決議Ⅷ.21：条約湿地の境界

「湿地：水、生命及び文化」
湿地条約（ラムサール，イラン，1971）
第８回締約国会議
バレンシア，スペイン，2002年11月18-26日

決議Ⅷ.21

ラムサール条約湿地情報票における条約湿地の境界の正確な記述

１．ラムサール条約第２条５項では、湿地の廃止または縮小について「いずれの締約国も、…既に登録簿に掲げられている湿地の区域を緊急な国家的利益のために廃止し若しくは縮小する権利を有する」と定めていること、また第４条２項では「締約国は、登録簿に掲げられている湿地の区域を緊急な国家的利益のために廃止又は縮小する場合には、できる限り湿地資源の喪失を補うべきであり、特に、同一の又は他の地域において水鳥の従前の生息地に相当する生息地を維持するために、新たな自然保護区を創設すべきである」と定めていることを想起し；

２．「条約第２条５項に基づく『緊急な国家的利益』の解釈及び条約第４条２項に基づく代償措置検討のための一般的手引き」に関する決議Ⅷ.20を想起し、また本決議（Ⅷ.21）は、条約第２条５項に基づく緊急な国家的利益を関係締約国が行使しない場合のみに関連するものであることを確認し；

３．決議Ⅶ.23では、条約第２条５項の緊急な国家的利益の規定とは別に、ラムサール条約湿地の境界について明示し直す必要がある状況、たとえば登録の時点で境界を誤って、または不正確に示した場合などがあることを認識していることを想起し；

４．決議Ⅶ.23で締約国が常設委員会に対して、他の国際的な義務を減ずることなく緊急な国家的利益以外の理由でラムサール条約湿地の境界を見直すための手続きを作成し、第８回締約国会議（ＣＯＰ８）に提案するよう求めたことも同じく想起し；

５．ラムサール条約第２条１項では締約国に対して、国際的に重要な湿地のリストに加えるために、指定された湿地の区域を正確に記述し、地図上に表示することを義務づけていることを認識し、また条約湿地の中には、ラムサール条約に基づく選定基準や情報記録方法が策定される前に指定されたものもあることを認識した決議５.３を想起し；

６．さらに決議Ⅵ.13で締約国が、少なくとも６年ごとに、モニタリングを目的として、各条約湿地について地図と条約湿地情報票（ＲＩＳ）からなる条約湿地データを改訂することを決議したことを想起し；

７．決議Ⅷ.13では、地図の提出も含め、ＲＩＳの記入に関する手引きの改訂版が採択されたことに留意し；

締約国会議は、

８．締約国に対して、決議Ⅷ.13で採択されたＲＩＳの記入に関する手引きを用い、各条約湿地のＲＩＳと地図の記述をできるだけ正確で新しいものとするために必要な努力を払うよう強く要請し、また、このためにはＲＩＳ中の湿地の境界に関する記述の改善と、場合によっては地図上に表示された境界そのものの改善も必要になりうることを認識する；

９．締約国に対して、地図上に表示された条約湿地の境界の改善は、変更がきわめてわずかで、条約湿地に指定されたときの根本的な目的に実質的な影響がなく、かつ次のいずれかに該当する場合にのみ行うことを勧告する：

ａ）湿地の境界の線引きが不正確で、明らかな間違いがある場合；
ｂ）湿地の境界がＲＩＳに示された記述と正確に対応していない場合；
ｃ）技術の進歩によって、湿地の境界を登録時よりも高い解像度で正確に決められるようになった場合；

10．ＲＩＳまたは条約湿地の地図により、湿地の境界について最新の記述をラムサール条約事務局に提出する締約国に対して、以下を行うよう求める：

ａ）改訂ＲＩＳまたは条約湿地地図に、変更点をはっきりと示す；
ｂ）本決議段落９の検討点に言及して、変更理由を文書で示す；

11．ラムサール事務局に対して、ＲＩＳ及び条約湿地地図で湿地の境界の記述を改善する予定の締約国に、本決議の内容への注意を喚起するよう、また、このような変更及び本決議の段落９ｂ）にしたがって、これに付随して提出される文書に関しては、常設委員会に報告するよう指示する；

12．科学技術検討委員会に対して、湿地の境界の正確な記述を盛り込めるように、ＲＩＳに主要データフィールドを追加することについて調査し、かつＲＩＳに付随する文書で決議Ⅷ.13によって改訂された「ラムサール条約湿地情報票（ＲＩＳ）注釈及びガイドライン」に加えるため、このフィールドについての手引きの作成についても調査するよう求める。