「?」  第10話
「ここは子供の来るところではありませんよ?私は産婦人科医ですもの」
 先生は病院の入り口で、さも迷惑そうに言いました。
「おねがいでしゅ。そんな事を言っている場合ではないのでしゅ。私は死ぬかもしれないのですよ!」
「そう?」
 先生は私の額を押しました。もう抵抗もできず、私は尻もちをついてその場に倒れました。
「少し、わがままだとは思いませんか?」
 先生はしゃがみ込んで私の足を引っ張りました
「少しわがままじゃないですか?って聞いたんですよ?」
 大きな音。右足に衝撃。何が何かわからない
「ここは産婦人科医で、あなたは子供。あなたは招かれざる客なのですよ?それなのにあなたの態度は何ですか?」
 先生は入り口のドアを蹴りました。足が砕ける音。胸が収縮する感じ。
「あなたには常識がないのですか?口がないのですか?」
 もう胸が縮んで声が出ません。先生の声も途切れ途切れにしか聞こえません。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
 本当に口に出ているのか解りません。
「どうして謝ってるの?あなたは何について謝ってるの?ただ許しをこえばいいとおもってるの?」
 今までより大きくドアを蹴る音が聞こえました。胸のが縮んでお腹が痙攣してるのが解ります。自分の体じゃないみたい。
 そうか。私はわがままだったんですね。
 ごめんなさい。ごめんなさい。本当にごめんなさい。もうわがまま言いませんから。だから、だから許してください。ごめんなさい。
 なんだか背中の方から段々と、なにかが大きくなっていくような感じがします。怖い。

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