「お風呂場で…」 第20話
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駅から30分くらい歩いて会場に着いた 田舎の新興住宅地だから、あまり人は来てない。 軒下であの子のお母さんにあった。目の下のクマ、泣きはらした痕、でも納得したような目。 「田中さんね…。先生が言っていたとおり、大きなコートね」 「父のお下がりで…。そのうち体が追いつきます。このたびは…」 「ありがとう…、来てくれて。遠かったでしょ?」 「いえ…。あのっ、私…」 「あの子はね」 私の言葉を制して彼女は話し始めた。 「あの子は、こんな馬鹿なことしたけど…、それでいて頭のいい子だったの…」 その声はゆっくりと弱く、あきらめたような、納得してしまったことを思い出すような、まるでため息のようだと思った |