Swan  琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう第8回締約国会議

ラムサール条約

決議.35:干ばつ等の自然災害

[英語] [フランス語] [スペイン語]


「湿地:水、生命及び文化」
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第8回締約国会議
バレンシア,スペイン,2002年11月18-26日


決議.35

特に干ばつ等の自然災害が湿地生態系に及ぼす影響

1.締約国が、国際的に重要な湿地(条約湿地)のリストに掲げられている湿地の保全を促進し、またその領域内の湿地のできる限り賢明な利用を促進するため、計画を作成し、実施することを確約したラムサール条約第3条1項を想起し

2.ラムサール条約第3条2項、すなわち、各締約国が、その領域内にあり、かつ条約湿地リストに掲げられている湿地の生態学的特徴が技術の発達、汚染その他の人為的干渉の結果、既に変化しており、変化しつつあり、または変化するおそれがある場合には、これらの変化に関する情報をできる限り早期に入手することができるような措置をとり、こうした変化についてラムサール条約事務局に遅滞なく報告することに合意した条項を同じく想起し

3.締約国が勧告4.8でラムサール条約事務局に対し、生態学的特徴の変化が既に起こっており、起こりつつあり、または起こるおそれのある条約湿地の「モントルーレコード」を維持するよう指示したこと、決議5.4で締約国が、このモントルーレコードの運用に関するガイドラインを定め、国内的及び国際的に保全への積極的注意を払うべき優先湿地を指定することを特にその目的と定めたこと、及び決議.1で締約国が、その運用に関して改訂された手順を採択したことを重ねて想起し

4.第8回締約国会議(COP8)会議文書20(COP8 DOC.20)に概要を記載する管理計画策定プロセスを含め、本条約の下で条約湿地及びその他の湿地の生態学的特徴の現状と傾向を評価し報告することの重要性を認識し

5.決議.8により締約国が、条約第3条2項による報告は、特に「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」(決議.11)の目標4.1に沿って、条約湿地の現状と傾向の分析の基礎情報を提供するために、人為的に引き起こされた生態学的特徴の有害な変化のタイプと原因について行うべきだと確認したことを重ねて認識し

6.決議.1により締約国が、特に水の保持と濾過、地下水の涵養、人々のため及び生物多様性の維持のための水、食料、繊維の供給といった多くの価値と機能を湿地が確実に提供し続けることができるようにするために、水の配分の維持がきわめて重要であることを強調したことも同じく認識し

7.乾燥地の湿地が人々と生物多様性の存続にとってきわめて重要なこと、及び今回の締約国会議で採択された決議.33により、締約国が乾燥地域における一時的な湿地の特別な重要性とその独特な生物多様性を認識したことに留意し

8.乾燥地の湿地に関する共同行動に関し、ラムサール条約と国連砂漠化対処条約との間で交わされた協力の覚書を認識し、生物多様性条約(CBD)が、乾燥地及び亜湿潤地に関するその作業計画の実施にあたり、協力のパートナーシップを結んだこと、及び第3次CBD・ラムサール条約共同作業計画を通して、このパートナーシップにラムサール条約が参加したことを歓迎し

9.中東と中央アジアなど、世界のいくつかの乾燥地域と半乾燥地域で頻発する長期的干ばつが、通常ならばこうした干ばつに見舞われることのない条約湿地の生態学的特徴に熾烈な影響を与えていることを憂慮し、またこのような干ばつが、農地の灌漑、発電、人間や家畜の消費のよりどころとなる水資源への需要のせめぎ合いを拡大させることにより、将来における湿地の脆弱性を増加させることも同じく憂慮し

10.COP8会議文書11(COP8 DOC.11)に概要が記載されているように、気候変動の予測によれば、嵐や洪水といった他の自然災害もその頻度と厳しさが増すとされていること、及びこのような災害の発生が、湿地の生態学的特徴に深刻な被害をもたらしうることを認識し

11.イランのテヘランで2002年2月3日から5日まで開催されたラムサール条約西アジア・中央アジア小地域会合において、締約国その他の参加者により発表された「テヘラン・コミュニケ」が、地域内の相当数の主要湿地へ干ばつが及ぼす影響を認識したこと、また湿地劣化の背景にあるあらゆる根本原因に取り組むことの重要性を確認したこと、加えて、モントルーレコードの有効性と有用性を増すためには、湿地の生態学的特徴の人為的変化のみならず、自然による変化にも対処する必要があるとともに、こうした変化のモニタリングと評価を進める必要があると強調したことを歓迎し

12.干ばつの影響を特に重視する他の多国間協定、すなわち国連砂漠化対処条約と国連気候変動枠組条約との協働の重要性に留意し

締約国会議は、

13.通常ならば干ばつに見舞われることない地域における干ばつと、その他の自然災害が、被害国の条約湿地及びその他の湿地の生態学的特徴に熾烈な影響を及ぼしていることを強調する

14.干ばつに見舞われた締約国に対して、決議.1で求めるように、条約湿地及びその他の湿地が人々と生物多様性のためにあらゆる価値と機能を提供し続けることができるように、その自然の水文環境に従い、実行可能な限り、条約湿地及び他の湿地に対して水を配分し続けるよう努めるよう強く要請する

15.被害を受けた締約国に対して、通常ならば干ばつに見舞われることのない地域における干ばつと、その他の自然災害が、条約湿地及びその他の湿地の生態学的特徴、ならびに領域内のこれらの湿地に依拠する地域社会及び先住民の生活に及ぼす影響についてモニタリングと評価を行うよう、また条約湿地については、この情報をラムサール条約事務局に報告し、決議.8で求めるように、科学技術検討委員会(STRP)がCOP9に提出する条約湿地の生態学的特徴の現状と傾向についての報告の一助とするため、この情報を同委員会が利用できるようにするよう要請する

16.締約国に対して、条約湿地の生態学的特徴に対する干ばつその他の自然災害の影響を、ラムサール条約第3条2項に従って、ラムサール条約事務局に報告することを奨励する。報告には、自然災害に対する人々の対応の結果も含め、こうした報告は人為的に引き起こされた生態学的特徴の有害な変化のタイプと原因について行うべきだとした決議.8の確認に沿ったものとする;

17.さらに干ばつその他の自然災害に見舞われた条約湿地を有する締約国に対して、優先的な保全行動を要するこのような湿地をモントルーレコードに記載することにより、また適宜、その保全行動を支援するための国内的及び国際的な援助を求めることにより、モントルーレコードの仕組みとメリットを活用するよう重ねて奨励する


ラムサール条約第8回締約国会議の記録 [和訳:『ラムサール条約第8回締約国会議の記録』(環境省 2004)より了解を得て再録,2005年,琵琶湖ラムサール研究会.]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う.]

[ PDF 22KB ]   [ Top ] [ Back ]    [ Prev ] [ Index ] [ Next ]


Valid HTML 4.01!    Valid CSS!