「山の中でひとり」  第40話
 目は落ち窪み、風にさらされた肌はまるでラバーの様につややかで、そのくせ背中に近づくにつれづぐづぐだ。もう、家族でも誰か分からないだろう。
 彼は身につけた物を脱ぎ捨てて、もはやウェストポーチしか身につけていない。
 おちんちんがあるから、間違えなく男の人だ。分かるのはそれだけ。

 彼は山の神様を怒らせ、命を奪われることによってその責任を取った。
 だから、彼を罵るのはルール違反だ。おじいちゃんがいたならきっと怒られる。
 貴方が捨てた物で私はここまで命をつないだ。貴方がいなければ私はもう死んでいたかもしれない。でも、貴方は馬鹿だ!
 破棄したデイパックを足したとしても、こんな貧弱な装備で深い雪山を渡りきれるわけがない!
 貴方にも私と同じように帰らなきゃならない家があるはずだ!!
 どうしてこんな所に来たのよ!?

 体格がお父さんと同じだったせいだ。
 私は彼にお父さんの面影を感じて耐えきれず、泣いた…。

<< Back || Next >>


|| 山の中でひとり  Top | 描いていただきました | CG | Profile | BBS ||