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ナビゲーション1/2 琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう | ●資料集第10回締約国会議
Ramsar Changwon 2008

ラムサール条約 第10回締約国会議
決議.12「ラムサール条約と民間部門とのパートナーシップのための原則」

日本語訳:
『ラムサール条約第10回締約国会議の記録』(環境省 2011年)より了解を得て再録. 

  PDF (293 ,環境省)  ワード (ZIP圧縮 57 )    付属書 

条約事務局原文:
ワード:
PDF:

「健康な湿地、健康な人々」
"Healthy Wetlands, Healthy People"
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第10回締約国会議
大韓民国 昌原창원),2008年10月28日11月4日

決議.12
ラムサール条約と民間部門とのパートナーシップのための原則

1.湿地の生態学的及び社会経済的な価値の重要性と、全人類にとって重要な便益とサービスを幅広く提供するために湿地の生態系が担っている極めて重要な役割を認識し

2.ラムサール条約のCEPAプログラムに関する決議Ⅷ.31(1999年)と決議Ⅹ.8(2008年)において、湿地に関する課題が、環境部門だけでなく、ますますその他の部門の関わるところとなってゆき、その結果、湿地の保全と賢明な利用が社会や行政のなかで主流化する可能性があることを、締約国が認識したことを想起し

3.いくつかの企業組織や企業ネットワークが、生態系管理に関する優良事例を共有することを目的に、独自のガイドラインを既に開発し導入している事実を認識し

4.生物多様性条約(CBD)の第9回締約国会議で発足した「ビジネスと生物多様性イニシアティブ」を歓迎し、「企業参加の促進」に関するCBD決定/26を想起し

5.湿地の賢明な利用が官民の様々な利害関係者の経済活動や社会活動を維持することに寄与できる可能性を考慮し

6.ラムサール条約の実施において、政府その他の意思決定者、管理者及び様々な利害グループ(政府、経済界リーダー、地域社会など)の間における効果的な交流が果たす極めて重要な役割を認識し

7.湿地の保全と賢明な利用に対して、民間部門が関与を拡大し、それを約束することが、『20092015年戦略計画』の戦略1.10の中で強調されていることに留意しつつ、しかし、

8.水資源管理を向上し、持続可能ではない環境管理のリスクを軽減するにあたって民間部門が果たすべき役割と、民間部門が水を効率的に利用する必要性を認識し、持続可能な水管理が供給プロセス全体を通じて取り組まれる可能性に留意し

9.ダノン・グループに対して、条約への継続した惜しみない支援、特に10年以上にわたるラムサール事務局の交流活動、「世界湿地の日」のための資料、3年に1度の「ラムサール湿地保全賞」に併せた「エビアン特別賞」について謝意を表明し、最近設立され、ラムサール条約の地方会議への代表者の移動に大変役立っているスターアライアンスとのパートナーシップ「生物圏コネクション」を歓迎し

締約国会議は、

10.本決議付属書にて提供する「ラムサール条約と民間部門とのパートナーシップのための原則」を歓迎する

11.締約国及びラムサール条約事務局、ラムサール条約のパートナーに対して、これら原則を国、地域及び地球規模の既存のイニシアティブや公約の枠組みの中などで、適宜活用するよう要請する

12.締約国の「担当政府機関」に対して、関連する利害関係者、特に民間企業、政府省庁、流域管理当局、NGOと市民社会全般に、これら原則を周知させるよう奨励する

13.民間部門に対して、資源が許す限りラムサール条約事務局と連携して、以下のための実践的な方法を模索するよう奨励する。それは、自らの活動と湿地生態系とのつながりを理解し、マイナス影響を回避し、供給生産プロセスにおける不可避な影響を軽減するための方法、商業活動の様々な段階において、湿地生態系の構造や機能を維持するための脅威や好機など、湿地の保全の現状や傾向の評価を行うための方法、さらに、自らが依存している生態系のサービスと生産物の価値と、こうした恩恵を作り出している湿地タイプについて理解し正しく認識するための方法。

