「山の中でひとり」  第177話
1238326242612.png  今でも時々、お母さんの手招きに苦しむ
 視界の端、流れる風景の中、夜の暗闇の中…

 いくら自分を誤魔化して、忘れたふりをしてもお母さんはいた

 ヒトは壊れようと思って、壊れる準備をする
 何かきっかけを求め、
 そして、そのきっかけを言い訳にして壊れていく

 それはまるで、薄い膜を一枚一枚はぎ取るように
 まるでツタが木に絡まるように
 ゆっくりと確実に壊れていく

 お母さんはたおやかに笑うヒトだったらしい。
 私は、その笑顔を私に向けてくれたことを思い出せない

 だけどお母さんはいつも優しく笑っている。
 私はあなたのきっかけをきっかけを詮索するような真似はしない

 そこで笑っているがいい
 そうやって笑っているがいい

 私は負けない

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