中間省略登記を問う
〜「判決あれば受理」との整合性は


 中間省略登記の可否が問われている。3月7日からの新不動産登記法の施行で、中間省略は事実上できなくなるといわれる。しかし、専門家の間ではなお可能とする意見もあり、不動産業界ではその動向に大きな関心を寄せている。中間省略登記の可能性について調べた。

 「AはCに対し、甲不動産につき所有権移転登記手続をせよ」
 中間省略登記を命じる判決の主文である。判決の理由を読めばABCと順次売買が行われていることがはっきりする。法務省民事局長通達によると、裁判でこのような判決が下された場合、Cはこの判決を申請書に添付して中間省略登記をすることが認められている。
 これに対し、司法書士の中間省略登記に対する説明で、「これまでも、登記実務の扱いとして、中間省略であることが登記官に判明すれば却下される」と言われることがある。
 この見解と、前述のように判決を添付して行う申請が受理されていることとの整合性は、どうなっているのだろうか。
 法務省によると、「中間省略登記は基本的に認められるものではない。ただ判決による申請については例外的に受理している。中間省略登記のこの原則例外の扱いに関しては、今のところ登記法改正による影響はない」という。
 つまり、公に中間省略登記ができないのは、通常の申請の場合で、個別の裁判で判決が出れば、登記官が中間省略であることを知っても可能ということになる。
 こうした一貫しない取り扱いに対して疑問を投げかける専門家は少なくない。
 例えば、元浦和地方法務局長は論文で、「判決というものが登記義務者と権利者の意思表示を擬制するに過ぎないものであることからすればきわめておかしなこと」とし、通常の申請で却下されることに批判的である。
 新法施行後に通常の申請で中間省略が事実上できなくなれば、「奇妙な現象が起こる」と指摘する弁護士もいる。「もしAが登記を拒否してCと訴訟になると、判決が出て中間省略の申請が可能になり、逆に、AとCが普通に協力して申請しようとすると却下されてしまう」という交錯である。
 これまでは申請書副本により事実上中間省略登記ができてきたので、通常の申請の場合と判決書を提出して申請する場合の不統一の問題は表面化してこなかったようだ。
 同弁護士は、「中間省略登記は、最高裁の判例で、法律の考え方として、ABC3人の合意がある場合にAC間で請求が認められているものだ。当事者間で、登記の手続きをするように請求する私的な権利として認めている。これは、公的な機関である登記所に対して登記簿への記載を求める公的な権利とは別のものだ。ここが混同されやすい。法務省が原則認めないというのは、あくまで登記所への公的な申請権に関する見解にすぎない」と説明する。
 こうした登記実務の扱いについて聞いたところ、ある業界関係者は、「今までのようなかたちでできないのなら、中間省略をあえてやろうとすれば不本意でも裁判を起こさなければならない。そうすると、省略される登記1回分のコストと裁判を起こす費用の比較の問題になる。」という。
 「3人の合意を取り、欠席裁判で簡単に結審する。物件にもよるが、もしやるなら30万円程度で受ける」という弁護士もいる。しかし、これでは馴れ合い訴訟を推奨するようなもので、なお問題が残るという。


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