14.民間部門における民間及び公営の企業に対して、下記の段落21で言及している科学技術検討委員会(STRP)による評価から得られた背景情報を活用して、自らの水に関する「フットプリント」を、地方と地球全体の両方で算出し、水が既に不足している、または水不足に陥るおそれがある地域における影響を減らすよう奨励する

15.意思決定者、特に経済界のリーダーに対して、「ビジネスと生物多様性オフセット・プログラム」(BBOP)から得られる潜在的な便益や、「生態系と生物多様性の経済学」(TEEB)イニシアティブから得られる成果を検討することも含めて、湿地を含む生態系管理のための国のまたは国際的な既存のガイドラインや基準に従って、湿地の生態系に及ぼす悪影響を回避、改善、また最終選択肢として『オフセット』する政策、戦略及び実施方法を開発して導入するよう奨励する

16.湿地の生態系サービスに対する理解をさらに深め、解決策を特定して強化し、そのツールや経験を共有するという目的で、科学調査機関との提携関係を構築するための、ラムサール条約の機構及びそのパートナーと、民間部門との共同の取り組みを支援する

17.政府、資金提供者、国際組織、市民社会全般(営利企業・NGO・地域社会を含む)に対して、将来の成長機会のための必須条件として、湿地が提供しているサービスを維持するために、湿地の劣化を食い止め、再生するために連携することを奨励する

18.民間及び公営の企業に対して、協定を結び、経済的インセンティブ(湿地と水資源の保全に貢献する環境サービスに対する対価など)を実施するために、関連する利害関係者と提携関係を構築するよう奨励する

19.関係企業に対して、本決議に付属している原則に沿って、双方にとって有益なパートナーシップを構築するために考えられる方法や手段について、ラムサール条約事務局と議論するよう促し、「ビジネスと生物多様性イニシアティブ」への参加を検討するよう促す

20.事務局に対して、ダノン・グループやスターアライアンスとの緊密な協力を双方にとって有益な形で今後も継続し、ラムサール条約にとって有益であり、条約の使命や目標と合致する場面で、民間部門と同様の関係を構築できるよう備えておくことを奨励する

21.STRPに対して、企業の環境責任と社会的責任に関わるプログラムの一環として、自らの水の「フットプリント」を評価しようとする企業を支援するために開発されたガイドライン(ウォーター・フットプリント・ネットワークのガイドラインなど)について評価を行うよう要請する

22.ラムサール条約事務局に対して、1カ国またはそれ以上の締約国の領域内の民間部門とのパートナーシップで、プロジェクトや活動を展開するすべての場合に、適切な「担当政府機関」から承諾を得るために、事前に通知して協議するよう要請する

23.ラムサール条約事務局に対して、民間または公営の企業との新たな機会を探り、新しい共同イニシアティブを推し進める際には、本決議に付属する原則を実施するよう指示する


決議Ⅹ.12
付属書
ラムサール条約と民間部門とのパートナーシップのための原則

次の指導原則を実施するにあたり、ラムサール条約締約国は、事務局に対して、持続可能な開発にとって役立つものとしての湿地の生態学的価値の維持を目的に、民間部門との協力を促進させるために、『20092015年戦略計画』の戦略1.10の精神に基づき、民間部門とのパートナーシップをさらに発展させるよう奨励している。

目標

ラムサール条約と民間部門とのパートナーシップ構築において期待されることは主に次のとおりである。

一般原則

1.民間部門は環境問題に加担するだけでなく、解決の一端を担うこともできること、また地域住民や影響力のある人々、民間または公営の企業を含めた市民社会と政府とが互いに交流しあい責任を果たすことが、持続可能な開発を達成する最善の方法だという認識が高まっている。

2.締約国は、世界各地で持続可能ではない企業行為により貧困が増大し、それが環境劣化の根本原因の一部であること、しかし、グローバル化や経済成長が果たす役割はますます大きくなっており、それは時として大きな好機の源ともなることを認識している。

