「山の中でひとり」  第63話
cd3120eea4-1225503441.png  和手ぬぐいは端を折り返して塗っていないので、簡単に裂ける。
 私は手ぬぐいを3つに裂いて一本の紐にして片方を輪っかにして左手に通して、落ちていた鎌を手に取った。
 音を立てないようにサトシ君の自転車に近づいた。旗を立ててたり、ハンドルが真ん中に向かって折れていたり、信じられないセンスの自転車だ。私はそっと後輪の空気を抜く。
 サトシ君は畑の作物に夢中で気づいていない。多分、スイカと冬瓜は全滅だろう。
 私は自転車の左斜め後ろ茂みに入って紐を捻りながらサトシ君を待つ。
 サトシ君はすぐに戻ってきた。そして自転車に乗ったけど、すぐにパンクに気づいて下りた。計算通り自転車の左側にしゃがみ込んでタイヤを調べてる。
 私はゆっくりと歩いてサトシ君の後ろに立った。

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