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 昨年末に発表された2003年度の税制改正大綱が、国会に上程された。今回の改正は、将来の財政の健全性を維持しつつ経済社会の活性化を促すという趣旨に沿った内容となっている。具体的には、相続による次世代への資産移転を後押しする新制度が創設されるのをはじめ、住宅や土地に対して、減税などいくつかの特例措置が設けられている。この改正により、今年は、マイホームの実現を目指している人にとって絶好のチャンス到来といえそうだ。そこで、不動産に関して税制がどのように変わったのか、今回の改正の内容をまとめてみた。


2003年度税制改正
住宅取得資金贈与の非課税枠が3500万円に大幅アップ
住宅取得のチャンス到来

 今回の税制改正の中でも最大の特徴は、生前贈与の促進を図るため、相続税と贈与税の課税を一体化した相続時精算課税制度(仮称)が創設されたこと。一定の要件を満たせば、生前贈与で支払った贈与税をその後の相続時に、相続税から控除されるという仕組みだ。
 現行の制度では、生前贈与の非課税枠が年間110万円までと小さいため、生前贈与がしにくい状況だったが、新制度ではその枠が2500万円までに拡大されている。しかも、住宅取得資金の贈与に関しては、従来の制度の550万円に対し、3500万円までの非課税枠が認められる。
 そこで、現行の制度と比較しながら、要件を見てみよう(表1、表2参照)。
まず従来の制度では贈与する側も受ける側も年齢に対する制限はなかったが、新制度では、65歳以上の親から20歳以上の子へ生前に資産を贈与した場合のみ適用される。といっても、住宅取得資金については、65歳未満の親からの贈与も可能。まだ若いカップルでも、住宅を購入する場合、親からの援助が受けやすくなるというわけだ。住宅取得資金として適用される住宅の要件は、従来どおり、自分が居住する床面積50u以上の家屋(床面積50%以上が居住用)、中古住宅は耐火建築物で築後25年以内、非耐火建築物なら同20年以内など。
 その際にかかる贈与税額は、新制度の場合、贈与財産の価格から非課税枠を差し引いた額の20%。一律の割合で計算されるため、累進税率が適用される従来の制度に比べ、税負担も軽くなりそうだ。なお、この累進税率も今回の改正で最高税率が引き下げられ、税率区分も拡大されている。
 また、新制度の非課税枠は2500万円までなら何度も利用できる。特に住宅取得資金贈与では、2005年までの3年間に限り、特例で3500万円までと、従来の制度の550万円から大幅に拡大される。ただし、住宅取得資金等の非課税贈与を受けた後は、新たな非課税枠の適用を受けることはできないので、注意が必要だ。
 忘れてはいけないのが、相続税と一体方式である新制度を適用する場合、贈与税の非課税枠でも申告の必要があるということ。従来の制度の場合、住宅取得資金を除く年間110万円までの非課税枠については申告する必要はないが、今回の改正では、新制度の創設によって過去の贈与税の申告内容が確認できるよう、相続人の請求に対して税務署長がその内容を開示する制度も設けられた。
 この新制度の相続税は、相続する財産に贈与財産もすべて合算して計算され、その相続税額から、すでに支払った贈与税が控除されることになる。一方、従来の制度では、相続開始前の3年以内に贈与した財産が合算され、それ以前の贈与については考慮されない。今回の改正で、この相続税の税率についても、最高税率の引き下げと区別の拡大が行われている。
 こうした制度は、どちらを利用するか選択することができる。将来の相続財産の課税額を含め、どの制度をどう利用すればどれだけ節税の効果があるのか、じっくりと検討し、見極める必要がありそうだ。
 改正法は原則として4月1日からの施行となるが、納税者に有利な制度などは1月1日にさかのぼって適用される。


