ヤングゼネレーションに愛をこめてふまえ 私の息子が、先年台湾と東南アジア諸国の旅行にいったのだが、帰ってから私にこんな興味のある話をした。「台湾では、どこにいっても、小学生ぐらいの子供が戦前の日本のように、木銃を持って軍事訓練をしていた。タイの首都バンコクでは、メイン・ストリートにはあまり見かけなかったが、ちょっと路地に入ってみると、ハダシの人が多くて、靴をはいている人は少なく、食事を道でしている人も見かけた。全体に生活水準は低く、貧しそうだった」そして、こう付け加えたのである。「旅行に行く前は、日本は貧しい国だと思っていたけれど、それは誤解だった。もっと貧しい国があることを実際に見てきたのだから、これは本当だ。日本には、本当の自由と平和はないとか、戦後はまだ終わっていないなどというけれども、台湾に比べれば、物資は豊富だし、何でも自由に発言、批判できる。日本は自由で平和な国であることを、体験から感じとってきた。今度の旅行は、日本という国を外側から客観的に見られたし、認識を新たにすることができたという意味から、とても勉強になった。これから機会を見つけてどんどん海外に旅行をしたい」私は、この話を聞いて、なるほど”百聞は一見にしかず”とはこのことだと思ったものである。たしかに、自分の目で見、肌で感じるということは、非常に重要なことである。本で読んだり人の話を聞いたりしたのでは、実感としてピンとこないものでも、実際に見たり、肌で感じたりすればよく理解できる場合が、とても多いのである。われわれ日本人は、この小さな島国に住み慣れてしまったのか、あまり外には出ないようである。だから、内側からは十分に日本という国を理解していても、外側、つまり客観的には日本および世界を、見ることができないので、正しく日本の現在おかれている状況や、世界の動静を理解することは、不可能なのではないだろうか。当然、日本は世界から取り残されてしまうという結果になる可能性が強いということになるのである。日本から海外に行くのは、思ったより簡単なのであるから、日本の若者諸君は、積極的に、海外に旅立ってほしい。そして、あらゆる角度から日本をながめてほしいのだ。そのうちに、まったく違った日本観が、生まれてくるかも知れないし、ぜんぜん変わらないかも知れない。しかし、それが明日の日本を引っ張って行く、原動力となることを、私は信じて疑わないのである。
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