「あなたに許してほしい」  第21話
OB1198773853026.png  仰向けに倒れたさっちゃんの脇腹にナイフを刺す。
 カエルの様な声を上げた。少しえぐる。けど、刺したナイフは抜かない。
 私はさっちゃんのクビからネクタイを取る。それでさっちゃんの右手を縛った。
 さっちゃんの髪をわしづかみにして壁際まで引きずる。
 抵抗しようとするさっちゃんの切れた手を握りつぶす。
 自分の手がさっちゃんの血にまみれていくのが不愉快だった。
 壁際の配電パイプにネクタイを通して残りの左手を縛り上げる。

「さぁとどめを刺して…」
 痛みと期待に満ちた目でさっちゃんは私を見た。
「いやよ」
 出来る限り冷たく言い放つつもりだったが、昂奮していてそれもうまくできなかった。
 私はさっちゃんの制服の胸を開いて、さっちゃんがクビから下げていた鍵束を取る。
 ここから出るための鍵。友恵を救い出す鍵。
「これさえあれば貴女に用はないわ。そこで苦しんでいるがいいわ…」
 そう言って私は踵を返す。だれが殺すものか。
 私はさっちゃん一人だけ楽にしてたまるものか!
「その鍵は、偽物よ!本物は私が持ってるわ。だから、帰ってきて!!」
 無視する。さっちゃんの嗚咽が私の心を満たす。
 勝った…。私はさっちゃんに勝った。友恵を救い出したら、罪を償わせてやる。
「お願い、帰ってきて…。友達でしょ?その鍵は違うの。その鍵じゃ、友恵ちゃんは救えないの…。
お願いだから信じて…お願い。」
 さっちゃんは呪いの言葉の様に何度も繰り返した。滑稽だった。
 だから私は出来る限り力強く言った。 「信じられないわ。」

 

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