「山の中でひとり」 第99話
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その日のお風呂はタカヨシ君と入った。 「もう夏祭りだねぇ…」 言葉にすると急に寂しくなってきて、タカヨシ君を抱きしめる。 「お姉ちゃん、帰っちゃうの?」 「ん…。えっと…。私、変な臭いする?」 「最初はしたけど…。もう、しない。」 「じゃぁ帰らなきゃ。ごめんね」 「お嫁さんにしてあげるから、いっちゃだめ。」 「ありがと…。でも、帰らなきゃ…」 ギュッとタカヨシ君を胸に抱き寄せる。 「だからね、大人になったらきっとね、タカヨシ君のお嫁さんにしてね」 ごめんなさい。 でも、胸の中に抱きしめた優しさを手放したくなかったんです。 だから私は、嘘をついた。 ごめんなさい。許してください。
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