段々空が高くなってきて、爽やかな風が吹き始める。
青空。
ソメイヨシノさんはこの季節が嫌いだった。
行為の後の気怠さはもうとっくに過ぎ去って辛いだけの季節がまた始まるし、
それ以上に山桜さんのことを思うと重い気分になる。
今年もまた、あの人は泣くのだろう
今までだって嫌になるくらい泣いてきたのに、
今年もまた、泣いて泣いて、苦しんで。そしてまた、泣いて…
産み落とした子供のほとんどは大きくなる前に死んでしまう。
何とか芽を出しても、くちで鹿やウサギに傷つけられて死んでしまう。
あれほど沢山の子供を産んできたのに、あの人の子供は4人しか大きくならなかった。
それすら、人間が道を造るときに切り倒された。
その悲しみはあの人の幸福に必要なのだろうか。
あの人を強くするのだろうか?
それとも、あんな風に悲しい思いをすることがない自分は幸福なのだろうか?
分からない。
ソメイヨシノさんは自分の足元を見て目をそらす。
山桜さんの娘さんがいた筈の足元を…
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