「?」  第11話
 突然スイッチが入ったような感覚。私は列車の客席で目を覚ましました。
「あぁ、そうか…」
 肌触りの良い服。初夏の爽やかな空気。どこからか聞こえる風鈴の音と水蒸気機関の力強い音。心地よい脱力感。
 髪に手櫛を通す。痛んでない。ホッと胸をなで下ろしました
「おはようございます。よくお眠りでしたね」
 隣の女性が私に気づいて話しかけてきました。綺麗な女性。寝顔を見られて少し恥ずかしい。
「おはようございます。すいません、恥ずかしいです…」
「お気になさらないでください。私も起きたところですし…。ところで髪を大切にされてるんですね」
「あっ、はい。いえ。えっとすいません。」
 突然の問いかけにドギマギしました。
「あの…。私、これ以外に何も持って無くて…」
「本当に綺麗な髪。大切な人のため?」
 少し驚く。どうしてでしょうか。顔が赤くなります。そんな人もいないのに
「あのっ!いえっ。その…、この髪はお母さんに見つけてもらいたくて大切にしてたんです」

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