堀繁半世紀

滋賀県明日、守山市の明日
戦後四半世紀、GNP世界第二位を誇るわが国は、世界注視の経済発展をとげた。人々は繁栄に酔い、恵まれた生活を営んでいる。だが、繁栄の反面、われわれの愛している郷土に大きなヒズミの影が忍びによっている。―交通戦争、地価の高騰、地域格差、美しい自然風物の破壊などなど。これでよいのか?松下幸之助氏がいっている。「だからこそ、だからこそ、政治が必要なのだ」と。滋賀県といい、守山町といい、経済成長の楯の両面である繁栄とヒズミはやはり顕著にあらわれているのではないだろうか。この意味で、われわれ政治家に課された責任は重いといわねばならない。農業県から工業県へ、観光県へ滋賀県の産業地図は塗りかえられていく。そのなかにあって最大の問題は、琵琶湖総合開発である。琵琶湖はこれまで湖岸の住民にはかり知れぬ恩恵を与えてきた。それは”命の水”といってもよいだろう。しかし、いまや琵琶湖は滋賀県一県だけのものではない。といって下流の京阪神のためだけの存在でもない。琵琶湖を近畿の給水塔として、近畿を一つに結びつけるための合理的な利用の道が講ぜられることがなにより望ましいといえる。だが、それととも開発が自然の破壊におわることのないように慎重に配慮されるべきである。もちろん湖岸の自然景観と歴史景観の美しい調和と保存についても、努力がはらわれなければなるまい。とくに水質保全には万全の対策が講じられなければならないのである。でないと悔を千年に残すことになるだろう。琵琶湖を”死の湖”にしてはならないのだ。幸い琵琶湖総合開発が軌道に乗る時期である。私は、まず、琵琶湖の水質保全の大系の確立に私の政治生命を賭けてみたい。きれいな琵琶湖は、産業、観光、生活あらゆる面で、地域会社の発展に寄与する貴重な県民の財産なのだから―。琵琶湖開発の問題とならんで、農業経営の近代化問題も重要である。とくに湖南、湖東の農業は、京阪神に近く、働く場所に不自由しないところから、出稼ぎ兼業農家が増え、地についた近代化が進んでいない。しかし現在のような状態は、決して長くは続かないものだ。その意味で農業はいま大きな転換期に立たされているといえるのだ。京阪神の大消費地に近接するという地の利を生かした、蔬菜園芸、花卉園芸などの導入によって、経営を近代化、合理化するには、いまをおいてはないのである。企業として”儲かる農業”の確立、”考えざる農民から””考える農民”への意識改革―”―これが私の提案である。

守山市は新しい街である。新しい街は当然、それだけ将来性が豊かである。そして街づくりは、その方向いかんによって、将来、豊かにも貧しくもなるものである。守山市の街づくりは、発展と調和を基本理念にすえ、新時代にマッチした「都市計画」と人間性回復を根底にした「生活の守り」を両翼に置き、時代を先取りするかたちで進められることを、私は提案する。当面の課題としては、野洲川改修事業、駅前ターミナル建設、第二琵琶湖大橋、湖周道路、国道に直結する第二幹線道路、市街地内環状線などの建設と交通安全施設の建設、上水道、下水道の建設設備、小学校、保育所の増設、公害防止対策などがあげられる。とまれ、71年は調和と繁栄の新しい世紀へ出発の年である。そして、私にとって71年を、前半紀の区切りであるとともに、残された後半紀への記念すべき出発の年にあらしめたいと願っている。