「山の中でひとり」  第24話
cd3120eea4-1219224770.png  目の前の鹿は落下時に足と腰を折ったらしい。私を見て必死で逃げようとしている。
 このあたりで滑落する場所は多分一つだけだ。
 私と同じようにこの鹿も落ちた。

 目の前で苦しんでいる鹿は、これが街なら多分哀れみを集めるだろう。でも、鹿には人間の哀れみは通じない。タダのプレッシャーにしかならない。
 恐怖だ。

 私はあらかじめ持ってきた一番重い枝を構える。
 多分、4発目で鹿は死んだ。

<< Back || Next >>


|| 山の中でひとり  Top | 描いていただきました | CG | Profile | BBS ||