウンドが変化したことがわかりますが、その評価は漠然としており、言葉で説明することはできません。多くの聞き手は、一つの極性を他に転換することによる強烈な印象を、言葉で表すことでしょう。
 何故そうなるのでしょうか?自然界では、多くの衝撃的なサウンドが圧縮波なのです。鉄砲の発射音シンバルの叩き音その他。長く続いている話では、付加的子音<t,p,b>と擦過子音<f,s>は唇と舌を通って吐き出す空気によって、作り出されます。
 耳を通過する全てのサウンドは、空気の瞬間的な希薄化圧縮のどちらかを聞いているということで、後者の自然さを好むことが多いのです。
 長い時間にわたって高度な聞き方をするスピーカの使用者は、全体のシステムで極性を反転して聞くテストが有効であることに気づくことでしょう。
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* 【スピーカシステムのマルチ駆動はいつ頃から始まったのか

 ディバイディングネットワークを使わずにマルチ駆動をする試みは、1933年に既に始まっていました。マルチ駆動にすることにより、高域と低域のスペクトラムを個別に駆動することになるため、ラウドスピーカの内部変調を極端に減らすことができます。
 これはパッシブタイプのネットワークが、悪いといっているわけではなくより安いコストで、サウンドシステムを組めるということです。
 現にアルテックランシングの604シリーズを使った製品として、オーディオテクニックス社の<ビッグレッド(BIG RED) システム>ウーレイ社の<タイムアライン(TIME ALIGN)システム>は、ネットワークに空芯コイルを使うなど、かなり手の込んだ仕上げのネットワークを使用しており、アルテックランシングのオリジナル製品とはまた別の好評を博していました。
 アルテックランシングでも、1台のパワーアンプにクロスオーバ周波数を変更できる<チャンネルディバイダ>と低域と高域の<パワーアンプ>を備えた製品が幾つか販売されていました。
 スピーカシステムの中に組み込み可能な<1224バイアンプ><100>の低域用パワーアンプと<50>の高域用パワーアンプが入ってラックに組み込める<1609Aバイアンプ>の2種類です。 ミキシングコンソールの出力に、チャンネルディバイダを組み込んだ【1220AC】のような製品もありました。
 今はその上に低域と高域用の電源が、別々になっている製品もあります。 現在はフィルタ特性やカーブを、自由に変えられる<ディジタルチャンネルディバイダ>が主流となりつつあり、アルテックランシングでも<DTSスピーカシステム>を使う場合に、パラメータ設定の必要がない<4024Aディジタルプロセッサ>が発売されました。
 あるホールでネットワークで使われていた<A7スピーカシステム>を、<4024Aディジタルプロセッサ>を使ってマルチ駆動をしたら、サウンドが見違えるように変わったという報告も来ています。
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アルテックランシングのスピーカの特長

 アルテックランシングのスピーカシステムの特長として、<高い能率>を持っていることがあげられます。
 ラウドスピーカが高い能率を持っているということは、ラウドスピーカに大きなパワーを入れなくても、大きな音響出力を出すことができることを意味しており、小さなパワーしか入れなくても大きなパワーを入れたときと、変わらないサウンドを出すことができるということです。
 言い換えれば、<サウンドの再生忠実度>が優れているという事です。
 最近パワーアンプの能力が上がって、かつ価格が安くなってきたために、スピーカシステムに大きなパワーを加えれて大きな音量を得れば、良いのではないかという話を聞きますが、これは<音量を出す>ことと<表現力を出す>ことが違うということが、よくわかっていない方の論理で私としては、スピーカシステムは絶対に能率が良くなくてはならないと確信をしています。
 確かにパワーを思いっきりつっこまないと、その能力を出せないスピーカシステムが最近は、多くなっているというのも事実なのですが.........
 特に音源がディジタルの時代になってきて、ダイナミックレンジが大変に広くなってくると、小さな音量でもまた大きな音量でも同じ音質のサウンドが出せる能力を、スピーカシステムに求められるのですが、そのためにも<高い能率>を持ったスピーカシステムが、必要となってきているのです。
  ディジタル方式のサウンドシステムを研究している方から、能率が高いサウンドシステムが欲しいという要望もよく聞くようになりました。

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やまちゃんの体験記
楽しくニューサウンドを聴こう会に参加して