ラムサール条約の民間パートナー候補を特定するための基準

4.第一の基準は、企業(その企業の全営業所を含め)が、ラムサール条約の品位と評判を、また締約国会議での決定に従って条約の使命を遂行する能力を強化し、決して損なわないと約束していること。

5.第二の基準は、ラムサール条約とパートナーシップを結ぼうとする企業が、条約の使命を支持し、生命と人間の健康を維持する重要な条件の一つとしての環境持続可能性を認識していること。

6.第三の基準は、企業が環境持続可能性の概念を現在行っているビジネス慣行に組み込み、企業の主要課題の一環として、湿地の保全と賢明な利用を盛り込んだ新たな戦略を開発し導入すること。

個別の原則

7.事務局にとって、企業について徹底的に理解すること、実行しうる協働の取組の妥当性について評価すること、見込まれる相互利益と起こり得るマイナスの側面について理解することが肝要である。条約にとって当惑する事態が起こるおそれを回避するため、パートナー候補の活動を評価する際は、提案されている関係に直ちに関わる範囲だけでなく、その企業の活動について世界全域、企業戦略全体にわたって評価を行うよう注意を払うこと。

8.パートナーシップ・イニシアティブの設立の可能性を評価する際は、起こり得るあらゆるマイナスの側面、さらに直接的、短期的、長期的な相互利益を考慮に入れること。

9.条約の品位を傷つけかねない誤解を生むおそれのある直接的、潜在的、根本的な要因に留意しながら、パートナーシップ・イニシアティブにおいて起こり得るあらゆるマイナスの側面を注意深く評価し、マイナスの側面が特定された場合には、パートナーシップを再検討するか、または取りやめること。

10.排他性が要求され、同様の性質を持ったパートナーシップを他に結ぶことを禁止するようなパートナーシップは避けるよう注意を払うこと。

11.ラムサール条約と民間部門とのパートナーシップの可能性についての提案は、いかなる提案も、まずラムサール条約事務局内で検討と評価を行い、次に常設委員会の運営作業部会で検討と評価を行うこと。事務局は、民間部門とのイニシアティブ案の予備評価に続いて、さらに新たなパートナーシップ関係を構築することに対して常設委員会の賛同を得られるよう、必要な協議を行う責任を有する。加えて、全ての締約国に通知を送付すること。締約国から異議が出た場合には、次回の締約国会議にその議題を付託すること。

12.また、民間部門とのいかなるイニシアティブにおいても、事務局は適切な全ての締約国と協議を行い、関連する「担当政府機関」に十分に情報が与えられ、その機関がイニシアティブについて合意していることを確保すること。

13.民間部門との協働の活動を計画する際はいかなる場合でも、技術的な連携と能力育成プログラムについて十分考慮すること。

14.パートナーシップの有効性を定期的に評価し、その結果を改善するための勧告を迅速に行うためのモニタリングと評価の枠組みを署名された取り決めの一部として含め、それを実行する仕組みを策定すること。全てのパートナーシップの取り決めに、プロセスの実行に必要な資源を提供するための予算線を含めること。

15.ラムサール条約とパートナーシップを結ぶ民間企業は、自らの取り組みをラムサール条約の方針と連携させ、資源の許す限り締約国が条約の実施を遂行するのを支援すること。

16.営利企業とのパートナーシップを築く際には、その企業の上級役員をはじめ活動する全ての部署がこの関係について十分知らされており、この関係に対して協力的であるよう注意を払うこと。ラムサール条約からの代表らは、その組織の文化と、その企業が湿地の保全と賢明な利用の支援に進んで取り組む動機を明確に理解すること。

17.こうしたパートナーシップの発足の際には、その目標、双方が得られうる相互利益、回避しなければならない潜在的な不和や対立に関して完全な合意が得られていることに注意を払うこと。

