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「それは逃げだ。」 ムシさんは優しい声で言いました。 「ただ本当の事を言う勇気も、見捨てる努力もしないくせに。ただ、ただ自分を犠牲にして人に優しくしている気になって、群れに入れない現実から逃げてるだけだ。」 ムシさんは、とても優しい声で多分本当の事を言いました。時知らずタンは「違う」と答えて、「じゃぁ何故だ？」と聞かれて答えに詰まりました。ムシさんの言う事は正論だし、その質問も正論でした。 正論を言う人は多分いつもとても正しくて、自分の様な隙のある人はその言葉にいつも右往左往する。 （ただ私は初めて自分に優しくしてくれた人が幸せになって欲しいだけなのに…） と、時知らずタンは思いました。そんな時知らずタンを見てムシさんは笑いしました。 ちゃんと反論出来ない自分が悔しくて、モゾモゾと色んなところで蠢くムシさんの事が恥ずかしくて時知らずタンは少し前のめりになりました |