 何年か前の2月3日の節分の日、大阪吹田市のホールで、サウンドエンジニア(音響技術者)ばかり集めてニューサウンドを聴く催しがありました。
 我々が言うニューサウンドとは、ロックとか音楽ジャンルのニューサウンドとは違って、ホール等拡声用スピーカ(SRシステムSound Rainforcement と言う。以前はPAシステムと言っていた)のニューサウンド、つまり新しいコンセプトで設計されたスピーカの音を聴く催しでした。
 内外のプロ用スピーカ10機種を次々と切り換えて試聴するのです。ソースは、各スピーカメーカ独自のCDソースの他、共通ソースとしてナレーションや、実際のライブバンド(生バンドの演奏)での試聴と、盛り沢山の聴き比べになりました。
各社独自のCDソースでは、それぞれ自社の特徴が良く出るものを使用するためスピーカの違いによる音の善し悪しは、はっきりしませんが共通ソースで比べるとその違いは、大変よくわかります。
 中でもライブバンドによる同じ曲目を聴き比べるとその差は、歴然とわかります。ライブでの女性ジャズボーカルでは、ボーカルの帯域の音の出方が非常に顕著にわかりました。

 最近のプロ用スピーカのニューサウンドとは?
 最近の電子技術の進歩には、目を見張るものがあります。おもちゃからロケットに至るまで、電子技術(コンピュータ技術を含む)の進歩なしでは、考えられなくなっています。しかし事スピーカに関しては、以前からの変化は、あまり無かったのですが、ここ2,3年前からニューコンセプトのシステムが出現してきました。
 限られた大きさで最大限のハイパワーを出すスピーカシステム、最新の音響理論に基づき設計されたスピーカシステムです。それは、今までのチャンネルデバイダーに加えて位相特性を改善するためのタイムディレィやリミッターを入れたプロセッサーユニットを使用してスピーカを最大限、最適使用するシステムです。
したがってこの大きさのスピーカ(ボックスの物理的大きさ)で、こんなに大きな音がでるのかと不思議に思えるのです。
反面我々機器設備設計施工業者にとっては、設置後の音の調整(チューニングと言う)が大変難しく満足できる音にするには、チューニングに大変時間と根気がいる事になってきました。
 そこで最近のコンピュータとそのソフトの発達は、この職人芸的作業を、より早くより膨大なテストデータを解析、予測してくれる様になり、パソコンレベルでのシュミレーションは、設備設計をする場合の大変重要な道具になってきました。
 ホールの形をパソコンに入力し、スピーカシステムをどの場所にどのくらい設置すれば良いかを、客席での周波数特性や音圧分布をグラフィックに表示し最適システムが組めるまで何度でもシュミレーションできるのです。
 膨大な計算データを瞬時に出してくれるコンピュータですが、最終的には、人がその音を聴いて良いか悪いかの判断になってしまいます。
好みの音、好きな音は、人の感覚や気分に左右される部分がまだかなり多いようです。

 なお参考までに、この日の試聴したスピーカをあげておきます。
 1 APOGEE SOUND AE-5 2WAY LOW 30cm HIGH 2.5cm 入力400W 1.6KW AE-10 SUB LOW 38cm 入力800W 3.2KW 専用プロセッサー使用
 2 COMMUNITY RS880 3WAY 入力400W 1KW VBS415 入力800w 2KW (方式)
 3 TOA SR-1F 2WAY 入力120W 360W SR-L1 入力300W 900W 方式
 4 d&b audiotechnik F1220 2WAY B1
 5 stage accompeny SA4826 2WAY 入力300W 2KW SA4826 入力300W 2KW 方式
 6 JBL 4755A 2WAY 1.2KW 4785A 1.2KW 方式
 7 ELECTRO VOICE MT-2 / 入力600W 2.4KW MTL-2 入力800W 3.2KW 方式
 8 TANNOY  CPA12/CPA15 入力200W CPA15.2 入力400W 方式
 9 YAMAHA S1525S 2WAY 入力320W SW1820S 入力800W 方式
10 VOSS PS-S910 3WAY 入力400W PS-S911 入力1.6K 方式

  最近大阪でこの手のイベントが少なくなったようで残念です


 

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** 【ダンピングファクタ

 よくスピーカシステムとパワーアンプの相性は、というお問い合わせをいただきますが、周波数特性が良く十分なヘッドマージンを持っていてダンピングファクタが大きいパワーアンプであれば、サウンドシステムとしては完璧であると思っています。
 <ダンピングファクタ>というのは、ラウドスピーカを制御する能力をいいます。特にウーハの音色は、ダンピングファクタの要素が利いてきます。
 ラウドスピーカは、パワーがかかると磁界によってボイスコイルが動かされて、サウンドが出てくるのですが、このときにマグネットとコイルによってボイスコイルが動くのと、反対方向に動こうとする逆起電力が生じます。
 正常な動作が逆起電力に勝っていればよいのですが、<ダンピングファクタ>の小さいパワーアンプを使うと、スピーカが、力のない貧弱なサウンドとなってしまいます。特に低い方の周波数に顕著に現れてきます。
 <ダンピングファクタ>の劣化は、最高の性能を持ったスピーカシステムとパワーアンプを使っても発生します。
 パワーアンプとスピーカシステムを結ぶスピーカケーブルが、<ダンピングファクタ>に影響を与えることになります。スピーカケーブルの抵抗値が、増えれば増えるだけ<ダンピングファクタ>は劣化するのです。
 サウンドシステムの<ダンピングファクタ>を確保するには、スピーカケーブルの抵抗値を少なくすればよいのです。即ちパワーアンプとスピーカシステムの距離を短くするか、スピーカケーブルの太いものを使えばよいのです。
 それでもダメであればリレハンメル冬期オリンピックのサウンドシステムのように、<210>ラインのハイボルテージ伝送を検討してみて下さい。
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やまちゃんヘリコ搭乗記

