各国各地での6年間の取組みを導くラムサール条約の戦略計画
決議Ⅹ.1 ラムサール条約 2009−2015年 戦略計画
宮林 泰彦,琵琶湖ラムサール研究会(2008年5月,2009年3月改2)
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もくじ
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要約ラムサール条約がその締約国会議で採択する6年間の戦略計画は、締約国をはじめ条約の実施(すなわち、湿地の保全と賢明な利用)に関わる全ての主体に対してその取組みの課題を提供します。戦略計画は、図1のように『全世界における持続可能な開発の達成に寄与するため、地方や国内での行動と国際協力を通じて、全ての湿地を保全し、賢明に利用すること』という条約の使命のもとに、5つの最終目標(最終的に達成したいこと)を定め(図2)、それにむけていかに取組むかを28の戦略分野(図3)に分けて各分野での次の6年間で期待する成果領域を示しています。 |
本文
図1.戦略計画の構成(決議Ⅹ.1「2009−2015年 戦略計画」)。
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図2.戦略計画の5つの最終目標の組み立て(2009−2015年 戦略計画)。
条約の実施 [科学・技術・ 仕組み・制度] | 1.湿地の賢明な利用 | 2.国際的に重要な湿地 | 3.国際協力 |
条約の管理 [実施を支える] | 4.制度的能力・効力 [人・資金・組織・団体] | ||
5.加盟国 [全世界の取組み] |
図3.戦略計画の最終目標の各々のもとに配置される戦略分野(2009−2015年 戦略計画)。
- 最終目標1.湿地の賢明な利用
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- 戦略1.1.
- 湿地の目録と評価
- 戦略1.2.
- 地球規模の湿地情報
- 戦略1.3.
- 政策、立法、制度
- 戦略1.4.
- 湿地の恩恵/サービスの部門横断的認識
- 戦略1.5.
- 条約の役割の認識
- 戦略1.6.
- 科学に根ざした湿地管理
- 戦略1.7.
- 統合的水資源管理
- 戦略1.8.
- 湿地再生
- 戦略1.9.
- 外来侵入種
- 戦略1.10.
- 民間部門
- 戦略1.11.
- 奨励措置
- 最終目標2.国際的に重要な湿地
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- 戦略2.1.
- 条約湿地の指定
- 戦略2.2.
- 条約湿地の情報
- 戦略2.3.
- 湿地管理計画策定−新たな条約湿地
- 戦略2.4.
- 条約湿地の生態学的特徴
- 戦略2.5.
- 条約湿地管理の効力
- 戦略2.6.
- 条約湿地の現状
- 戦略2.7.
- その他の国際的に重要な湿地の管理
- 最終目標3.国際協力
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- 戦略3.1.
- 多国間環境協定等との相乗作用とパートナーシップ
- 戦略3.2.
- 条約の地域イニシアティブ
- 戦略3.3.
- 国際的援助
- 戦略3.4.
- 情報と専門的技術の共有
- 戦略3.5.
- 国境をまたぐ湿地・河川流域・移動性生物種
- 最終目標4.制度的能力・効力
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- 戦略4.1.
- 対話・教育・参加・啓発(CEPA)
- 戦略4.2.
- 条約の財政能力
- 戦略4.3.
- 条約の機関の効力
- 戦略4.4.
- 国際団体パートナー等との協働
- 最終目標5.加盟国
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- 戦略5.1.
- 加盟国
[付録]
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- ラムサール条約戦略計画の最終目標と戦略分野の一覧をベタのテキストでワードファイルにリストしたものを添付しますので、作業にご利用ください:ovstpln1.adx1.doc.zip(作業用ワードファイルZIP圧縮3㎅)。
ラムサール条約の「戦略計画 Strategic Plan」は、締約国会議のあいだ2回分の6年間に、条約の取組みの方向を示す計画として締約国会議において採択されます。新たな6年間の計画を立てるにあたっては、それまでの6年間の計画の成果に基づいて組み立てなおされます。
- *
- 環境省:第10回締約国会議への国別報告.
