Q8.強制執行の実効性の確保のための財産開示手続という制度が創設されたということですが、どのような内容ですか。


 財産開示手続については、現行の金銭執行の手続では、債権者は執行の対象たる債務者の財産を特定して手続きの開始を申立てることが必要ですが、債権者には債務者の財産を探すための法的手段が与えられていないため、債務名義を取得しても、執行手続を開始することが困難な場合も多いです。そこで、改正法は、債権者の申立に基づいて、裁判所が債務者に対し財産の開示を命じる手続きを創設しました(民執第196条〜第207条)。
 申立資格を有する者は、執行力ある債務名義の正本(仮執行宣言付判決、支払督促、執行証書は除外されています)を有する債権者、または一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者です。その債権者が過去6ヶ月以内になされた強制執行(もしくは担保権実行)での配当手続で弁済をしても完全な弁済を得られなかった時、または知れている財産に対する強制執行をしても完全な弁済を得られないことの疎明があった時に実施決定が出されます(第197条)。実施決定を受けた債務者は、裁判所で開かれる開示期日に出頭し、宣誓の上で自己の財産につき陳述し、また裁判所または申立人の質問に答える義務を負い、正当な理由のない不出頭、宣誓拒否、陳述拒否または虚偽の陳述に対しては過料が科せられます(民執第199条、第200条)。期日を円滑に実施するためには、あらかじめ債務者から開示する財産の目録を書面で提出させる必要があるでしょう。
 この制度の創設にあたっては、債務者のプライバシーの侵害や濫用、債務者に不当な圧力を加えるおそれなどが問題とされました。この点の配慮から、前述のように基本となる債務名義の種類が限定され、一度開示がなされると原則として3年間はその債務者に対して開示を命じることはできないものとされ(第197条第3項)、開示期日は非公開で、開示事件の記録中開示期日に関する部分の閲覧などは申立人、それと同等の資格(債務名義の所持など)を有する債権者、債務者等に限って許され、申立人および記録の閲覧等をした者が得た情報の目的外利用・提供は禁じられます(民執第201条・第202条)。
 なお、債務者は、事前に陳述義務の一部免除の申立ができると解されていますが、その場合には一部について財産目録の提出が必要となるでしょう。この場合、一部免除の判断は期日においてすることになりますが、一部免除の要件が厳しいことからすれば、認められる場合は限られたものになるでしょう。その場合には、改めて続行期日が指定されることも考えられます。


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