 以前関西の民放局の報道取材用ヘリコに搭載する機器を製作した時の話です。
、ヘリコの航空局による航空検査も無事終了し、12月19日にいよいよ修抜式を迎えました。私もヘリコ製作の関係者として私の会社の社長共々この修抜式の儀式に招待されて、八尾空港迄行ってきました。
式は、神主によるお払いが在り厳かに行われました。この模様は、同TV局のお昼のニュースで放映されました。(ご覧になられた方もあるのでは?)
 テープカットとくす玉割が行われ、いよいよ「〇〇2号」が就航しました。
この〇〇2号のヘリコは報道取材の為のテレビ中継機器を常時搭載し、何時でも飛び立てる用に八尾空港のヘリコ運行会社の格納庫で待機しています。
 
 式典も終了し、立食パーティもお開きとなり、いよいよデモフライトになり、私も搭乗する事に成りました。
 八尾空港から朝日ヘリポート迄約5分間の体験飛行です。その間に私の設計したICS装置を使って、連絡無線(業務用無線局)をコントロールして交信テストを、局の報道技術の担当者T氏と行う事に成りました。
(T氏はヘリコ設計の局の担当者) 私はヘリコから、八尾空港で待機中のT氏とプロの無線機で交信するのです。
アマチュア無線とは違うのです。しかしアマチュア無線できたえた交信テクニックでスマートにかっこよく交信・・・・・・・のはずが・・・・・・
 「×××9から×××12」、「×××9から×××12」
と二三度コールする。しかし応答なし ???
再度コール  応答なし  ???   (×××9はヘリコ、×××12はT氏が持っている携帯移動局)
再度コールする・・・・・・応答なし ????
 さてはT氏先ほどの立食パーティのときのお酒をまだ飲んでいて、無線機を聞いていないな、(これ内緒の話です念のため)
 そうこうしている内にヘリは、朝日ヘリポートに無事到着、ついに交信は出来ませんでした。
 そして会社に帰って暫くすると、八尾空港にいるT氏から電話が入ってくる。
ヘリコに乗ったら自分が何をしているのかワカラン用になるやろとT氏の声、???
一瞬あっけに取られて沈黙、やっと意味が解って、コリャドウモと答えるだけでした。
 そうです私のコールは、相手に伝わっていたのです。処が相手の応答は、無線機本体には受信しているのですが、その出力を一旦FSKコマンドデコーダと言うアンテナ自動追尾装置(ADS)のコンピュータに取り込みその出力をICS装置のヘッドホーンで聞くように成っているのです。
処がそのデコーダの電源スイッチをONにしていなかったのです。
 呼べ度答えずではなく、呼べ度聞かずだったのです。  自分で設計したシステムすみからすみまで、十分知っているはずなのに、いざフライトすると、その瞬間全てを地上に置き忘れとなるのです。
 これは、実際局のベテランの技術者でも同じ事が起こると言うことを聞いています。ヘリコと言う狭い特殊環境の中で、自分が今何をしているのか、又なにをしようとしているのか、まったく解らなくなる事が起こるのです。

  ヘリコの概要

形 式  アエロスパシャル(仏製)AS355F2  
定 員 5名(含パイロット)  
重 量 機体重量(含テレビ中継機器) 1750Kg  
  機体   1500Kg  
  中継機器 250Kg  
出 力 420馬力×2  
最高速度 140ノット (250Km/H)  
巡航速度 115ノット (207Km/H)  
上昇限度 16000フィート  (4800m)  
飛行時間 5名搭乗時 2時間15分 搭乗者数に因って乗せられる燃料の量が変わる為飛行時間が変わる。
  4名搭乗時 2時間40分  
  3名搭乗時 3時間20分  


  テレビ中継用搭載機器(常時搭載機材)

TVカメラ 3CCD 1台 取材用、生中継用
  小型CCDカメラ 1台 機内副操縦席固定
VTR ベータカム 1台 収録、再生
マイクロ 送信機 1台 出力5W 周波数C6.C8.E9.E11
  800M受信機 1台 移動中継用(マラソン等の移動中継車のアップリングの受け)
  7G受信機 1台 2段中継用
アンテナ ADS 1台 アンテナ自動指向装置
  ジャイロサット 1台 簡易アンテナ指向装置
ICS装置   1式 映像音声切換SWer及びインカムシステム
連絡無線機 UHF帯、VHF帯 各1台  


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