接道義務違反
隣接者との覚書無効

 以下は、分譲土地の売買において、接道義務違反であるため、将来建築確認の申請をするにあたっては必要な協力をする旨の隣接所有者との覚書きを交わしておいても、隠れた瑕疵があるとして、売買の仲介業者と売主に損害賠償金の支払いを命じたケースです(大阪高裁平成11年9月30日判決)。

<脱法行為>

 Aが買った分譲地(以下「甲土地」という)は、公道と、1.75mしか接していなかった。建築基準法上は、敷地が公道に2m接する必要があるので、これは明らかに接道義務違反である。
 実は、Aに甲土地を建物付きで売ったB業者は、甲土地に隣接する「乙土地」を同時に、同じく建物付きで分譲に出していた。しかし、乙土地も同じく公道には1.75mしか接していなかった。では、なぜ接道義務違反にもかかわらず、B業者は甲と乙の両土地に建物を建てることができたのだろうか。
 B業者は、建築確認申請をするときには、甲土地と乙土地を合わせ、1つの敷地として申請していた。甲土地と乙土地が公道に接する部分は隣接しているので、両土地を合わせれば3.5m公道に接することになり、接道義務は十分である。そして、確認申請する建物は2戸なのだが、申請上はこれを合わせて1棟(2個1棟)としていた。これなら確かに「適法」しており、2戸建つわけである。
 このようにして建物を完成させたうえで、土地を甲と乙に分割し、建物も1戸1棟として、それぞれ別の買い手に分譲することにしたわけである。しかし、単体としての甲、乙それぞれの土地は、いずれも接道義務を果たしていないので、そのままでは買い手はつかない。
 そこでB業者は、隣接土地所有者との間で覚書を交わし、将来建築確認の申請をするときには、接道義務が果たせるよう、土地の使用を承諾する旨の書類を提出する約束を取り付けておいた。実際は土地を使用させることはないのだが、書類上だけは土地の使用を許すような内容にしたのである。一種の「脱法行為」だが、このような取引は時折見受けられる。そして、多くの場合、このような操作で、接道義務を果たさないまま、建築確認が下りてしまうことも事実なのである。

<判決>

 Aはこのような仕組みがよく分からないまま、かかる覚書に署名・捺印し、甲土地を購入した。ところがその後、甲土地は本来、建築確認が下りない土地であることに気付き、これは「隠れた瑕疵」だとして、売主に対して損害賠償の請求をしたのが本件である。
 Aは、甲土地を買う際、売買契約書にも重要事項説明書にも、接道義務違反とか建築不可とかの文字はなかった。そこで、仲介業者に対しては、説明義務違反があるとして、同じく損害賠償を請求した。
 これに対し、大阪高裁は冒頭に紹介したとおり、売主と仲介業者に損害賠償の支払いを命じた。

<教訓>

 本件のように接道義務を満たさない土地の分譲は、明らかに「脱法行為」である。建築確認が下りたとしても、正面から訴訟で争われれば、違法行為と認定されてしまうのである。


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