あぁ、そうか。と思う。 
 全て理解した。人生を振り返る時間は終わり。
「それにしても、おじさま。帰っちゃったんだ…。非道い人」 
 なんだか、寂しいと思う。思おうとした。思えなかった。 
「貴女は別に病気じゃなかった。血を吐いたのは毒を飲まされたせい」 
「うすうすは気づいてた。チーズの魔法も嘘でしょ?」 
 死に神さんは目を背けた。 
「手紙は届いてない。」 
「知ってる」 
「貴女が大事だったのは本当。商品としてね。お金の為よ。」 
「そっか。残念。……不思議だな。もっと、悲しかったり、 
泣いたりすると思ってた。」 
 穏やかだ。いや、穏やかと言うより平坦なんだ。 
「分泌液よ…」 
「分泌液?」 
「あなたの魂を肉体から切り離した。感情は体内の分泌液に大きく影響される。 
だから、貴女はもう怒る事もないし悲しむ事もない」 
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