この戦略計画によって条約は、締約国をはじめ条約の実施(すなわち、湿地の保全と賢明な利用)に関わるすべての主体に対して次の6年間の課題を提供します。各国はこの条約の戦略計画を参照しながら、自国における優先事項や、自国の能力等の条件に鑑みて、自国での条約実施にかかる次の6年間の計画を立てて実施することが求められています。戦略計画の取組みは、3年ごとの締約国会議に各国が提出する国別報告に、各国での成果を報告することになっていました(参考:第10回締約国会議への日本国政府からの国別報告)が、2009年からの戦略計画では常設委員会会合の各回がその進捗状況を検討することができるように各締約国は自国が該当する地域の代表に進捗状況を提供することとされています(決議本文段落10)。
- *
- 安藤元一.2000.ラムサール条約登録湿地として見た琵琶湖.[表3]
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- 付表1.
この戦略計画は、個々の湿地レベルでの計画づくりにも活かせることでしょう。たとえば、安藤(2000)が当時の戦略計画に対比させながら、琵琶湖におけるそれまでの取組みの実績と将来の課題や可能性を提案しています。
また、付表1に、本プロジェクト「ラムサール条約を活用しよう」で第2部に解説文が提供できているかを2009年からの戦略計画に照らして点検してみました。
2009年からの戦略計画(決議Ⅹ.1)は、条約の「使命 Mission」に向けて達成すべき「最終目標 Goal」5項目を立て、そのもとに取組みの分野として「戦略 Strategy」28項目を適当な位置に配置するという構成に組み立てられています。そして各々の戦略分野の中で当該期間に追求する「主要成果領域 Key Result Area」が示されています(図1)。
戦略計画に示される5つの最終目標は、図2のように組み立てられています。これら最終目標の各々に配置された戦略分野(図3)を考え合わせると、条約の実施と位置づけられている1「湿地の賢明な利用」、2「国際的に重要な湿地」、3「国際協力」の3つの最終目標は、条約の使命を達成するために条約が築き上げてきた技術や仕組みであり、条約の「湿地の賢明な利用ハンドブック第3版(2006年版)」の構成とほぼ同様になっていることに気づきます。あと二つの最終目標はこれら3つの最終目標のすべてを支える人や組織・団体、そして全世界を網羅する締約国と見ることができるでしょう。
1996年の第6回締約国会議(ブリズベン、オーストラリア)において、初めての(第1期)戦略計画が1997−2002年の期間に対して策定されました。2003−2008年の第2期戦略計画の結果に基づき、第10回締約国会議で、2009−2015年の第3期の戦略計画が採択されました。
[お願い]
個々の湿地や関係団体において、ラムサール条約の戦略計画への応答としての活動計画を策定されましたら、このページからリンクを張って紹介したいと思いますので、情報をご教示ください。あるいはご寄稿ください。その際は、メールフォームのページよりご連絡お願いします。
今後のスケジュール
- 2008年6月
- ラムサール条約常設委員会第37回会合にて、2009−2014年戦略計画案(常設委員会第37回会合文書10)が検討され、決議案Ⅹ.1に案文が最終化された。
- 2008年10月28日−11月4日
- ラムサール条約第10回締約国会議(大韓民国 昌原)にて決議案Ⅹ.1が検討され、決議Ⅹ.1に2015年までの戦略計画として採択された。
- ↓
- 各締約国が条約の戦略計画を自国で実施する計画を策定し、実施する(全ての締約国が計画の策定やその文書化をするとは限らない)。
- ↓
- 常設委員会の会合の各回に計画実施の進捗状況が評価される。締約国はその評価のために、同委員会への地域代表に自国での進捗状況を伝える。
- 2012年(前半)
- ラムサール条約第11回締約国会議に計画実施の進捗状況の中間まとめが報告され、必要に応じて戦略計画の後半期に対する調整が検討される。
- 2015年
- ラムサール条約第12回締約国会議にて6年間の実施成果が総括され、次期の戦略計画が策定される。
文献
- 安藤元一.2000.
- ラムサール条約登録湿地として見た琵琶湖.琵琶湖研究所所報 第18号 116-122頁.[on-line] http://www.biwa.ne.jp/%7enio/ramsar/sec1g.htm.
ラムサール条約の戦略計画 (決議Ⅹ.1「ラムサール条約 2009−2015年 戦略計画」) |
「ラムサール条約を活用しよう」解説文 |
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