ソメイヨシノさんは成長が考えられないほど早かったし、それ以上に早熟だった。
でも山桜さんから見ると、ソメイヨシノさんは頭が弱かった。
求められるまま葉を付けるより早く花を咲かせて、人間に媚びいる様はなんだか刹那主義的で、山桜さんにはとても見ていられなかった。
もっと自分の身体を大事にするべきだと何度言い聞かせてもソメイヨシノさんは聞き入れなかったし、山桜さんもどうしようもない事だという事は理解していたからあまり強く言う事も出来なかった。
ただ、もっともっと、と息を荒くするソメイヨシノさんの声が山桜さんには何だか呪いの呪文のように山桜さんには聞こえた。
そもそも山桜さんにはソメイヨシノさんは女の子なのか男の子なのか分からなかった。
でもよくよく考えてみれば、花を広げるのならば女の子でも男の子でも同じだと思って考えるのをやめた。
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