Swan  琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう第8回締約国会議

ラムサール条約

決議.20:条約第2条5項及び第4条2項

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「湿地:水、生命及び文化」
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第8回締約国会議
バレンシア,スペイン,2002年11月18-26日


決議.20

条約第2条5項に基づく「緊急な国家的利益」の解釈及び条約第4条2項に基づく代償措置検討のための一般的手引き

1.ラムサール条約第2条5項では「いずれの締約国も、…既に登録簿に掲げられている湿地の区域を緊急な国家的利益のために廃止し若しくは縮小する権利を有する」と定めていることを想起し

2.条約第4条2項では「締約国は、登録簿に掲げられている湿地の区域を緊急な国家的利益のために廃止し又は縮小する場合には、できる限り湿地資源の喪失を補うべき」であると定めていることを想起し

3.この第2条5項と4条2項には、「緊急な国家的利益」という用語の解釈や代償措置の決定方法について何らの手引きも示されていないことを認識し

4.決議.23が常設委員会に対し、ラムサール条約事務局と科学技術検討委員会(STRP)の協力を得て、第8回締約国会議(COP8)での検討と採択に備えて、条約第2条5項と4条2項の解釈に関する締約国のための手引きを作成するよう求めたことに留意し

5.条約第2条3項の「登録簿に湿地を掲げることは、その湿地の存する締約国の排他的主権を害するものではない」とする規定を改めて確認し

締約国会議は、

6.「ラムサール条約第2条5項に基づく『緊急な国家的利益』の解釈及び条約第4条2項に基づく代償措置検討のための一般的手引き」と題する本決議の付属書を採択する

7.締約国に対して、条約第2条5項に基づく権利を行使し、条約湿地リストに記載されている湿地の区域を廃止または縮小する場合の代償措置を検討するときには、本一般手引きを考慮することを奨励する


付属書

条約第2条5項に基づく「緊急な国家的利益」の解釈及び条約第4条2項に基づく代償措置検討のための一般的手引き

目的

1.ラムサール条約第2条3項の「登録簿に湿地を掲げることは、その湿地の存する締約国の排他的主権を害するものではない」とする規定にしたがい、「緊急な国家的利益」を決するのはもっぱら締約国である。以下の手引きは、第2条5項及び第4条2項を解釈する際に締約国の助けとなるものである。締約国が望むならば、締約国は本手引きを使用することができる。

2.この一般的手引きは、ラムサール条約の「緊急な国家的利益」条項の規定と、その規定が発動された場合の代償措置の規定の適用について、締約国がより厳しい規則を維持または導入するのを妨げるものではない。

緊急な国家的利益

3.緊急な国家的利益に関わる場合、ラムサール条約第2条5項に基づき、既に国際的に重要な湿地のリストに記載された湿地(条約湿地)の区域を廃止または縮小する権利を行使する場合、締約国は、とりわけ以下を考慮する:

3.1 湿地系の完全な状態を維持することの国家的利益及びそれに関連する利益;
3.2 現状維持が国家的利益を脅かすかどうか;
3.3 提案された変更が国の政策と一致するかどうか;
3.4 重大な脅威を回避するために、緊急の対策が必要かどうか;
3.5 国家的利益に対する脅威が現在も拡大しているのかどうか;
3.6 提案されている行動に対するあらゆる妥当な代替策。「プロジェクトを実施しない」選択肢、代替地の獲得、緩衝地帯の導入など;
3.7 対象湿地の現在の機能と経済的、社会的、生態学的な価値(その湿地の価値と機能が重要であればあるほど、提案されているプロジェクトの社会的、経済的、生態学的な利益は高くなければならない);
3.8 固有種、絶滅のおそれのある種、希少種、危急種、絶滅危惧種の生息地としての価値;
3.9 提案されている行動がきわめて多数の人に利益をもたらすのかどうか;
3.10 長期的に見て、提案された行動をとることがより大きな利益をもたらすのかどうか;
3.11 対象湿地への害を最小限にする代替措置;
3.12 国境を越えた影響。

代償措置

4.緊急な国家的利益に関わる場合で、条約第2条5項に基づく権利を行使するときは、締約国は湿地資源の喪失をできるだけ補うべきである。このような代償措置を検討する場合、締約国はとりわけ以下を考慮する:

4.1 その締約国の湿地域で条約湿地リストに記載されているものの全体的な価値を、国及び世界のレベルで維持すること;
4.2 代替湿地の有無;
4.3 影響を受ける条約湿地の生態学的特徴、生息地、または価値に対する代償措置の妥当性;
4.4 科学的不確実性及びその他の不確実性、;
4.5 提案された行動に対する代償措置のタイミング;
4.6 代償措置そのものが引き起こしうる悪影響。

手続き上の問題

5.締約国がラムサール条約第2条5項に基づき、条約湿地の区域を廃止または縮小する権利を行使し、第4条2項に基づいて影響緩和措置または代償措置を提案する場合、湿地の提供している機能、サービス、利益を全面的に考慮して、事前に環境影響評価を行うのが、通常、適切な第一ステップである。この評価は、可能な場合には常に、すべての利害関係者と十分に協議して行う。

6.ラムサール条約第2条5項に基づき、条約湿地の区域を廃止または縮小する権利を行使する場合であって、重大な損害または取り返しのつかない損害が生じるおそれがあるときには、締約国は科学的に完全な確実性がないという理由をもって、環境の劣化を回避するコスト効果の高い措置を延期する口実としてはならない。

7.ラムサール条約第2条5項に基づき、条約湿地の区域を廃止または縮小する権利を行使する場合、締約国は、同条項の定めにしたがい、できるだけ早い時期にその区域変更について条約事務局に通知する。この変更を条約事務局に通知する場合、締約国は、何らかの不可逆的な行動を起こす前に、STRPや常設委員会などに対して助言を求めることができる。


ラムサール条約第8回締約国会議の記録 [和訳:『ラムサール条約第8回締約国会議の記録』(環境省 2004)より了解を得て再録,2005年,琵琶湖ラムサール研究会.]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う.]

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