「鮭児の時知らずタン」  第11話
 食欲を満たしたシャチが去り、拡散した群れがまた形を取り戻したころ、お姉さんは目を覚ましました。
お姉さんは自分がどのくらい気を失っていたのか、まるで分かりませんでした。ただ、シャチが食い散らかした仲間の残骸や生き残った仲間達の安堵の表情で自分が生きている事を実感しました。
 現実感が戻ってくると、手のひらに落ちる生暖かい感触に気がつきました。赤く染まった手。顔を伝う感触。波のように大きくなる激痛。
 お姉さんは震える手で顔をさすりました。
 声にならない悲鳴。
 足に力が入らなくなってお姉さんは尻餅をつきました。

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