「鮭児の時知らずタン」  第55話
「私が怪我してもう歩けないと思った時、イルカの子に食べられようとした…。何だかもう、あの時は本当にどうでも良くなって…」
 シャチの死体が波にクルクルと揺られるのを見ながらお姉さんは言いました。
「それは多分、確かに本当にどうでも良くなってしまったからだけど…。だからかな、あの人の事がよく分かるの…」
 時知らずタンはアゴを押さえて、本当にどうでも良くなった割にはいいパンチだったと思いました
「多分あの人は、子供を産めなくなってから自分の価値を食べる事に求めたんだと思う…。もしかしたら、私も…同じように食べられる事でそれを求めたんじゃないかなぁ。わからないけど…」
「わからないって、自分の事でしょ?」
「うん。でも、わからないよ。自分の事なんて…」

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