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ナビゲーション1/2 琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう | ●資料集第10回締約国会議
Ramsar Changwon 2008

ラムサール条約 第10回締約国会議
決議.31「湿地システムとしての水田の生物多様性の向上」

日本語訳:
『ラムサール条約第10回締約国会議の記録』(環境省 2011年)より了解を得て再録. 

  PDF (223 ,環境省)  ワード (ZIP圧縮 53

条約事務局原文:
ワード:
PDF:

「健康な湿地、健康な人々」
"Healthy Wetlands, Healthy People"
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第10回締約国会議
大韓民国 昌原창원),2008年10月28日11月4日

決議.31
湿地システムとしての水田の生物多様性の向上

1.米は世界中で少なくとも 114ヶ国で生産されており、世界人口の半数以上の主食として世界のカロリー供給の約2割を占めていることを認識し

2.最近の世界的な食料供給とコストへの懸念及び食料増産の必要性を意識しCOP10決議23「湿地と人間の健康及び福祉」において、人間の健康、食料安全保障、貧困削減及び持続可能な湿地管理が相互に依存していることが強調され、締約国に対し「湿地保全、水、保健、食料安全保障、貧困削減の各担当部局間の協力を強化し新たな連携を模索する」よう要請していることを同じく意識し

3.世界の米作地帯のかなりの割合において典型的な農地景観となっている水田(米が栽培されている、灌漑され冠水した土地)が、米作を行っている様々な文化圏において何世紀にもわたり広大な開放水面を提供してきたこと、米生産に加え、他の動植物性の食料源や薬草を提供し、湿地システムとして機能しその地域の人々の生活及び健康を支えていることを認識し

4.世界の多くの場所で水田が、爬虫類、両生類、魚類、甲殻類、昆虫類、軟体動物等、湿地における重要な生物多様性を支え、水鳥のフライウェイ及び水鳥個体群の保全上重要な役割を果たしていることに留意し

5.水田に関わる水生生物の多様性が農村の人々の栄養、健康及び福祉に重要な貢献をしうることをさらに認識し

6.いくつかの特定地域では、灌漑された水田が生物多様性保全のために周辺の自然半自然の生息地、特に湿地につながっていることが重要であることも認識し

7.「水田」はラムサール条約湿地分類法において人工湿地として含まれているため(「分類3灌漑地。灌漑用水路、水田を含む」)、適切な場合には、ラムサール条約湿地に指定又は含めることができること、また、少なくとも世界中で 100ヶ所のラムサール条約湿地が、重要な生態的役割を持ち、繁殖・非繁殖を問わず留鳥や渡り性水鳥の国際的に重要な個体群を含めた幅広い生物多様性を支える水田を含んでいることを想起し

8.水田を持ついくつかのラムサール条約湿地は、国連食糧農業機関(FAO)によって開始された、伝統的技術、文化的価値、生物多様性上の価値にとって重要な土地を保全するプログラムである、「地球的重要農業遺産システム(GIAHS)プログラム」に含められており、または含められる可能性があることに留意し、そのような条約湿地は賢明な利用の例となることを認識し

9.不適切な水管理、自然な水の流れの変更、侵略的外来生物を含む新たな動植物種の導入、有害な農業用化学物質の多用に関連した不適切な農法の実践、ならびに水田を他の土地利用に変えることによる影響等の要因により、持続可能な湿地システムとしての水田の役割そして周辺の環境に対して、現に存在する、または起こりうる危機や影響を懸念し

10.渡り性水鳥等の動物に生息地を提供したり、雑草や害虫の管理を行うために、稲作していない時期の水田を湛水する等の、いくつかの水管理の取組が適用されていることに留意し

11.湿地から水田への不適切な転換が、地域の生物多様性と関連する生態系サービスに悪影響を及ぼしかねないことを懸念し、本決議が、既存の自然湿地を人工湿地に改変すること、あるいは土地を不適切に人工湿地に改変することを正当化するものではないことを確認し

12.本決議の焦点は、本条約、国際的に合意された開発目標及び他の関連する国際的な義務と一致しかつ調和する形で行われる、湿地システムとして適切な水田の生態学的及び文化的な役割と価値の維持及び向上に特にあてられたものであることを確認し

13.決議Ⅷ.34(2002年)がとりわけ、農法が湿地保全の目的と両立することの重要性、そして持続可能な農業がいくつかの重要な湿地生態系を支えていることを強調したことを想起し、決議.34への対応として、科学技術検討委員会(STRP)と GAWI (Guidance on Agriculture-Wetlands Interactions)FAO、ワーヘニンヘン大学・研究センター、国際水管理研究所(IWMI)、ウェットランドアクション、国際湿地保全連合とのイニシアティブにより、湿地と農業の相互作用に関する手引きのための枠組準備を含む作業に取り組んでいることを意識し

