「あなたに許してほしい」 第27話
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私は重い猟銃を持ち直した。 「どうして友恵まで巻き込んだの?」 「わかるでしょ?それとも何もしないでも貴女は私のいうことを聞いてくれたの? 最初から一緒にここに連れてきたわ。」 さっちゃんは大きく深呼吸をした。手が痛むのだろう。お腹が痛むのだろう。苦しそうだ。 「じゃぁ、なぜおじさん達まで…」 「何故ですって?」 急にさっちゃんの声が荒げる。 「何故ですって?私はあなたに許してほしかったの。あなたは優しいから 何も聞かずに許そうとすることもわかってた。でも、それじゃダメなのよ!私は、貴女に…」 言葉は嗚咽にかわり、何を言っているかわからなくなった。 私は穏やかな気分で待つ。 「あなたに許してもいたかった。だから、貴女の手で私を殺してほしかった…。 でも、みんなのことを思うと、心が揺らいだのよ…。みんな優しかったから。 だから、邪魔だったのよ。お父さん達も、友恵ちゃんも…。 私は、貴女に許してもらえればそれでいいの」 私は何となく、さっちゃんは私を中心に深く静かに変わっていったのだと思った。 「ここを出る鍵はどこ?」 「私のおなかの中…。どっちにあるかは教えてあげない。私を殺してから探して…。 ナイフがあるから腹ぐらいさばけるでしょ?」 さっちゃんに刺したナイフを見る。肉厚で重そうなナイフ。 私は猟銃のポンプを引く。 まだ撃ってない弾が飛び出て、新しい弾が装填される。 ドジだな…。二人でクスリと笑う。 「さっちゃん。最後に教えて…。許されない事って何?」 「私のこと信じられないんでしょ?何も言っても信じてもらえないんだから、教えてあげない。」 苦しそうに、すねたふりしてさっちゃんが言う。何となく優しい気分になる。 「ごめんね。さっちゃんを信じてあげられなかった…。さっちゃんを信じてれば、 友恵はあんなことにはならなかった。だから、友恵を殺したのは私だ」 私はまた、猟銃を持ち直す。 さっちゃんが静かに目を閉じる。 「だからね。ごめんね。さっちゃん。ごめんね。私、もう耐えられない…」 私は自分ののどに向けて猟銃を撃った。 乾いた破裂音。一瞬宙に浮く感覚。 私は死んだ。
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