<表1>新たに創設された「相続時精算課税制度による贈与制度」と「現行の贈与制度」との相違点

新 制 度 現 行 制 度
制度の趣旨 贈与税と相続税の一体課税
生前贈与を促進
相続税の補完税
生前贈与を抑制
贈与者 65歳以上の父または母 制限なし
受贈者 20歳以上の子
(養子または代襲相続人を含む)
制限なし
贈与時 贈与制度の選択 贈与者ごと、受贈者ごとに贈与制度の選択をすることができる 選択の余地はない
税額計算 (選択した贈与者ごとに贈与された贈与財産の累積価格ー非課税額×20%) (その年に受けた贈与財産の価格の合計額ー非課税額)×超過累進税率
税率 一律20% 10%〜50%の超過累進税率
非課税額 一生涯において2500万円の非課税額を限度として複数年にわたり利用できる 年間110万円の非課税額を毎年利用できる
申告の要否 非課税額内でも申告必要 非課税額内の贈与であれば申告不要
適用手続き 最初の贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日までの間に届出書を提出する 特に手続きを必要としない
相続時 生前贈与
加算の取り扱い
すべての受贈者に対する贈与については相続財産に加算される 相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該被相続人から相続開始前3年以内に受けた場合に加算される
贈与税額控除 控除しきれない贈与税については還付される 控除しきれない贈与税については還付されない
情報開示制度 すべての贈与について情報開示の対象となる 相続開始前3年以内の贈与については情報開示の対象となる

<表2>新たに創設された「相続時精算課税制度による住宅取得資金の贈与制度」と
     「現行の住宅取得資金の贈与制度」との相違点

新 制 度 現 行 制 度
制度の趣旨 贈与税と相続税の一体課税
生前贈与を促進
相続税の補完税
生前贈与を抑制
贈与者 父または母 父母又は祖父母
受贈者 20歳以上の子
(養子または代襲相続人を含む)
直径卑属である子又は孫
贈与時 贈与制度の選択 贈与者ごと、受贈者ごとに贈与制度の選択をすることができる 選択の余地はない
税額計算 (選択した贈与者ごとに贈与された贈与財産の累積価格ー非課税額)×20% 1500万円以下の部分については5分5乗方式により贈与税額は軽減される
税率 一律20% 10%〜50%の超過累進税率
非課税額 3500万円 550万円
受贈者の所得要件 制限なし 合計所得金額が1200万円以下であること
増改築の要件 その工事に要した費用の額が100万円以上のもの その工事に要した費用の額が1000万円以上のもの
相続時精算課税制度への移行 贈与者が65歳以上になっても相続時精算課税制度による2500万円の非課税規定の適用を重複して受けることはない 当該適用を受けた者は原則として、贈与年を含めて5年間は相続時精算課税制度への移行はできない
相続時 生前贈与
加算の取り扱い
すべての受贈者に対する贈与について相続財産に加算される 相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該被相続人から相続開始前3年以内に受けた贈与について加算される
贈与税額控除 控除しきれない贈与税については還付される 控除しきれない贈与税については還付されない
情報開示制度 すべての贈与について情報開示の対象となる 相続開始前3年以内の贈与については情報開示の対象となる


ローン減税の継続が可能に
税負担も軽減

 住宅ローン控除の継続適用をはじめ、登録免許税の軽減、宅地などの取得に係わる不動産取得税の標準税率の引き下げなど、土地・建物が取得しやすくなったのも、今回の改正のポイントだ。
 従来の制度では、住宅ローンの控除を受けていた家族が、父親の転勤などで一度引っ越しをして再びその住宅に戻ってきた場合は、控除が受けられなかった。だが、今回の改正で、4月1日以降、ローン控除の期間が残っている住宅に引っ越しなどで居住しなくなっても、再入居すれば、残りのローン控除が受けられるようになる。
 住宅ローン控除は、合計所得金額が3000万円以下の人の場合、最長10年間にわたって、年末のローン残高(5000万円以下)の1%を所得税額から最大で500万円まで控除してくれるというもの。今年度末までに住宅を新築・購入して、取得後6ヶ月以内に居住するか、増改築すれば、このローン控除が適用される。ただし、増改築の場合は、所有する住宅(床面積50u)で工事費が1000万円以上、または床面積の増加が50u以上の増改築か大規模修繕などが要件となる。
 このほか、不動産価格を課税標準とする登録免許税の税率が、売買・交換の場合の所有権移転登記で、現行の5.0%から1.0%になるなど、大幅に引き下げられる。期間は今年4月1日から3年間。同時に、不動産取得税の税率も現行の4%が3%に引き下げられ、課税標準でも、宅地および宅地比準土地の課税標準を価格の2分の1とすると高齢措置が今年の1月1日から3年間延長されている。


※2003年度税制改正案は、3月の通常国会において法案成立の見込みであり、それをさかのぼって本年1月1日から適用されます。


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