プロから学ぶ不動産投資術


金融機関との付き合い方
収益力と担保力が勝負

 不動産投資の成否は金融機関の融資によるところが大きい。収益不動産の仲介担当者の間では、話がまとまったとしても融資が付かないために白紙に戻る経験をする方が多い。資金さえ付けばまとまるのにと地団駄を踏むのである。
 そこで、一つの金融機関だけではなく幾つかの金融機関に融資を申し込むことになる。どこの金融機関でも全く受け付けられないケースもあるが、ねばり強く融資先を探すと見つかるものである。自己資金を十分に充当すれば、当然融資は受けられる。
 ところが、ほとんどのケースではレバレジット(てこ)効果を考え、他人の資金での投資を試みる。となると、どこの金融機関が良いのかという議論に花が咲く。
 一般的に金利の優遇度合いでは都市銀行に軍配が上がる。土地資産家などの富裕層であるならば、都市銀行間による優遇金利の競争になることが多い。融資金額が大きい場合も都市銀行が良い。
 金融機関は、通常3億円を境に資金の貸し出しに慎重になる。都銀の場合、金融資産規模が大きいので比較的大口の融資がスムーズである。肝心の融資の受けやすさはどうか。経験的にいえば、信用金庫が良い。都銀でダメ、地銀でダメ、であったものの信用金庫で融資が受けられたという話はよく聞く。
 金利はやや高いが、希望通りの融資額が満額受けられるのならば良しとする判断だ。信託銀行も不動産投資には向いている。不動産の評価を外部の鑑定士に任せきりにするのではなく、もともと不動産に強い信託銀行の場合、内部で独自の評価ができるからである。このことにより、より実態に即した審査が期待できる。もともとの取引があるのならば地元地銀が心強い。
 金融機関の審査のポイントは収益力と担保力だ。収益力・担保力は他の負債や収入ならびに資産が加味される。
 とはいうものの審査をするのは人間の仕事である。金融機関への資料の提出の仕方で、窓口の対応は変わり、窓口の対応が変われば本部審査の対応も変わってくる。
 お客様へと同様、金融機関に対してもプレゼンが必要になる。事業計画の数値の裏付け、税務対策、いざという場合の流動性のアピールが重要だ。


レバレッジ(てこ)を有効活用
資産拡大に効果

 収益不動産も投資商品と考えれば、他の金融商品と同じように原則自己資金で投資するのが基本だ。
 しかしながら、実際にはローンを使用するケースが大半である。ローンを利用する理由として、足りない資金を借りるという消極的な意味ではなく、手持ち資金にローンを加え投資金額を大きくするレバレッジ(てこの原理)効果がある。
 例えば、1億円の自己資金で1億円の物件を購入して、利回りが8%であれば、年収は800万円。ところが、ローンを2億円利用して、3億円の投資とするならば、同じ利回りであれば3倍の年収の2400万円になる。
 もちろん、金利負担も増えるが、利回りよりもはるかに低い金利で資金調達できるわけだから、現在の低金利を積極的に活用しない手はない。バブルのピーク時では、利回り3%、金利8%という物件もあったので、このような条件でレバレッジを利用すると、収支が手出しとなるので、物件が値上がりして売り抜けない限り破綻するのは目に見えていた。そのようなケースでは、レバレッジを使うべきではない。レバレッジを使う前提はあくまでも、金利より実質利回りの方が高い場合に限られる。
 表面利回り8%、実質利回り6.4%の場合、価値の減価が年間3%分とすれば、金利は3.4%以下であればよいことになる。不動産投資の場合一般的に自己資金比率は30%必要とされ、70%分がレバレッジとなる。土地を所有していれば、たとえ建築費を全額ローンにしたとしても、土地の価格分が自己資金、建築資金がレバレッジということになる。
 借金自体が嫌いだとか苦痛だとかいう話はよく聞くが、投資という観点からすれば、少ない資金で投資額を膨らます便利な道具である。道具を使えば、資産拡大のスピードが速まり、資産が自己増殖していくまでになる。そして、そのレバレッジは金融機関が提供してくれるのであるから、金融機関をうまく巻き込むことが重要になってくる。
 借金という後ろ向きの言葉ではなく、投資効率を高めるツールだと意識した方が良い。ただし、あまり細長い「てこ」を利用して棒を折らないよう気を付けたい。


地方物件の場合
高利回りで短期回収

 地方物件の査定依頼を頼まれることがよくあるが、正直大変難しい。極端に取引事例が少ないからである。例えば世田谷区で取引事例を探すとなると、数十件はすぐに見つかる。表面利回りの平均値を計算すると8%前後の数値が出てくるので、この利回りをベースに類似物件と比較して利回りを設定すれば事足りる。
 投資物件は主に収益還元法で算出するので、この利回りを年間収入で割り戻せば良い。実際の売り出しの際には、指値対策として5〜10%上乗せしておけばよい。どうしても急ぎで売りたい場合は、業者の買取価格を基準とし、査定価格の80%程度になることを依頼主に伝えておくことが必要だ。なお、査定に当たり依頼主は当然、土地価格 + 建物価格を主張する。しかしながら、収益還元価格をオーバーすることが多いので、購入する側の購入基準が収益性であることを認識してもらう必要がある。
 地方物件の中でも、札幌・福岡などの広域中心都市であれば、首都圏と同じく全国区としての価値があり、購入者は全国を対象とすることができる。
 ところが、それ以外の地方都市は注目されにくいので、価格を相当下げなければならない。価格が下がるということは、逆に利回りが上がり回収期間も短くなる。購入する側としては、地方都市の需要に対し絶対数の少なさから、将来の空室リスクを極端に考えがちである。そのような心配も重なり、更に物件価格は下がってくる。ある程度まで下がると、たとえリスクがあっても、短期に回収されるのであれば、それをリスクとは思わない購入者が現れてくる。現に15%の利回りで売り出すと、買い手が現われ売れ行きも良い。表面利回りが15%といえば、実質利回りで12%超になるので、8年で資金が回収できる。ローンの返済期間を10年、15年にしたとしても返済できる。
 都心のRCマンションを購入し、ローンを30年で組んだ場合、20年経ってもわずかしか元金が減っていない現実を考えると、地方の空室リスクよりそのリスクの方が高いと考える投資家も出てくる。
 地方物件は実際に短期回収ができるかどうかがポイントである。


株式会社フジヤ
〒520−0046
滋賀県大津市長等2丁目3−28
TEL 077-525-2233 FAX 077-523-5392