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ラムサール条約 第10回締約国会議
決議案31:湿地生態系としての水田の生物多様性を高める

日本語仮訳:
ラムサールCOP10のための日本NGOネットワーク,2008年8月[了解を得て掲載].

この決議案は,締約国会議で討議されて改変され決議Ⅹ.31に採択されましたので,このページの案文ではなく,採択された決議の本文を用いて下さい 決議Ⅹ.31].

条約事務局原文:
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「健全な湿地、健康な人々」
"Healthy Wetlands, Healthy People"
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第10回締約国会議
大韓民国 昌原창원),2008年10月28日11月4日

Ramsar COP10 DR 31

決議案.31
湿地生態系としての水田の生物多様性を高める

提案者:日本国・大韓民国

1.米は少なくとも 114ヶ国で生産され、世界の人口の半数以上の主食として世界のカロリー供給の約20%を占めていることを認識し

2.近年、地球規模で食糧の供給およびその費用が憂慮され、また食糧増産が必要とされていることを意識し、また[決議案23]「湿地と人間の健康」は、人間の健康、食の安全、貧困削減、および持続的な湿地管理が相互に依存し合っていることを強調し、締約国0対して「協力を強め、湿地保全、水、健康、食の安全、および貧困削減に関するさまざまなセクターの間の新しい協力関係を追求するよう」求めていることを同じく意識し

3.世界の稲作の大多数の典型的な農地である水田(稲の耕作のために灌漑により水を満たした耕作地)が、さまざまな米作文化を持つ地域において何世紀にもわたって広大な開放水面を提供し、また、米だけでなく、他の動植物性食料や薬草を生産し、湿地生態系の重要な構成要素としての役割を果たすことで地域の人々の生活と健康を支えていることを認識し

4.世界の多くの場所で水田が、魚類や両生類、昆虫類等重要な湿地の生物多様性を支え、また水鳥の渡り経路と、水鳥の個体群の保全において重要な役割を果たしていることを認識し

5.「水田」は、ラムサール湿地分類の中で人工湿地(「タイプ3灌漑地:灌漑用水路および水田を含む」)に含まれ、したがって、適切であれば、国際的に重要な湿地(ラムサール湿地)に登録したり包めることができ、また、世界中のラムサール湿地のうちで少なくとも 100か所のラムサール湿地が水田生息地を含み、重要な生態学的役割を果たし、国際的に重要な数の留鳥および渡り性水鳥の繁殖個体群および非繁殖個体群を支えるなど、広範な生物多様性を支えていることを想起し

6.水田に関係を持つ湿地のいくつかは、国連食糧農業機構(FAO)が始めた「地球規模の重要性を持つ農業遺産系(GIAHS)プログラム」に組み込まれ、または組み込まれる可能性を持ち、先住民による技術と文化及び生物多様性という価値からみて重要な、地域のダイナミックな保全を推進することに留意し、また、それらの湿地から湿地の賢明な利用の事例が提示される可能性もあることを認識し

7.水田の持続可能な湿地生態系としての役割に対する脅威が現存し、または今後発生であろうということだけでなく、ある種の農法、新たな種の導入、不適切な水管理、自然な流水体系の変更、水田の他用途への変更またはその逆などの要素が周辺環境に加える圧力が現存し、または今後発生することを憂慮し

8.使用していない時期の水田を湛水することなど、水田の生物多様性を増加させるためいくつかの水管理の取組によって、越冬期の渡り鳥に生息地を提供し、雑草や害虫の管理を行っていることに留意し

9.本決議は、特に湿地生態系としての水田の生態学的な役割と価値の維持と増進に明確に焦点を定めるものであり、貿易関連の協定と矛盾する農業政策を支えるために利用されることを意図しないことを確認し、また本決議が既存の天然の湿地を人工湿地に造成することを正当化するものではなく、また土地の人工湿地への不適切な変更を正当化するものではないことを同じく確認し

10.決議Ⅷ.34(2002)は、農業実践が湿地保全の目的と確実に両立するようにすること、また持続可能な農業がいくつかの重要な湿地生態系を確実に支えるようにすることの重要性に焦点を当てていることを想起し、また、決議Ⅷ.34に対応して科学技術検討委員会(STRP)および「農業・湿地相互作用の手引き(GAWI)」のイニシアティブが、FAO、ワーゲニンゲン大学および研究センター、国際水管理研究所(IWMI)、ウェットランドアクション、世界湿地保全連合(WI)と共同して行っている、湿地と農業の相互作用に関する指針の枠組みの準備を含めた作業を意識し

