「鮭児の時知らずタン」  第44話
お姉さんは痛そうに、でも前を向いて歩きました。
 時知らずタンは特に手を引かず、お姉さんの歩く速度に合わせて後ろについて歩きました。
 虫さんがお腹の中で暴れました。虫さんは時知らずタンにお姉さんをこのまま置いて海に戻るべきだと言いました。
 時知らずタンもそのとおりだと考えました。自分にはまだ故郷に帰る資格がなかったし、虫さんの言う事は正論でした。自分のお腹の事をお姉さんが知ったらお姉さんはきっとまた凄く怒る事もわかっていました。
 それでも時知らずタンは何時食べられるか分からないのなら、お姉さんと一緒に歩きたいと思いました。

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