改正民事執行法〜明渡しの強制執行


 平成16年4月1日に施行された民事執行法および関連法令の改正に伴い、注目される内容のうち「短期賃貸借制度」(短期賃貸借権)の廃止に関する実務の問題点、および「競売不動産の内覧制度」について紹介してきましたが、今回は「明渡しの強制執行」について考えてみましょう。
 「明渡し」のなかで最も苦慮するのが「占有」している相手側が不明な場合です。「引渡し命令」を申立てようとしましても、相手が不明であれば不可能でした。また、これまでは不動産所有者宛に保全処分を行い、内部に立入って占有者を確認し相手側に再度、占有移転禁止等の保全処分を行うことでようやく引渡し命令申立てが行われるという、回りくどいやり方でした。しかも途中で占有者が替わってしまうと手続きは振り出しに戻ってました。
 しかし改正法では、相手が分からない場合でも占有移転禁止等の保全処分が申立てられ、認定された占有者に限らず、変更された占有者に対しても引渡し命令が申立てられることになりました。明渡しの強制執行についても相手の「占有者交代作戦」に際しても対抗可能となりまして、家財などを運び出すことなどが円滑に行えるようになりました。
 ところで、課題となっていた明渡しの「催告制度」ですが、これも改正法では明確に法律で定められました。これまでは「明渡し」に際し事前に占有者に対し執行官が運用的に催告を行ってきましたが、改正法では催告を執行官が行った場合は、断行予定日が記載された「公示書」を貼ることが義務付けられました。断行予定日を延期するような事態になった場合でも、再度執行官による催告手続きを行ったうえで公示書を貼りなおすことが求められます。
 これまでは占有者との交渉で断行予定日を延期する場合は、運用として執行官への簡便な延期申請で済みましたが、今回、改正後では明渡しの強制執行申立人にとっては手続きが煩雑となりました。


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