11.水田農業に関する情報と成果は経済協力開発機構(OECD)の農業生物多様性指標など農業と生物多様性に関する業績と出版物を通して入手可能であること、湿地、水および稲作農業に関する情報は「農業における水管理の総合評価(CA)」を通して、また現在IWMISTRPの移植を受けて行っているラムサール湿地タイプの分布および代表性に関する分析には、とくに、人工湿地としての水田が含まれることに留意し

締約国会議は、

12.締約国に対して、湿地保全の目的と、地下水かん養、気候緩和、洪水・侵食防止、地すべり防止、及び動植物性食糧及び薬草の供給、また生物多様性の保全などの生態系サービスの供給を強化するという持続可能な水田稲作を特定するために、水田の動植物相および生態学的機能、及び稲作を行う地域社会において発展し、湿地生態系としての水田の生態学的価値を保ってきた文化に関する調査をさらに促進するよう奨励する

13.締約国に対して、たとえば湿地を国際的に重要な湿地に登録することを通して、またFAOの地球規模で重要な遺産システムプログラムなどのようなメカニズムを通して、湿地を認識しまた保護することを考慮するよう奨励し、また締約国に対して、持続可能な稲作農業実践及び水管理の改善のために、これらの実践や湿地に関する情報を、政府、農民、自然保護団体の間で広めかつ交換するようさらに奨励する

14.締約国に対して、以下のことを求める

)一方で農業従事家庭と周辺の共同体の住民の栄養状態、健康、及び生活向上に寄与し、また水鳥個体数の保全に寄与しつつも、湿地の賢明な利用というつながりの中で、水田を湿地生態系として管理することに伴う問題点と利点を特定すること、また自然保護を主管する省庁が、農業を主管する省庁及び稲作と病気予防担当の部署と協力して、水田の自然の生物多様性、生態系サービス、及び持続可能性を増進することのできるような計画、農法、および水管理を特定し、積極的に推進するよう奨励すること、

)一方では食糧生産の必要性と地域共同体の関心も考慮しつつも、[決議案19]として採択されるラムサールの湿地と流域管理に関する手引きを適切に用いて、河川流域の過程と、上流及び下流への起こりうる水田稲作の影響を確実に考慮しながら、適用可能なところではどこでも上のような計画、農法及び水管理が確実に実施されるようにすること、

15.科学技術検討委員会に対して、関心をもつ他の組織とも協力しながら、以下のことを要請する

)米作を管理するやり方の違いを考慮に入れつつ、湿地の生物多様性の保存と湿地生態系サービスの提供を支えるような水田の役割に関する技術報告書を準備すること。

)一方で、基本的食糧生産を支えながら、FAOIWMI、国際稲作研究所(IRRI)、GAWIパートナーシップなどと協力しつつ、湿地の生物多様性と生態系サービスを守り推進する役割を果たすことのできる、水田の計画と管理の実践に関する入手可能な手引きと情報を検討し、広報し、交換すること。

経済上の理由により、この文書は限られた部数のみ印刷されるが、会議場で配布する予定は無い。会議出席者は各自が印刷して持参し、会議場で求めることの無いようにされたい。


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[英語原文:
ラムサール条約事務局,2008.Ramsar COP10 Draft Resolution X.31 "Enhancing biodiversity in rice paddies as wetland systems", Convention on Wetlands (Ramsar, 1971). [Word] http://www.ramsar.org/doc/cop10/cop10_dr31_e.doc, [PDF] http://www.ramsar.org/pdf/cop10/cop10_dr31_e.pdf.]
[仮訳:
COP10のための日本NGOネットワーク,2008年8月.了解を得て掲載,琵琶湖ラムサール研究会,2008年10月.
この決議案は,2008年11月に第10回締約国会議で決議Ⅹ.31に採択されましたので,このページの案文ではなく,採択された決議の本文を用いて下さい.]
[レイアウト:
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URL: http://www.biwa.ne.jp/%7enio/ramsar/cop10/cop10_dr31_j.htm
Last update: 2012-03-27, Biwa-ko Ramsar Kenkyu-kai (BRK).