18.ラムサール条約と民間部門とのパートナーシップには、下記に挙げるようないくつかの形態が考えられる。

  1. 所定の地理的領域または専門領域内にある湿地の傾向に対する理解を深めることを目的とした、湿地の課題に関する非公式な情報提供。
  2. 所定の地理的領域にある湿地へのプラス及びマイナスの影響に関する公式な情報提供。
  3. 予め定義された目的を達成するために、おのおのが契約の約定を通じて担う長期的責務。

19.条約とパートナーが最も有効に機能し、建設的な信念、展望、考え及び行動に合意できるように、率直で忌憚のない協働関係における前向きな姿勢を維持することが重要である。鍵となるアプローチは、信頼関係を結び、双方が共有するニーズを満たすような行動を特定し実施するために共に仕事をすることに自信を持つことである。

20.ただし、対立または不和が避けられないときは、直接的または短期的な利益が損なわれるおそれがあっても、条約の利益を最優先することが必要である。

21.ラムサール条約との連携に興味を示す企業が、その影響力や活動が広範囲または世界全域に及ぶ巨大企業である可能性もあり、提携を通じて条約にとって当惑する事態が起こることを回避すべく、企業内の特定の部署との進行中のパートナーシップ関係だけでなく、その企業が世界各地で行っている、パートナーシップとは無関係の活動についてもモニタリング及び評価を行うよう注意を払うこと。

22.条約と民間部門とのこうしたパートナーシップ全てについて、その活動と進捗に関する報告書を、標準の要約書式に従って、締約国会議毎に提供すること。条約で利用するためにパートナーから提供された資源は全て明らかにすること。

23.上記の原則と合致する公式パートナーシップに合意した営利企業のみ、ラムサール条約に直接言及し、条約のロゴを使用することができる。営利企業とのその他のパートナーシップではこうしたことを行ってはならず、事務局はこの条件が守られているかを監視すること。反対に、ラムサール条約との公式パートナーシップの下で活動しているパートナーは、パートナーシップに関連したあらゆる交流と普及啓発活動でこれを明確にし、可能な場合は、刊行物やその他の活動でラムサール条約のロゴを使用すること。

24.一方、事務局は、非営利目的の場合には事前の承諾を得ずとも、湿地管理者や政府当局、報道機関等のメディアがラムサール条約の名称かつ/あるいはロゴを使用することを奨励している。それは、条約の名称や目標を最大限に広く知らしめること、また、出来るだけ人々が条約の名称や目標を広めやすいようにすることは、条約の利益にかなうと考えられるからである。非営利団体の作成物におけるラムサール条約の名称やロゴの使用に対して課されている唯一の制約は、条約がその作成物に関与している、またはその作成物を支持していると示唆するような形で名称かつ/あるいはロゴを配置してはならないということである。(例えば、ラムサール条約に関する発行物は、それ自体はラムサール条約による発行物ではないことがはっきりとわかる限り、ラムサール条約のロゴを自由に使用できる。)


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[英語原文:
ラムサール条約事務局,2008.Ramsar Resolution X.12 "Principles for partnerships between the Ramsar Convention and the business sector", Convention on Wetlands (Ramsar, Iran, 1971). [Word] http://www.ramsar.org/doc/res/key_res_x_12_e.doc, [PDF] http://www.ramsar.org/pdf/res/key_res_x_12_e.pdf.]
[和訳:
表紙『ラムサール条約第10回締約国会議の記録』 『ラムサール条約第10回締約国会議の記録』(環境省 2011)[この決議のPDFファイル: http://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/ramsa/ketugi12.pdf ]より了解を得て再録,琵琶湖ラムサール研究会,2012年.※付属書段落3は、条約事務局の原文において欠番となっている.]
[レイアウト:
条約事務局ウェブサイト所載の標準的な英語ページにおおむね従う.]
[フォロー:
COP11決議案20(英語原文:Word 101 PDF 97 ) .]

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URL: http://www.biwa.ne.jp/%7enio/ramsar/cop10/res_x_12_j.htm
Last update: 2012-03-27, Biwa-ko Ramsar Kenkyu-kai (BRK).