「山桜さんとソメイヨシノさん」 第19話
それから少しだけ葉を回復させたソメイヨシノさんは、次の春には何とか少しだけ花を咲かせることが出来た。
それは花が咲いたと言うにはあまりにも少なくて、みすぼらしい姿。
耐え難い要求と、実現不可能な体。
腐った内臓は崩れ落ちることなくソメイヨシノさんを痛めつけた。
「来年のために我慢。来年のために我慢。来年のために我慢…」
もだえ苦しみながら自分の花の密を舐め取って、まるで呪文のように繰り返した。
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