Swan  琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう第8回締約国会議

ラムサール条約

決議.39:高地アンデス湿地

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「湿地:水、生命及び文化」
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第8回締約国会議
バレンシア,スペイン,2002年11月18-26日


決議.39

戦略的生態系としての高地アンデス湿地

1.今回の締約国会議で採択された決議で高地アンデス湿地の保全と賢明な利用に関連するもの、すなわち、「泥炭地に関する地球的行動のためのガイドライン」(決議.17)、「十分に選出されていないタイプの湿地を国際的に重要な湿地として特定し指定するための追加手引き」(決議.11)、「多国間環境協定及びその他の組織とのパートナーシップと協働」(決議.5)、「気候変動と湿地:影響、適応及び影響緩和」(決議.3)、「山岳帯湿地の賢明な利用と保全の推進」(決議.12)を考慮し

2.特に中米のパラモ、プーナ、ジャルカを含む高地草原群系(paramo formations)に位置する高地アンデス生態系には、氷河、湖沼、湿性草地、蘚類湿地(bofedales)、高地湿原(high-altitude vegas)、塩田、泥炭湿原など、生態学的、社会的、文化的に高い価値を有する重要な湿地系が含まれているという事実を意識し

3.消費用、灌漑用、発電用の水の調節及び供給をするほかに生物多様性に富んだ生態系、絶滅のおそれのある動植物種の生息地、固有種の主要生息地、観光地、特にいくつかの農村集落、地域住民、先住民の居住地として、高地アンデス湿地の戦略的価値を重ねて意識し

4.湿地系を含む高地アンデスの河川流域は、さまざまな目的に使われる水の主要な供給源であり、この小地域に属するアンデス諸国及びその他の諸国では、ほとんどの都市及びほとんどの農業生産がこの河川流域から恵みを受けていることを認識し

5.高地アンデス湿地の気候変動に対する弱さともろさ、ならびに集約的農業や家畜の放牧、無秩序な火入れ、採鉱、林業、内湖流域からの過剰取水、外来種及び侵入種の導入、無規制の観光などの生産活動から生じる負荷に対するこの湿地の弱さともろさを認識し

6.高地アンデス湿地を保全することで、さまざまな規模での水系の調節が可能になること、また、これらの生態系に関連する集落においても、この生態系の環境サービスから恩恵を受ける都市部においても、生活の質の改善が可能になることを認識し

7.高地アンデス湿地は地元、国、地域、国際のいずれのレベルでもあまり注目されていないため、その保全と持続可能な利用を促進して、壊れやすいこの生態系をアンデスの人々にとっての恵みとして、完全な状態に維持することがむずかしいことを重ねて認識し

8.山岳生態系とそれに付随する湿地もまた、生物多様性条約、国連気候変動枠組条約、砂漠化対処条約、ボン条約などの他の多国間環境協定の活動分野に含まれることを想起し

9.高地アンデス生態系とそれに付随する湿地に関するイニシアティブ、たとえば、政府組織、非政府組織、研究センター、パラモ(高地草原)のある国々及びパラモと同じような生態系のある国々の企業代表が参加するパラモ国際作業グループ(Grupo Páramo)のイニシアティブ、ならびにアルゼンチン、ボリビア、チリ、ペルーの4か国の政府組織、非政府組織、企業、大学が、ラムサール条約とボン条約の枠組みの中で、フラミンゴの保全のための重要な側面を組み込んだ共同行動を実施する高地アンデス・フラミンゴ保全グループ(GCFA)のイニシアティブなどが、現在実施中であることを認識し

10.ラムサール条約の国際団体パートナーがこれらの湿地を戦略的生態系とみなし、かつ絶滅のおそれのある種または絶滅の危惧される種の生息地である生態系とみなして、その保全に関心を有することを同じく認識し

11.ラムサール条約事務局が、世界パラモ会議という、コロンビアのパイパで2002年5月に開かれ、パラモに関する国際的な取組への基本的アプローチを定めたパラモ宣言を採択した会議を支援したことに留意し

12.また国際連合が、2002年を国際山岳年、2003年を国際淡水年と宣言したことにも同じく留意し

13.持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ、2002年)で採択された実施計画、生物多様性条約(CBD)第6回締約国会議(COP6)(ハーグ、2002年)、及び2003年世界水フォーラムに向けた準備段階において、山岳生態系が重視されたことを想起し

締約国会議は、

14.関係締約国に対して、高地アンデス湿地とそこを源流域とする流域の、貴重な生物多様性、水の調節機能、地域社会、農村集落及び先住民の居住地としての機能を保全するため、同湿地とその流域に対する作業計画を定めるよう促すとともに、高地アンデス湿地に直接または間接に関係する自国の法律、政策、及び奨励措置の見直しを優先し、その賢明な利用と保全が国家湿地政策、国家生物多様性戦略、国家開発計画、及び他の類似文書に確実かつ十分に組み込まれるようにするために、追加的な国の戦略を作成するよう奨励する

15.ラムサール条約事務局に対して、常設委員会の支援の下に、ラムサール条約とその他の関連条約及び関連イニシアティブが参加する高地アンデス生態系の保全と持続可能な利用のための共同戦略を提案するよう要請する

16.ラムサール条約事務局に対して、関係締約国と協力して、前段落で求めた共同行動を促進するための調整と技術支援のための媒介役として、これらの生態系に関連する作業グループで既に設立されているもの、たとえば、パラモ国際作業グループ(Grupo Páramo)、高地アンデス・フラミンゴ保全グループ(GCFA)などに支援を求めるよう同じく要請する

17.ラムサール条約の国際団体パートナーであるバードライフ・インターナショナル、IUCN、国際湿地保全連合、WWF同様その他のパートナーやラムサール条約の協力機関に対して、高地アンデス湿地の保全と持続可能な管理のための共同活動の立案と実施にあたり、締約国を支援するよう促す

18.他の大陸の締約国で高地アンデス地域と同じような山岳生態系を擁する国に対して、この重要な生態系の管理、保全、持続可能な利用に関する情報と経験を共有するよう促す

19.締約国に対して、高地環境における水の賢明な利用に関する慣行について、その改善計画を策定する仕組みを立案するよう同じく促す

20.締約国に対して、先住民の祖先の慣行で環境保護と両立するものすべてを把握し、評価し、かつ現在利用できるように復元するため、必要な措置を講じるよう要請する

21.関係締約国に対して、国際的に重要な湿地のリストに追加するため、自国内にある高地アンデス湿地を特定するよう強く要請する


ラムサール条約第8回締約国会議の記録 [和訳:『ラムサール条約第8回締約国会議の記録』(環境省 2004)より了解を得て再録,2005年,琵琶湖ラムサール研究会.]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う.]

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