「私の子供の頃の浴衣だから地味よ?」
そう言っておばさんが出してくれた浴衣をおじさんが着せてくれた。
「一緒にお祭り、行こ?」
タカヨシ君がお祭りに誘ってくれた。
お風呂から上がってから、お話ししてくれなくて寂しかった。だから、とても嬉しかった。
家を出て公園まで少しの距離。手をつないで歩く。
おじいちゃんのこと、エディカルのこと、先生達のこと…。多分、私は優しくしてくれる男の人を好きになって、すり寄っていただけだったと思う。嫌な女だ。
だから今、タカヨシ君の手の温かさを感じることにとまどう。
遠くで聞こえる太鼓の音。優しい風とカエルの鳴き声。手のぬくもり。
多分、この瞬間は宝物のように大事な時間なのに、それを受け止めることに臆病になっていた。
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