14.水田耕作に関する情報や成果は、農業生物多様性指標を含む経済協力開発機構(OECD)の農業と生物多様性に関する業務と出版物を通じ入手可能であること、湿地、水、稲作に関する情報は「農業における水管理の包括的アセスメント(CA)」から入手可能であること、国際水管理研究所(IWMI)がSTRPのために用意しているラムサール条約湿地分類タイプごとの分布と条約湿地に含まれている割合に関する分析には、特に人工湿地として水田が含まれていることに留意し

締約国会議は、

15.締約国に対して、湿地保全の目的を助長し、地下水涵養、気候緩和、洪水・侵食制御、地すべり防止、動植物食糧源や薬草の提供、生物多様性保全等の生態系サービスを提供するような、持続可能な水田農法を特定するために、水田の動植物相と生態学的機能、湿地システムとしての水田の生態学的価値を維持してきた稲作地域の社会において発展してきた文化に関する、さらなる調査を促進させることを奨励する

16.締約国に対して、ラムサール条約湿地への登録や、FAOの「地球的重要農業遺産システム(GIAHS)プログラム」のような機構を通じ、このような水田に対する認識を高めたり保護を提供することを検討するよう呼びかけ、さらに、締約国に対し、持続可能な稲作農法と水管理の改善を支援するため、これらの農法と水田の情報を、政府間、農業者、自然環境保全機関に広め、情報交換をすることを呼びかける

17.締約国に対して以下の行動を奨励する

)持続可能な農法の促進のみならず、水田、自然湿地そして河川流域の結びつきについての概念にも留意し、湿地システムとしての水田を、湿地の賢明な利用に沿って管理するための課題と機会を特定し、さらに、自然環境保全部局が農業部局、稲作や疾病予防を管轄する省庁とも連携し、自然の生物多様性、生態系サービス、水田の持続可能性を高め、農家や周囲の地域住民の栄養状態、健康、福祉の改善、ならびに水鳥個体群の保全にも貢献するような、水田における計画策定、農法、水管理を特定し積極的に推進することを奨励する。

)食料生産の必要性及び地域社会の利益を意識しつつ、河川流域全体の視点と水田が上下流に及ぼす可能性のある影響が考慮されるようにするため、COP10決議19で採択された湿地と河川流域管理に関する手引きを適切に参照し、上記の計画策定、農法、水管理が、適用可能な箇所において実施されるようにする。

)自然湿地等の生息地を不適切な形で人工湿地に転換することにより、水田に関連した計画策定、農法、水管理が、現在ある自然の生物多様性や生態系サービスの損失につながらないようにする。

)上記の措置と整合性を保ちながら、水により伝染する疾病、疾病媒介生物(高病原性鳥インフルエンザを含む)、水田における過剰および不適切な農業用化学物質の使用に関連した、人の健康へのリスクを最小限にする適切かつ環境的に持続可能な方法を模索する。

18.科学技術検討委員会(STRP)に対して、他の関心を有する機関とともに、以下の行動を奨励する

)水田が異なる方法で管理されていること、そして GAWI パートナーシップの作業を考慮に入れつつ、湿地生物多様性の保全および湿地生態系サービスの提供に、水田が果たす役割について技術報告書を準備する。

FAO、国際水管理研究所(IWMI)、国際稲研究所(IRRI)、アフリカ稲センター(WARDA)、GAWI パートナーシップ等と協働して、必要な食料生産の需要を満たしつつ、湿地の生物多様性と生態系サービスを保全または向上させる持続可能な稲作について、水田の計画策定、管理方法、研修に関する入手可能な手引きと情報を交換し、総説を作成し普及させる。


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[英語原文:
ラムサール条約事務局,2008.Ramsar Resolution X.31 "Enhancing biodiversity in rice paddies as wetland systems", Convention on Wetlands (Ramsar, Iran, 1971). [Word] http://www.ramsar.org/doc/res/key_res_x_31_e.doc, [PDF] http://www.ramsar.org/pdf/res/key_res_x_31_e.pdf.]
[和訳:
表紙『ラムサール条約第10回締約国会議の記録』 『ラムサール条約第10回締約国会議の記録』(環境省 2011)[この決議のPDFファイル: http://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/ramsa/ketugi31.pdf ]より了解を得て再録,琵琶湖ラムサール研究会,2012年.]
[レイアウト:
条約事務局ウェブサイト所載の標準的な英語ページにおおむね従う.]
[フォロー:
COP11決議案15(英語原文:Word 126 PDF 99 ), 【解説11】, 決議Ⅹ.19決議Ⅷ.34 .]

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URL: http://www.biwa.ne.jp/%7enio/ramsar/cop10/res_x_31_j.htm
Last update: 2012-04-06, Biwa-ko Ramsar Kenkyu-kai (BRK).